子が子なら親も
久し振りに前の話も編集しましたが、悪化した感じも。
私はある高貴なる貴族に仕える老執事、ハドンと言うものです。
貴族に仕える身の私が思うのは何ですがこの国の貴族と言うのは、堕落していて大多数が肥満した精神と体をもったブタのような存在です。
しかし私の主である彼の方は中年に差し掛かる年齢であるが体のどこにも贅肉脂肪の弛みは見えません。肥満どころか服から覗く肌は引き締まり歴戦の勇者の様に大小様々な傷があります。
整った彫りの深い顔からは一片の感情は見えない眼光だけが意志の強さを物語る偉丈夫。貴族でなく歴戦の将軍のようなかたです。あの逞しい体で抱かれたいと何時も心に思ってしまうのです。
親しい貴族だろうが血の繋がった身内だろうが、目的の為なら切り捨てる苛烈であり冷酷非情と言われる国内随一の公爵家の主。
マゾレア・ドントコイ・カルピィス。
我が主でございます。
私が忠誠を誓い敬愛する主人。もしこの老骨を求められるなら何時でも捧げる覚悟があります
国の大黒柱の一つと言われる有能な大貴族。
主として不満はない……とは少し言えません。不満を感じてしまう点が有ると聞かれれば、失礼ながら有るのです。
マゾレアさまは秘密主義者であり。長年に渡りカルピィス家に仕えている執事である私でも主人の内心は判らないほど感情を隠されているのです。旦那さまはどの様な驚く情報であろうと眉を動かす事も稀です。貴族として心を隠す必要が有るとは思うのですが……せめて長年仕える自分には身も心も少し開いて欲しいとおもうのは不敬でしょうか。
……そんな旦那様でも流石に今回の話には動揺なさると思った。
「本当なのか……」
「はい。確かな情報だと思われます」
旦那さまに伝えたのは二年前にある事で消息を絶ったお嬢様の話、私が伝えたお嬢様の情報に旦那さまは、旦那さまの表情は娘として育てたお嬢様の生存を知っても変わらなかった。そう表情は……
「……すこし一人になりたい。誰も近づけるな」
そう言ってあの方は書斎の扉を閉めた。
……旦那様の声と手は震えていた。
長年仕えているが旦那さまの見て解る程の同様を見たのは初めてだ。
俺は執事の何か言いたげな視線から逃げるように書斎に入り椅子に座り、顔を隠すように腕を組んだ。執事が伝えてきたのは陛下からの連絡。
……あの娘が生きていた。
そしてこの国に帰ってきた。
それもカスタード国の王女として…。
なんとも複雑な気持ちだ。
本当に……複雑だ。
あの娘は、妻と結婚していた時に出来てしまった子供。
そう不貞の子供なのだ。
まだ結婚してそんなに経ってない頃に俺は今の妻を裏切って出来た子供。
政略結婚だが今の妻を嫌いな訳じゃない。不満もない妻として満足している。妻の容姿は美しく好みと言える、性格も貴族の令嬢として珍しく傲慢さは少なく優しさもある、あの娘、裏切った証である自分の娘でない相手も愛せる程である。この国の貴族子女で彼女以上の妻は居ないだろうと思っている。
だが、満足し好きであっても、妻には悪いが……愛しているとまでは言えない。俺が、生きていて初めて、そして唯一、愛していると思えたのは、あの娘の母親、カスタード国の王女であった彼女……。地位は関係ない。いや関係もあるが、彼女自身を深く愛していた。
……彼女と初めて会ったのはもう20年も前。
20年前には既に俺は結婚していた。
なのに彼女との出会いを運命の出会いと思えたのだ。
運命といっても出会いはありふれたモノだ。
ある同好の貴族に紹介されたSMクラブでの1時間、銀貨8枚(八千円)コースでの運命の出会い。最初の彼女との関係は女王さまと汚ならしいブタという関係であった。まさか本当の王女があんなクラブに居るなんて……興奮したな。
20年も前、あのSMクラブで新人の女王さまとして紹介されたのは、美しい銀髪の髪に美しいとしか言えない十代半ばに見える外見の少女。貴族として様々に美しい女性を見てきたが、彼女と比べたら……。SMクラブに居るような気品と美しさの持ち主でなかった。俺は彼女を見て震えた。
場違いな事も気になったが、それよりも目だ。
彼女の美しい瞳、俺を生ゴミでも見るような美しい目に震えが走った。
今までのSM嬢には恐れが見えた。貴族も利用してる店、俺は貴族とは隠していたが、SM嬢に貴族を相手にするからもしれないと恐れがある。SMを頼んでおいてキレて店を潰した貴族の話もあったから仕方ないのかもしれないが。それでは本当のSではない!
