↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/31

第一部  月明かりと鏡

それは、人間たちの暮らす現世の、とある大陸に広がる果てしない大草原で起きたことだった。

何の前触れもなく、虚空に銀色の四角が現れた。

光を冷たく弾きながら、それは周りの空間をゆらりと波打たせ、大気を軋ませる。やがて、耐えかねた空間がガラスのように音もなくひび割れた。

——そして、砕けた。

星屑のような光の尾を曳いて、無数の銀の破片が四方へ散っていく。あるものは現世の街へ。あるものは見知らぬ次元へ。あるものは、生と死の境のあわいへ。そしてあるものは、忘れられた夢ばかりが降り積もった、遥かな積層の世界へと。

破片が落ちた先には、小さな「歪み」が生まれた。鏡の奥が揺れ、井戸の底が光り、夜の窓がほのかに波打つ。それは、現世の子供たちを別の世界へと吸い込むいくつもの入口だった。

そしてもう一つ。

破片が散ったその日から、忘れられた世界を塗りつぶしていく黒い染みが、どこかで静かに、けれど確かに滲みはじめていた。

草原に風が渡る。

割れた銀の四角のことなど、もう誰も覚えてはいなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。