第213話 離陸と着陸は慣れない
しばらく待っていると、タマヒメ様とノルン様が帰ってくる。
「ただいまー」
「やっぱり我が家が一番ですね」
ツッコミ待ちかな?
「おぬしらの家は別じゃろ」
ツッコミ気質のサクヤ様がツッコんだ。
「別によいではありませんか。それよりもあなた方は異世界に泊まらないんですか?」
ノルン様が聞いてくる。
「タマちゃんを待っておったんじゃ」
「私? 待たなくても勝手に行けば良かったじゃないの。私も後で勝手に転移を使って行くわよ」
「ぐつぐつを食べに行くんじゃ。それに放っておいたら拗ねて来ないじゃろ」
うーん、何とも……
「拗ねないわよ! でも、ぐつぐつは良いわね。ノルンも行く?」
タマヒメ様がノルン様を誘う。
「そうですね……たまには行きますか」
あれ? 来るんだ……意外。
「おぬし、辛いのは大丈夫か?」
「私は神ですよ? それに行きつけのカレー屋ではいつも10辛です」
へー……ノルン様、カレーが好きなんだ。
そういえば、前に俺が作ったカレーを食べてたな。
「では、行くかの」
俺達は転移で火の国の別荘に飛ぶと、そのままマグマ亭に行き、ぐつぐつ定食を食べる。
なんかカウンターに見たことがある巫女様がおり、ぐつぐつを食べているが、絶対にこっちを見ようとしていないのがちょっと面白い。
「ノルン様、パソコンはどうでした?」
俺もサラさんを見ないようにし、ノルン様に聞く。
「だいたいわかりましたね。これからスペックを詰めていきます。今月中には頼むつもりです」
ノルン様も凝り性だなー。
性能差で負けたくないからだろうけど。
「前から思ってましたけど、どこでお金を手に入れているんですか?」
「援助ですね」
え、援助……
「ノルン様、それはやめた方が……」
「あなたの考えているようなことではありません。というか、非常に不敬です」
それもそうだ。
「すみません。でも、援助って?」
「日本にはたくさんの神がいます。その中でジュリアさんの家のようなお金持ちの家の神もいますし、資産家もいます。そういった者達からもらいました」
そんなんでくれるの?
「ノルン様の威光ですかね?」
一神教だし、すごい力を持ってそう。
「適当に金や銀を渡したからですね」
それじゃん。
援助じゃなくて、換金じゃん。
「ほどほどにしてくださいね」
「適当に遊んでいるだけですよ。私だって、ちゃんと本業があります」
ということは祈りをちゃんと聞いているんだな。
「それなんですけど、ちゃんとした場所で祈らないとダメとかってあるんですか?」
「何がです?」
「いや、土の国の巫女様が正式な祭壇が消えたんで近くにあった祭壇を代わりにしていると言っていました。生贄の祭壇だそうです」
そこにいる人も火山のせいで別のところで祈っているし。
「生贄って……私は邪神ではありませんし、祈る場所なんか関係ありません。そういうのは私のためではなく、信者のためにすることです。教会で祈っても私はちゃんと聞きますし、祈りというのは儀式みたいなもので私のためではなく、巫女の権威を上げるためなんですよ」
「権威ですか……」
あっちの世界ではあまりそういうのを感じたことがないんだけどな。
「これも大事なことなんです。巫女は人々の願いを一つにまとめる役割ですからね。私だってとんでもない数の願いをいちいち聞いてられませんし、聞いても対応できません。だから巫女という代表がいるわけです」
なるほどー……
「同じ神様でもウチや浅井さんのところとは全然違いますね」
「当たり前です。サクヤやタマちゃんは家の神です。すなわち、世界が岩見であり、浅井なのです。私の世界はこの世界にいるすべての民です。あの子達はすべて私の子なのです」
立派な方だ!
俺達はぐつぐつを堪能すると、別荘に戻る。
ノルン様はゲームをするために帰っていったが、俺達はお風呂に入り、まったりと過ごしていった。
翌日の日曜日は来週の東京旅行のための準備をし、月曜からは仕事をこなしていく。
毎日のようにジュリアさんとここに行こうとかあれを食べようとか話していき、木曜には仕事終わりに健診のために組合に顔を出した。
そして、金曜になり、早くに起きると、朝食を食べ、会社の服ではない私服に着替える。
「それではサクヤ様、タマヒメ様、ノルン様、東京に行ってきます」
「おー、行ってこい」
「気を付けてね」
「お土産はバナナのやつでお願いします」
あれね。
「わかりました。では、いってきます」
「留守番をお願いします」
俺とジュリアさんはアパートを出ると、車に乗り込み、空港に向かう。
「天気が良くて良かったねー。向こうも良いらしいよ」
「はい。良かったです。それに私、飛行機に乗るのも初めてなんで天気が良いのは良いですね」
この県から出たことない人だもんな。
当然、飛行機にも乗ったことがないわけだ。
俺達は車で1時間程度かけて空港にやってくると、手続きをし、飛行機に乗り込む。
もちろん、窓際はジュリアさんに譲った。
「富士山が見えると良いね」
「楽しみです」
ジュリアさんがにっこりと笑ったので手を握る。
「離陸の時はちょっと怖いから手を握ってあげるね」
「ふふっ、ありがとうございます」
うん、怖いからね……
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
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