しかし彼女の目には恐れがなかった。
貴族をしていて人の感情を読み取る術を学んできた。相手の真意を見分けられないと公爵だろうと貴族は終わる。読心が出来ると言われるぐらいだ。
そんな俺から見ても心底から彼女は俺を害虫並みに見下していた。それは初めての経験だ。これだけで逝きそうになった。
俺は……彼女がどんなプレイをしてくれるか気になって指名した。
その選択は間違いじゃなかった。
ああ……あの時の感動は今でも忘れられない。本気に感じる彼女の罵詈雑言には感動と感謝の言葉しかない。彼女の容赦のないロウソク攻めは極上の快楽。動物を相手にするようなムチ叩きに喘いだ。あまりの良さに初めて失○した。あれこそが本物のSMだと……。
俺は堕ちた。それからそのSMクラブに何度も通い。何時も彼女を指名し踏んでもらいブタと罵倒してもらった。SMプレイを通じて彼女との関係は深まった。
何年かしてSMクラブ以外でも彼女と会うようになった。彼女の冒険に下僕として付き合ったりしたりな。よく魔物への囮にされたな。(食事的に)食われそうになったり、(性的に)喰われそうになったり……とてもスゴい体験をした。
彼女は凄かった。凶悪な魔物を一蹴する事も凄かったが、まさか魔物を相手に調教をするとは、激しい調教を受ける魔物が羨ましかった。
そう言えば、あの時の調教に魔法も使った事から彼女が同じ貴族だと確信できたんだったな。そもそも彼女は貴族である事を隠してたとは思えないが。
俺は顔も名前も隠し彼女と行動を共にしていた。もしバレれば貴族として終わるからな。俺はよく恐れを知らないと言われるが、貴族として生まれた自分が貴族でなくなるのは恐ろしかった。
なのに彼女は貴族だと隠すことがない。俺は彼女に聞いた貴族として終わるのが怖くないのかと。彼女はこう答えた………別に貴族でなくなっても良いと。
その目は俺を豚にも劣る畜生と言うのと同様に本音を語っていた。
後から判ったが彼女は貴族どころか王族だった。それも世界に名だたるあの国の、そんな国の王族として終わるのも良いと思っていたのだ。
SMクラブを利用していた、魔物をプレイに利用する発想……彼女は……羨ましいほどに、自由だった。
ああ、俺は彼女の自由な性格と突発的な行動、そして……女王さまプレイの腕に心底惚れこんだ。ずっとともにいたい……すべてを投げ出しても良いと思うほど彼女を愛した。
彼女との思いでは一日、一日、全てが俺の宝物。
思い出す……
マスクをして犬扱いされ四つん這いに歩かされたな、
全裸で夜の町に放置された事もある。
見られたら終わりと言う状況……
…楽しかった。
しかしそんな幸せな時間は長くは続かなかった。
彼女が妊娠してしまったのだ。
彼女とは……寝てるときに襲われ関係を持ってしまっていた。理由は魔物に、ヤられて泣いてて鬱陶しいと……
そして、妊娠を知った俺は彼女が王族な事を知らず、妻に土下座してでも側室として彼女を迎えようと思った。SMクラブに通った事も話す覚悟もあった。
しかし……彼女は俺の顔をヒールで踏みながらゴ○ブリを見るような目で断った。その時になって初めて彼女がカスタード国の王女だと教えられた。まさか王女さまが女王をしてるなんて。興奮した。間違えた、相手は格上の国であり側室は無理だとわかった。
そもそもブタの妻になるのはゴメンだと言われて納得した。
彼女は子を出産し俺に娘を託して消えた……。
俺は総てを捨てて追おうと思った……
だがその時に俺は父親が引退し正式に公爵家の当主になってしまった。公爵としての立場に縛られた俺はその日、以降彼女と出会うことはなかった。放置プレイと思い我慢した。
娘は、愛した彼女に託された彼女との娘は……何とか妻を説得し容姿として家に迎えた。
あの娘は、産まれて初めて俺を見たあの娘は俺の股間を潰そうとした。ああ、まさに彼女の子供だと思った。姿も成長するごとに彼女に似てきて、あの娘は何時も彼女の母親の様に俺をゴミを見るような目で見て舌打ちをしていたな。思わずありがとうございますと何度もいいかけてしまった。
