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九泉万緑 ‐常夏世界の底でまた会いましょう‐  作者: ガリガリワン
第一章 復活編

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第四話 にゃんにゃんハント


 夏魔かまの暦、千二十九年、十月十七日。

 ペルポネは屍悦洞しえつどうのアンデッドを滅ぼし、リフルと共に洞窟内で会話を交わしていた。


「リフル。聞きたいのだが、先のアレナトという王魔おうまはどれくらい強かったんだ」

 ペルポネは先ほど自らの手で葬ったアンデッドの王に対し、違和感を抱いていたのだ。


「最近王魔(おうま)認定されましたし……最底辺かと」

「そうか、ふふ、少し安心した」

 リフルの膝の上でペルポネは軽く笑う。

「嬉しいんですか?」

「あぁ、魔族は何も弱体化してない。

 むしろ、九千年前より幾分かマシだ」


 ペルポネはリフルの頬へと手を伸ばして触れては、軽く撫で続けて話し始める。


神魔しんまと呼ばれる魔族も強力なのだろう?

 この戦いで知れたが、余はかなり弱い」


 リフルはペルポネの手首を優しく掴む。

「そんなことないですよ」


王魔おうまの最底辺があの強さ。奴がもし、近接型で剣士などであれば余は敗北していた」

 ペルポネはリフルの頬を少しつまみ、

 横へと痛まない程度に伸ばす。


ほうふぇふかね(そうですかね)?」

「この魔眼まがんは魔力の流れを見通すもの。

 魔眼まがんから復活したのは運が良かった」


 ペルポネはゆっくりと起き上がる。


「リフル。配下は増やせなかったが、

 そろそろ腹が減ったであろう?」

「はい! お腹ボコボコです!」

「……一応、ペコペコと言うはずだが?」

「そうなんですか? ならペコペコです!」


 魔力が多少回復したペルポネは、今後のことを考えながらも立ち上がる。


(やはりと言うべきか、余に最初から従順なリフルが異常であって、今の魔族は好戦的。配下を増やすとなれば一度半殺しにするべき……となると、余は余裕を持たねばならない)


「リフル、寒くないか?」

「寒くないです!」

「そうか」


神魔しんまとやらも配下にはしておきたい。だが、身体を取り返すにも国を滅ぼさねばならない……中々厳しい状況、久しい気分だ)


 * * *


 アンデッドらを滅ぼしてから三日。

 ペルポネとリフルはプルートス王国から南方へ降り続け、国境付近にある山に潜んでいた。


「リフル。色々と余は考えたのだ」

「何をですか?」


 動物を狩って肉を捌き、リフルがそれを焼いている最中、ペルポネは唐突に声を発する。


「貴様は魔力量が凄まじい。ので、王魔おうまを倒せるほどには強くなってもらおうと思う」

「えぇっ? わ、私ですかぁ?

 王魔おうまなんて……勝てないですよ」

 諦めたようなリフル。肉を焼きながらも振り返ってこちらを見る彼女の顔は、不安でいっぱいのようだった。


「なに、いきなりとは言っていない。

 余が貴様を指導してやる」

「え?」

 リフルの肉を焼く手が止まる。

「九千年変わろうと強くなる方法は変わらん。

 貴様をいずれ神魔しんまにしてやろう」

 ペルポネは立ち上がってリフルの横に座り、

 氷を手に纏わせて肉を裏返す。


「石の上で焼く肉は美味そうだ。

 ただ、焦げては意味がないだろう?」

「あっすみません!」

 ペルポネは肉を裏返しては手の氷を溶かして地面を湿らせ、リフルをもう片方の手でこちらへと引き寄せる。


神魔しんまというのは、なれないものか?」

 ペルポネによって身体が密着するリフルは、身体が爆散するほどドキドキと緊張し、幸福感に包まれながらも返答する。


「はい……なれないですよぉ」

「余がいてもか?」

「それは……」

「余は貴様を認めているのだぞ? 確実に弱者ではなくこの世界の強者側だ。自信を持て」


 ペルポネはリフルがモジモジと照れている様子を見ながらも、再び手を凍らせて肉を裏返す。

「焦げるぞ」

「あぁすみませんっ!!」


 * * *


 一方、同刻同大陸、神魔しんまに属する者は、

 自身の配下からペルポネのことを耳にする。


「アレナト死んだの?」

「ハイ」

 彼女は真っ赤な蝶からその声を聞く。

「そ、じゃあ凍塵とうじんね」

「ハイ」

 肯定を続ける真っ赤な蝶。

「はぁ、九千年前の最強最悪の魔族……

 今は弱体化してるのですよね?」

「ハイ」

 彼女は椅子から立ち上がる。

「潰すなら今のうちですわね」


 赫海かくかい、カルトナ・レルルトネ。

 吸血族きゅうけつぞくの女王として君臨しており、高い知力や魔力、大勢の配下などを持っている。神魔しんまとして二十年は生き残り続けているため、人間からの認知も強く恐れられている。


