第216話 パーティーにぶどうかがいないのに爪を取るハルト君
砂漠を進んで1時間くらい経つと、前方に三角形の何かが見えてきた。
「ノーラさん、あれですか?」
運転しているジュリアさんが聞く。
「ええ。あなたに見せてもらった絵と似てるでしょ」
「まだ遠いですけど、砂漠にあるとそれにしか見えませんね」
うん、ピラミッドだ。
「ノーラさん、本には書いてませんでした?」
「それっぽい絵が描いてある本はあったけど、解読がまだなのよ」
本に書いてあるってことは結構、重要な遺跡なのかもしれないな。
ジュリアさんが運転する車はどんどんとピラミッドらしき遺跡に近づいていく。
すると、徐々にその姿が見えてくるのだが、どう見ても石材で積まれたピラミッドにしか見えない。
ただ、1つ違うのは階段があり、頂上まで繋がっていることだ。
「墓ではないかものう」
隣にいるサクヤ様がつぶやく。
「と言いますと?」
「墓の上に登らんじゃろ。この世界の文化は知らんが、死人を侮辱する行為じゃぞ」
確かに間違っても先祖の墓には登らんな。
「祭壇ですかね?」
「そのように見えるな。もしくは、演説用の舞台とかかの」
うーん……
「ノーラさん、あそこは発掘してないんですよね?」
前にそう言っていた。
「そうね。罰が当たるもの」
ノルン様なら大丈夫だと思う。
「誰が我に罰を当てるんじゃ?」
まあね。
サクヤ様は神様だ。
「ノルン様はそんなことしませんよ。ちゃんとバナナのやつをお供え物として渡しました」
ぐつぐつだって奢ったぞ。
「まあの……さて、もう着くの」
もうピラミッドまで100メートル以内の距離になっている。
「ノーラさん、どこに止めれば?」
運転しているジュリアさんが聞く。
「階段の近くに止めてちょうだい。まずはお祈りをしないといけないから」
「わかりました」
ジュリアさんは階段近くまで車を動かし、停車させた。
すると、ノーラさんが車から降りたため、俺達も降りる。
「悪いけど、ちょっと時間がかかるわ。車の中にいてもいいし、適当に探索してもいいから待ってて」
「わかりました。でも、この暑い中で祈るんですか?」
熱中症にならない?
「それが祈りよ。それに登山したり船で海を渡らないといけないあの2人よりはマシ。私は車で来られるからね」
まあ、火の国は一日中歩いたから大変だったな。
水の国も船が沈んで大変だったけど。
「お気をつけて」
「慣れたもんよ。じゃあ、行ってくるわ」
ノーラさんはそう言って、階段を昇っていったので見上げる。
「近くで見ると高いのう」
「どれぐらいでしょう? 20メートルはありますかね?」
エジプトのピラミッドの大きさがわからないが、このくらいなのかね?
「そんなものかの……天にその身を捧げに行く乙女じゃな」
こらー。
「生贄じゃないですって」
「そうですよ。ラスボスを倒しに行く勇者です」
それはどうかな……
ノルン様がラスボスになってんじゃん。
「しかし、こんなところでよう祈るな。教会で祈ればいいのに」
「考え方や神への接し方なんてそれぞれですよ。どちらかというと、家でゴロゴロしたり、屋根裏や倉庫で膝を抱えている方がおかしいと思いますよ」
サクヤ様とタマヒメ様ね。
「巫女達が祈る先は他人の家のリビングのテレビを独占する奴じゃがな」
「いいじゃないですか」
「まあの。それでどうする? 車で待ってるか? それともちょっとこのピラミッドを探ってみるか?」
うーん……
「車で待つのも気が引けますし、ちょっと見てみましょうか」
「私もちょっと見てみたいです」
「では、そうするかの」
俺達は時計回りということで左の方に歩いていきながらピラミッドを見ていく。
「どうやって作ったんですかね?」
「さあの。エジプトのやつはどうじゃ?」
昔、テレビで見たことがあるんだよなー。
「えーっと、ソリとかで引くんだったかな?」
「ふーん、大変じゃの」
「どうでしょうかね? この世界は魔法がありますし、もっと楽なんじゃないですか?」
「おぬしならあの石材も浮かせることができそうじゃの」
多分、できるね。
「この前の封印された書庫もですけど、文明レベルが高い気がしますね」
ジュリアさんがピラミッドを見上げながら言う。
「っぽいよね。今はこんな砂漠だけど、昔はもっと町とかたくさんあったんだろうね」
「どういう感じだったんでしょうね?」
「さあ? その辺を調べるのがノーラさんの生きがいなんだと思うよ」
すごいことだ。
「解読が進むと良いですね」
「ホント、ホント」
俺達はその後もピラミッドの周りを歩いていると、階段がある面の裏の面に来た。
「こっちは日陰じゃの」
「楽でいいですね」
「日差しがないだけでかなり違います」
ホントにね。
「ジュリアさん、どう思う?」
「ゲームなら裏に隠し扉か階段があって、宝箱があります」
うん、俺もそう思った。
「つくづくゲームばっかりじゃの、おぬしら……」
好きなんだからそれは仕方がない。
「ちょっと調べてみようか」
「そうしましょう。私に任せてください」
ジュリアさんはそう言うと、石材の下の辺りに手を掲げた。
すると、穴が開き、砂で埋まっていた石材が露出する。
「便利な魔法じゃの」
「さすが穴掘り名人だ」
土属性の魔法使い。
「ありがとうございます」
ジュリアさんがその後も右からどんどんと穴を開けていった。
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