そんな愛しい娘が10の頃に婚約の話しがきた。
王から話がきた。第二王子との婚約だ。
めでたい事だと言われたが、あの娘との婚約?そんなの許せるわけがないと当時は始めに思った。だが娘可愛さだけで王から要請された婚約を止めるのは不可能。仕方なく俺は娘の母親について話した。娘の立場を考えると火種に成りかねない。
そしたら王め、怯えてか利用する気か娘をカスタード国に返還するとかトチ狂った事を言い出した。
娘が王女さまに成るのは良いとしても、娘と離れる気もない。
王自身も迷ったのか俺に2択を迫ってきた。
第二王子との婚約か、カスタード国に行かせるか。どちらも嫌だが…ふと思い付いた。結婚させ第二王子を傀儡として、あの娘を実質の女王さまにするという計画を。
あの王子なら傀儡に簡単に出来ると思えた。王子は嫌いだが、何も出来ないように秘密裏に去勢して夫にすれば。本当にあの娘の夫の立場に名目でも成るのは腹立たしいが、それよりあの娘が女王さまとして俺の上に立つ姿を想像すると……ふぅ。
俺は婚約の方を了承した。
未来の女王さまの足元でいぬのポーズする自分を想像して。
そう……これが失敗だった。
望み通りの結果にしようと計画を立てた。
しかし計画は失敗した。
計画外だった第二王子のバカさ加減が。
計画を実行する前にまさか学院で婚約破棄騒動が起きるとは誰が想像できる。前兆はあった娘の悪事の噂、しかしその噂は幼稚な嘘の噂と確認できていた。だから問題ないと放置していたら、学院の進級式で理不尽な婚約破棄をされたのだ……あんな幼稚な噂で、あの娘は何れだけ辛かったか……。
もう選択肢はなかった。
この国では居ても辛いだろうとあの娘を断腸の思いでカスタード国に送り出すことにした。
青ざめた王の許可もえた。
しかし第二王子を溺愛している王妃が暴走し……娘は行方不明となった。探索に出しても見付からずあの娘は死んでしまったと思っていた。
そう愛した女性だけでなく、愛した女性から託された娘を無くしたと……
なのに死んだと思っていたあの娘が帰ってきた。
彼女と同じ王女として。
王女として……ゴク。
どうすべきか。
俺だけじゃなく、
さっき確認したが……あの娘が生きてたと知り妻や子供たち、使用人の誰もが喜んでいた。
思い出せば、妻は、浮気の子供であるあの娘が死んだと聞いた時に…妻は泣き崩れ何日も閉じ籠り、あの娘の異母兄弟の子供たちも……。
妻も子供たちの誰もが思っている事は判る……あの娘に会いたい。
俺も会いたい。
会いたいが……
あの時、理由が有るにしても何の説明もなしに家から放逐した。放逐した後に本来ある筈だった説明もなく何年も一人で……。俺達を恨んでるだろう。恨んで当然だ。……だからこそ謝りたいが。
接触は慎重にすべきなのだろうな。あの娘は俺と血の繋がりが有るとしても……この国より大きな国の王女なのだ。……親として…出会う事は…だが……
俺は悩んだ末にあの娘に家への招待状を出す事にした。
招待状を無視しそもそも来ないか、恨みを言うために会いに来るか、情を持って来てくれるかも判らない。なんにしても……この家にきてくれるなら、俺は謝罪したい。
しかし俺は口下手だ。
すべてを捨てても良いと思うほど愛した相手に愛してると言えないぐらいに……
口で謝罪は難しい。だからだ。謝罪の気持ちを姿で見せようと考えた。
そう考えて思い出した。あの娘の母親に謝罪をすら時の正装と教えられた姿で謝罪をする事にした。
「旦那さま、お嬢様が!お嬢様が……帰って来てくださいました」
あの娘が……そうかあの娘が……
なら。
俺は意を決し服を脱ぐ。
俺は服を脱ぎ下着一枚になり外に出る。あの娘の母親に教えられた彼女の母国で最大限の誠意を見せる全裸での謝罪をしようと娘のもとに向かう。
「旦那さま!?旦那さまとまってください!!?」
なぜか腰にしがみついて止めてくる執事!執事の制止を振りきり向かう!!
殴られた。
意識を無くす瞬間こう思った。……ありがとうございます。