第214話 飛行機さん「けっ」
飛行機で東京にやってきた俺達は荷物を受け取り、電車に乗り込む。
「すごいですね。空港もでしたけど、すごく人が多いです」
「びっくりだよね」
俺達の地元の空港にはまばらにしか人がいなかったし、飛行機の中もそんなにいなかった。
しかし、東京の空港は本当に同じ日本なのかっていうくらいに人が多かった。
「ええ。それにビルがすごいです。砂漠や平地ばかり見ていたせいでこのビル群がものすごく近未来に見えます」
異世界は基本的には自然豊かなところだからね。
「ホントにね。一応、言っておくけど、多分、異世界の方が治安が良いから気を付けてね」
まあ、夜の話だけど。
「はい。まずはホテルに荷物を預けるんですよね?」
そういうことになっている。
「そうだね。それから色々と見て回ろう」
俺達は電車を乗り継ぎ、宿泊するちょっと良いホテルにやってくると、フロントに荷物を預けた。
そして、ジュリアさんが行ってみたいと言っていた場所を見て回る。
観光地は明日のツアーで回るため、この日は主にお店だ。
有名なお店から地元にはない大型書店やアニメショップなんかを見て回り、昼食はテレビでやっていたお店に並んだ。
ジュリアさんは服や装飾、雑貨なんかを楽しそうに見ていたが、大型書店やアニメショップの時はテンションがもう一段階上がっていた。
非常に可愛らしかったが、行ってはいけないコーナーに行こうとするのを止めるのが大変だった。
夕方になると、新婚旅行だというのに何故かゲームセンターに行き、一緒に遊ぶ。
これはこれで楽しかったし、東京にいた時も行ったことがなかったのでジュリアさんと行けて良かったと思う。
もし、お互いがこっちの人間だったらこういうデートをしていたのかもなとも思った。
ジュリアさんが見たいと言っていたところを見て回ると、某有名焼肉店に行って、夕食を食べた。
非常に美味しかったし、やっぱり異世界は異世界の良さがあり、こっちの世界にはこっちの世界の良さがあると思えた。
そして、夕食を終え、店を出ると、辺りは暗くなっていたが、当然、東京は夜でも明るい。
俺達は人が多い中を歩いていき、ホテルにチェックインすると、お風呂に入り、一息ついた。
「ふう……楽しかったですけど、疲れますね」
「結構、歩いたしね」
地方にいると、車移動が主だからこんなに歩くことはない。
最近は週末に異世界に行っているから身体を結構、動かしているが、都会は歩く以外にも人が多いということで疲れるというのもある。
「何でもありますし、すごく娯楽の多い町だなって思いました。でも、一方で、もし、高校卒業後に家族の反対に遭わずに東京に出ていたらどうなってただろうって思っちゃいました」
ジュリアさんは結局、地元の大学にしたんだよな。
「どうなってたと思った?」
「多分、卒業後に帰っていると思いますね。すごく良い町ですけど、なんか違いました。魔導帝国より各地の聖都の方が好きって感覚に近いです」
それはすごくわかる。
別に都会が悪いわけではない。
ただ、幼少期をそういう田舎で育った俺達はそっちが合っているだけなんだ。
「東京に住みたいとは思わない?」
「昔はそう考えたこともありますが、今はもうないですね。あの町が好きですし、岩見に嫁ぎました。それに異世界旅が楽しくて仕方がないですよ」
まあね。
「でも、アニメショップでは興奮してたね?」
「いや、ハルトさんもでしょ。あっちにはないんですから仕方がないですよ」
ジュリアさんが笑う。
「俺さ、ずっと東京にいたけど、そういうところには行ったことがないんだよね」
「そうなんですか? 忙しかったから?」
「それもあるけど、単純に1人で行っても楽しくないかなって思ったから。子供の頃からアニメやゲームが好きだけどさ、今がこれまでで一番楽しいよ。ジュリアさんと一緒にゲームをしたり、アニメを見たり、そういう話をするのがすごく楽しい」
今思えば、ジュリアさんと微妙な関係だった時にサクヤ様がちゃんと自分の趣味を話せと言っていた意味がよくわかる。
「それはそうですね。私は友達に同じ趣味を持った人がいませんでしたし、ハルトさん……とノルン様にゲームを教えてもらってより好きになりました」
俺もノルン様にゲームを教えてもらったな。
なんなら買ってくれる。
「これからも一緒に楽しもうね」
「はい。そういったことだけでなく、異世界も普通の生活も楽しみましょう」
「そうしよう」
俺達はその後も話をし、ちょっとお酒を飲んで就寝した。
翌日はツアーを組んでいるので他のお客さんとバスに乗り、観光地を見て回る。
有名なスカイツリーや浅草なんかに行き、テレビで見たことある場所を巡っていった。
正直、東京の方が観光地が多いなって思った。
この日の夜はちょっと良いお店でコース料理を食べ、危なくない程度に夜の東京を散策したりもした。
ホテルに戻ると、前日と同じように夜景を見たりしながら話をし、就寝した。
最後の日は昼に帰ることになっていたので何故かまたアニメショップに行き、楽しんだ。
そして、空港に行くと、お土産を買い、帰りの飛行機に乗り込む。
「どうだった?」
窓の外を見て、わくわくしながら離陸を待っているジュリアさんに聞く。
「すごく楽しかったですね。異世界も良いですけど、日本を観光するのも良いです」
「そうだね。また来てもいいし、次は違うところに行ってもいい。旅行くらいなら申請すれば行けるからまた行こうよ」
俺、沖縄に行きたい。
「はい。さすがは当主様ですね」
「ジュリアさんはその奥さんだよ」
「もちろんです。岩見樹莉愛ですよ?」
ジュリアさん、自分の名前が好きだよね……
「そうだね。もうすぐ離陸かな?」
「怖いんで手を握ってくださいよ」
ジュリアさんはそう言って手を握ってきた。
「もちろんだよ。怖いもんね」
「ふふっ、そうですね」
仕方がないよ。
「楽しかったけど、来週はピラミッドだよ」
「ですね。毎週が……いいえ、毎日が楽しいです。一昨日の話ですけど、こういう旅行も異世界旅もゲームやアニメも何もかもが楽しいです。そして何よりもハルトさんと一緒にいられるのが一番楽しいですよ」
「俺もジュリアさんと一緒で楽しいよ」
ジュリアさんと見つめ合う。
「……帰ってからですよ?」
小首を傾げるジュリアさんが可愛い。
「うん。あ、動き出した」
飛行機が動き出し、離陸の準備に入った。
「飛びますね」
いやー、怖い。
ジュリアさんの手が頼もしいわ。
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