第217話 黄金の爪? 勇者のるんが装備できないなら不要です
ジュリアさんがピラミッドの下の部分に穴を開けていると、ノーラさんがやってきた。
「ここは涼しいわね」
「日陰ですからね。祈りは終わりましたか?」
「ええ。無事にね。ものすごく暑かったけど」
大変だ。
「ほれ、ノーラ、飲め」
サクヤ様がコップに入ったお茶をノーラさんに渡す。
「ありがとうございます……あー、冷えたお茶が全身に行き渡っている気がするわー……ところで、ジュリアさんは何をしているの? ピラミッドを持ち帰る気?」
さすがにそれは無理だ。
「秘密の扉を探しているんですよ」
「何それ?」
ゲームを知らないか。
当たり前だけど。
「ウチの世界にある物語とかだと、こういう裏に秘密の扉があって、その中にお宝があるんですよ」
「あー、はいはい。そういう隠し扉的なものね。それを探しているわけか……しかし、すごい魔法ね。一瞬で穴が開いてるじゃないの」
ホント、すごい。
「フロック王国で魔石に魔法を込める仕事をしましたけど、好評でしたね」
「へー……私もその魔法を込めた魔石が欲しいわ。何しろ、穴を掘るって発掘の基本だからね。特にこの砂漠ではそう」
ほとんどの遺跡が砂に埋まっているのだったな。
「ハルトさーん、扉がありましたー」
「え?」
ジュリアさんの方を見ると、手招きしていた。
「本当にあったの?」
「みたいですね。行ってみましょう」
俺達はジュリアさんの方に向かう。
すると、ジュリアさんの足元には2メートル四方ぐらいの鉄板みたいな扉が確かにあった。
周りは砂なのだが、この鉄板の下には石材があるため、明らかにこの下に何かがある。
「本当にあったんだ……これも封印っぽいわね」
ノーラさんが扉に触れながらつぶやく。
「本当にゲーム通りだね」
左右や頂上を見ると、ここがちょうど真ん中なことがわかる。
「私もこの辺かなと思いましたが、本当にあってびっくりです。ノーラさん、封印はどうでしょう?」
「うーん、ちょっと無理かな……この前と一緒。どうやらこの時代は鍵代わりにこの封印を使ってたみたいね。いや、保存の魔法もか……」
本の状態がすごく良かったしね。
「食料庫だったらびっくりですね」
「それはそれで貴重だと思うけど、こんなピラミッドだっけ? 立派なところにそんなものを設置しないでしょ」
まあね。
「どうします? 発掘はしない方針なんですよね?」
「そうなんだけど……この中にあるもの次第ではこの遺跡が何なのかがわかる可能性があるのよね。棺があればお墓だし」
ミイラ……
「ノーラさん、開ける許可をもらえれれば穴掘り魔法で開けますけど……」
今度は剣じゃなくてそっちか。
「天罰はないのよね?」
ノーラさんは不安そうだ。
まあ、ノルン教のトップだし、そう思うのも仕方がない。
「ノルン様はお優しい神様なので大丈夫だと思います」
「ええ。気にされないと思いますよ」
というか、多分……
「まずもって興味がないじゃろ……」
そう思う。
「じゃ、じゃあ、お願い」
「わかりました」
ジュリアさんが頷き、扉に向かって手を掲げる。
すると、扉が一瞬でなくなった。
「原理がわからないんだけど……」
俺もわかんない。
「穴を開けるんです」
「そ、そう? まあいいわ。えーっと、ちょっと待ってね。中に罠がないか確認するから」
ノーラさんがかがみ、奥を覗く。
ただ、真っ暗で何も見えないような気がする。
「懐中電灯って家にあったっけ?」
前の俺の家にはなかったが、今の家にはどっかにあった気がする。
「非常用のがあると思います。でも、魔法でどうにかできませんかね? 火魔法でもいいですし」
あー、それもそうだな。
「その辺の魔法は私が使えるから安心して。こんな感じ」
ノーラさんがそう言うと、光の玉が現れ、扉の奥を照らす。
すると、下に降りる階段が見えた。
「あ、俺も似たような魔法を使えますね」
「ゴブリンを皆殺しにした攻撃魔法じゃろ」
うん。
光球から無数の矢が飛び出すシャイニングアローね。
「使わないでね」
「使うわけないじゃないですか。それで罠はどうです?」
「なさそう。封印で十分と思ったのかもね。あなたの奥さんの剣と謎の魔法で簡単に破られたけど」
ジュリアさん、強いもん。
それなのに最強武器のノルン様ソードを装備している。
「自慢の奥さんなんですよ」
「自慢の夫です」
いやー、照れるなー。
「お幸せに……行く?」
「行きましょう。何があるかわからないので俺が先行します。ジュリアさん、サクヤ様とノーラさんをお願い」
サクヤ様はもちろんだし、ノーラさんも戦えるようには見えない。
「わかりました」
ジュリアさんが頷く。
「ノーラさん、灯りをお願いしますね」
「ええ。任せて」
「では、行きましょう」
ちょっと怖いが、ロマンを求めるわくわくが勝ち、一歩踏み出して階段を降りていく。
足元が不安かなと思ったが、ノーラさんが出した灯りは想像以上に明るいため、足元もよく見えている。
とはいえ、何が出るかわからないので慎重に一歩ずつ下へと降りていった。
「サクヤ様がいなかったら怖くて行けませんね。崩れたら生き埋めですもん」
「実際、そういう事故がないわけじゃないわね」
発掘も大変だ。
「気を付けてくださいね」
「わかってるわよ」
階段を降りていくと、10メートルくらいで下までやってきた。
「暗くてよくわかりませんね」
数メートル先はわかるのだが、その先が見えない。
多分、広場だと思うが……
「もうちょっと魔力を強くするわ」
ノーラさんがそう言うと、光球が上に上がっていき、光が強くなった。
すると、部屋の全貌が見えてくる。
部屋はかなり広く、数十メートル四方はある。
多分、上のピラミッドの最下段と同じ広さだ。
そんな部屋は石造りの床となっており、天井も高くてだだっ広い。
「黄金の爪……じゃない、剣ですね」
ジュリアさんが言うように部屋の奥には台があり、光り輝く黄金の剣が飾られるように置かれている。
そして、その台の左右には剣を持った真っ黒い鎧が不自然に飾られていた。
いや、絶対にあの鎧が動くだろ。
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