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九泉万緑 ‐常夏世界の底でまた会いましょう‐  作者: ガリガリワン
第一章 復活編

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第二話 九千年経っても変わらない


「リフル。一度貴様の力を見せてみろ」

「いいのですか!?」


 ペルポネがリフルと出会ってから五日ほど、

 森を抜けて平原を歩く中で村を見つけた。


「貴様の力を把握しておきたい」

「私やります! 村をぶっ壊します!」

「そこまでしなくていい。一人戦士がいるはずだ。そいつと戦って殺してこい。本気で戦え」


 ペルポネはすでに大陸内で最も危険な存在とされており、整備された道を通るわけにもいかず、背の高い草の中から村を二人で眺めていた。


「任せてくださいっ私頑張ります!」

「あぁ、頼む」

 ペルポネはリフルの頭を軽く撫でてやると彼女は跳び上がって翼を羽ばたかせては飛び始める。そしてそのまま村へと向かっていった。


(さて……どう戦う? なにせ九千年。余の知る魔法や剣術はアテにならないだろう。時代に合わせて余も変わるべきではある……だが、なにも概念まで変わったわけではないようだな。小手先の技法が変化したのみ……と考えよう)


 そう考えながらもペルポネは草むらから村を見ていると、リフルが村の上空から一つの家へと隕石のように落ちていくのが視界に映った。


 轟音がこちらにまで聞こえ、ペルポネは目を凝らしながらも見ていると、土煙の中から電撃が放たれ、リフルは後ろに跳びながらそれを避けている。


(魔法……の反撃にしては早すぎる)


 ペルポネの知る魔法は詠唱や魔法陣などが必須であり、発動までに長い時間が必須である。


(リフルは闇属性か? 希少な属性……)


 リフルは土煙を晴らしながら、周囲へと大量の電撃を放つ魔法使いに対し、黒い球のような物を指先から放った。


 それは電撃を上書きするように打ち消し、

 魔法使いは思わず横へと跳んで回避する。


(あの魔法使い、平均的かはわからないが、

 そう強くはないように見える……)


 魔法使いは焦ったように電撃を放ち続けるも、リフルがそれを飛びながらスラスラと避けてきて、接近を許してしまった。


(基準を知らない余が定めるのは不可能か)


