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第11話 第二次宇都宮城攻防戦 その2

 慶応4年(1868年)4月23日午後2時頃――。

 午前10時頃に始まった宇都宮城の西・松ヶ峰門での戦闘は、新政府軍・第三救援軍の撤退により一段落することになったが、しばらくすると戦況は新たな局面は迎える。

 伊地知率いる第二救援軍到着――。

 第二救援軍は、宇都宮城の南、三の丸の堀の外側・地蔵堂門に攻撃を仕掛けた。

「速やかに攻撃を開始されたし!」

 伊地知が放った伝令が六道口の野津たちに告げた。第三救援軍は再び松ヶ峰門への攻撃を開始した。

 その頃、地蔵堂門に攻撃を仕掛ける第二救援軍は、大鳥軍の必死の抵抗を退けてここを突破した。伊地知は隊を三つに分けた。

「お前たちは東に向かい、そこでさらに隊を二手に分けよ。一隊は城各門を落としつつ本丸に進め! もう一隊は更に北へ向かって山を占拠せよ!」

 指示を受けた隊は東へ向かった。続いて伊地知は、別の隊に指示を出した。

「野津たちの支援に回れ! 我が軍が優勢であれば、そのまま北に回り込め!」

 戦慣れした兵たちは素早く行動を開始した。

「残りは我とともにこのまま突き進む!」

 伊地知の号令のもと、残りの第二救援軍は前進、三の丸を目指した。

 伊地知の兵法の特徴は、奥義を極めた合伝流兵学の火力絶対主義に加え、徹底した少数精鋭主義、そして速戦主義である。この兵法を用いるため、第二救援軍は薩摩藩兵と奇兵隊を中心とする長州藩兵から精鋭が選抜されていた。彼らは伊地知の指示を的確に実践し、一気呵成に攻め立てる。

 松ヶ峰門へ向かった部隊は、第三救援軍とともに攻撃を行い、これが優勢と見るやそのまま城郭に沿って北に進軍、大手門に攻撃を仕掛けた。

 一方、東に向かった部隊は下河原門と中河原門に攻撃を開始。これと当時に一隊が宇都宮城の東部を大きく迂回して城の北側、宇都宮城を見下ろす明神山を強襲し、この地を守る大鳥軍を駆逐してこの地を占領した。

 明神山を奪われたとの報せが、二の丸で指揮を執る大鳥のもとに届く。

「明神山を奪われては、我らはただの的。速やかにこれを奪還せよ!」

 大鳥は、いまだ新政府軍の攻撃を受けていない宇都宮城北東部の今小路門から部隊を出撃させた。そしてこの部隊は、明神山の北にそびえる八幡山に配置した部隊と共に明神山の第二救援軍を攻撃し、これを奪還した。

 第二救援軍が参戦したものの、いまだ数に勝る大鳥軍。城の周囲いたるところで一進一退の攻防戦が繰り広げられた。

 三の丸の突破を試みる伊地知。しかし、広大な宇都宮城を前に、いくら少数精鋭主義でも限界があった。一度は確保した明神山を奪われ、そこからの砲撃と大鳥軍の激しい抵抗により行く手を阻まれる。

「さすがに厳しいか……」

 もうすぐ夕暮れ時。伊地知が一時撤退を検討し始めたときだった。

「河田殿率いる部隊が到着! 明神山へ向かっております!」

 伝令の言葉に伊地知の眼に力が宿る。

「もう一息だ! 進め!」

 喧騒の中、伊地知の声が響く。第二救援軍は攻勢を強めた。

 河田率いる第一救援軍の参戦が戦況を変えた。装備も十分な新手の部隊である。第一救援軍は、明神山の大鳥軍の背後を強襲してここを再占拠すると、一隊を大手門に向けた。

 こうして宇都宮城は、ほぼ新政府軍に包囲されることになった。新政府軍が包囲網を狭めて徐々に本丸に迫る。恐怖にかられた大鳥軍の脱走が始まる。さらに土方や大鳥自身も傷を負った。

「もはやこれまで……」

 大鳥は撤退を決し、全軍に宇都宮城から脱出して日光に撤退するように命令を発した。午後4時過ぎであった。

 こうして宇都宮城は、再び新政府軍のものとなった。


 新政府軍が宇都宮城を奪還した頃、戸田三左衛門率いる宇都宮藩兵300人は、古河宿にあった。

 前日22日、二日後の24日に宇都宮城総攻撃が行われるとの報せを受け、戸田三左衛門は先鋒として参戦すべく、館林藩から支援を受け、準備を進めた。

 そして23日早朝、雪辱に燃え、獅子奮迅の働きをなそうと意気込んで館林を出発、宇都宮を目指していた。

「今、何と申した?」

 三左衛門は、伊地知が遣わした伝令の言葉に耳を疑った。

「すでに宇都宮城への攻撃が始まっております! お急ぎを!」

 三左衛門の頭の中は真っ白になった。古河宿から宇都宮まで約11里(44㎞)の道のり。丸一日の行軍で、ようやく到達できる距離である。

「もはやこれまで……」

 つぶやきながら、三左衛門は力なくその場に座り込んだ。

(城を落とされ、これを奪い返す戦いの先鋒を申し出ておきながら、その戦いに参加できないとは、末代までの恥……)

 三左衛門は、全軍に古河宿での待機を命じた。

 その夜、新政府軍が宇都宮城を奪還したとの報せが三左衛門のもとにもたらされた。三左衛門は、張りのない声で部下に指示を出した。

「急ぎ江戸に伝えよ。皆の者には、今日はゆっくり休めと……」

 言い終えた三左衛門は顔を下に向けた。

(どのような顔で城に入ればいいのか……)

 この使者が、館林と板橋を巡り、二日後の25日、宇都宮に向かう勇記に宇都宮城奪還の一報を届けることになる。

 翌24日早朝、古河を出発した戸田三左衛門率いる宇都宮藩兵は、夕刻宇都宮城に入城した。そして、新政府軍を代表して伊地知から宇都宮城を引き渡されたのであった。

 居城の奪還戦に参加することができずに面目丸つぶれの宇都宮藩であった……。


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