 彼女が襲来した場は血の海が如く真っ赤に染まり、それらのことから赫海かくかいと異名が付いた。


「カルトナサマ、オデカケデスカ?」

 真っ赤な蝶はカルトナの周りを飛び回る。

「この城にいる者全員に伝えるのです。凍塵とうじん、ペルポネ・ライダイアを早急に探し出してくださる? とね。わたくしの配下を殺したんですから、相応の罰は必要でしょう」


 カルトナが住まうのは大陸北部に位置する廃城。元は国があったそうだが今は国名も消え去り、誰も覚えていない小さな国──


 今では吸血族の小柄な女王の住処となり、

 魔族が溢れる楽園へと姿を変えている。


「ショウチ、イタシマシタ」


 * * *


「それで、リフル。こやつは?」

「盗みを働く悪い魔族です!! 

 ぶっ殺しましょう!!」

「ニャアアアッ!!! イヤやぁ!!」


 アンデッドを滅ぼしてから五日。

 ペルポネらが仮拠点とする洞穴に盗みが入った。犯人はリフルが捕まえ、被害は無し。


「許してくださいにゃ。なんでもしますにゃ」

 ペルポネは縄で縛られたその者を見下ろし、

 顎に手を当てて考え続けている。


「なんで猫魔族ねこまぞくがここにいるんですか!!

 猫廟びょうびょうの縄張りで暮らしててくださいよ!!」

「だっでぇ追い出されたんだもん!!」


(猫魔族……人間に近い見た目だが耳に尻尾とある種族、九千年経ってもいるのだな。弱小種族故に滅ぶと思っていたぞ)


「リフル、猫廟びょうびょうとは?」

「え、あぁ神魔の一体ですよ。隣の大陸にいる神魔で猫魔族たちの頂点に君臨してます。なので……普通なら猫魔族なんていないのに」

 ペルポネは縛られた猫魔族の前でしゃがみ、その茶色の瞳を見つめながら質問を開始した。


「にゃんですか……く、食うんですか?」

「食わん、不味い肉は嫌いだ」

「あたしって不味いんだ……」

 しょんぼりする猫魔族に構わず、

 ペルポネは一つ目の質問を投げかける。


「名は?」

「ユニム・バチパチホですにゃ……」


「なぜここに?」

「食べ物が欲しくってぇ……」


猫廟びょうびょうとやらの手先ではないか?」

「違いますぅ追い出されましたにゃ……」


「好きな食べ物は」

「え?」

「早く答えろ」

「肉全般ですにゃ!!」


「……リフル、ユニムの縄を解け」

「な、えぇ!? 本気ですかペルポネ様!」

 ペルポネは質問を終えると立ち上がり、

 リフルに縄を解くように命令する。


「なにせ今は配下を増やさねばならん。

 こやつを余の配下へと引き入れる」

 リフルはすごく嫌そうな顔を見せた。


「なに、貴様を可愛がる頻度は変わらん」

「うぅ……わ、わかりました」

 渋々とリフルはユニムに近づき縄に手をかけ、ゆっくりとそれを解き始めた。


「え、え、え、いいのですにゃ?」

「被害は出ていない、それに生かすとて条件がある。貴様は余の配下となれ、これは命令だ」


 ユニムはそんなことを急に言われ、

 冷や汗を流しながらもゆっくりと頷き、

 正式にペルポネの配下となったのであった。


「む〜……殺せば良かったです」

「おっかないこと言うんですにゃね……」

 ペルポネの決断には不満なリフル。


 縄を解かれ、リフルに睨まれるユニム。

 ぺルポネは一つの質問を投げかける。

「……さて、ユニム。

 貴様は何が出来る?」


 猫の特徴を持つ魔族で名はユニム。

 彼女は生かされたことを喜ぶと共に、

 理解できないまま配下になってしまった。


 後に彼女は知る。


 とてつもない面倒事に首を突っ込んだと。

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