 ペルポネは草むらから出て村へと近づき始めると、リフルが左腕に黒い霧を纏わせて魔法使いの腹を貫き、蹴り飛ばして地面に倒した。


 リフルの圧勝である。


「リフル」

「……あっ、あっ! ペルポネ様!」

 声をかけるまで無表情だった彼女は、

 ペルポネが声を掛ければパッと笑顔になる。


「闇属性を扱うようだな」

「はいっ! お気に召しましたか?」

「……あぁ、嫌いじゃない」

 その言葉にリフルは翼をぴょこぴょこと動かし、ニコニコと横に身体を揺らしていた。


「オマエら……まさか、なんで……組んで」

 すると、魔法使いが掠れた声を発する。


「ペルポネ様、今トドメを刺しますね!」

「待て。聞きたいことがある」

 そう言ってリフルを止めたペルポネ、

 魔法使いに近寄り見下ろす彼女は一つ問う。


「貴様、強さはどの程度だ」

「ゴフッ……俺の強さなんて知ってどうなる」

「答えろ」

「言わねぇよ……バァ〜っカ」

 ペルポネは魔法使いの態度を見て背を見せ、

 リフルの肩を軽く触ると村の外へと向かう。


「ペルポネ様?」

「もうここに用はない。行くぞ」

 ペルポネはリフルに来るよう伝える。魔法使いの男はそんな二人の背中を見て、唇を噛み締めながらも魔法の杖を握り、彼女らに向ける。


「く、たばれッ!」

 そうして精一杯の魔力を込めて放とうとする魔法は、発動する前に頭上から氷塊が落ちてきて、呆気なくペシャンコにされて絶命した。


「いいのですかペルポネ様?」

 リフルはチラッと振り返り魔法使いの亡骸を見ると、不思議そうにペルポネへと問う。


「治癒魔法で生かしても良いと思ったが、あの性格では情報は得られなかっただろう。余も汚い言葉ばかり聞くのは趣味ではない」

 ただの魔力の放出で超低温の氷塊を作り出し、魔法使いの男を凍らせて殺したペルポネ。


「それもそうですね!」

「あやつに聞かずとも、リフルがいる」

「うへへ……いやぁ嬉しいですっ!」

 横を歩くリフルがペルポネの肩に寄りかかり、彼女はそれを嫌がる様子はなかった。


 * * *


 名を知ることもなく魔法使いを一人殺害した二人は、村の名も知らずに去っては再び平原を歩く中で、会話を絶やさず話していた。


「リフル。貴様は王魔おうまに当たる魔族か?」

「いえいえ、私は俊魔しゅんまでございます!」


 魔族には四つの危険指標が存在する。


「……何個あるのだ?」

「四つですよ! 凡魔ぼんま俊魔しゅんま王魔おうま神魔しんまってありまして、ペルポネ様は絶対神魔しんまですっ!」


 ペルポネは歩きながらもその指標を聞いて、顎に手を当てて考える。


神魔しんまは何体いる?」

「えーっと……超絶強いので確か八体?

 ペルポネ様入れて九体ですね!」


(余の時代で言えば七嶺大魔族しちれいだいまぞくに似たものか、恐らく神魔しんまは今の余よりも圧倒的に強い。実際の余はリフルと同等かそれ以下……一刻も早く身体を吸収しなければいけないな)


「リフル。神魔しんまはこの大陸にいるか?」

「ペルポネ様を除けば一体だけいます!」

「名を言え」

「異名として赫川かくせんを有していて吸血族きゅうけつぞく

 カルトス・レルルトネってのがいます!」


 赫川かくせん。カルトス・レルルトネ。

 神魔に分類される吸血族の最強の個体。


 残虐性を多く有しており、人間を弄んで殺すのが大好きである。そんな彼女は単体行動する魔族として知られている。


「怪物か?」

「ものすごく強いです!」

「そうか。ならかなり後でいいな」

「そうしましょう!」


 雑談に近い会話。ペルポネはそうしながらも九千年ぶりの世界を知り、内心では少しだけ驚いているようだ。


 * * *


 リフルと出会ってから二週間。

 ペルポネは一つの大洞窟前へと到着する。


「ここが屍悦洞しえつどうか?」

「はいっ、アンデッドの王様がいるのお気をつけてください! 私も戦います!」


 ペルポネは左手でリフルの喉を優しく触り、

 自身の冷たい手にピクッとリフルは反応。

「余が一人で戦う。腕試しがしたい」

「わ、わかりました」

 こくこくと頷いて後退するリフル。


 ペルポネはそうしてリフルを後ろに置いて前に一歩進み、洞窟の中へと侵入していく。


 中に入れば外のような暑さはなく、

 仄かにひんやりとした感覚が肌に伝わる。


 リフルは翼をたたんでギュッとペルポネの服を掴んでいた。どうやら暗いところが嫌いな様子で、辺りをキョロキョロとしていた。


「……リフル。余は戦いが好きだと思うか?」

「え? ……えっと、ど、どうでしょう?」

 ペルポネが戦いを好んでいたかはどの歴史書にも載っていない。リフルはここにきて答えることができなくなってしまう。


「やはり貴様は運がいい、

 余を好むならば余を知ることだ。

 余のすぐ近くで多くを学び、経験しろ。

 ここ十日以上、貴様の献身に対する褒美だ。

 焼き付けろ、余の魔法をその目にな」


 ペルポネはそこで初めて口角を上げ、両手にパキパキと音を鳴らしながら氷を纏い、リフルはそんな彼女を羨望の眼差しで見つめていた。


「それと……余は戦いが──《《大好きだ》》」

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