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AIちゃんは今日も難攻不落  作者: 物語紬
4/6

4話 工愛佳は今日も疑心暗鬼

4話は瑛太の妹、愛佳ちゃんの話です!

愛佳ちゃんは面白くて個人的に好きです!

 孤独とは必ずしも"負"ではない。

 1人でいることに切なさを感じる者もいれば、

 大勢でいることに億劫な者もいる。


 どちらが正しいとか言うことでもない。

 人は望むように生きれば良いのだ。


 そう、好き嫌いの話に過ぎない。

 工 愛佳においては、孤独は嫌いに分類される。


 ◇◆


 工 愛佳は妹だ。

 高校1年生の兄を持つ、中学2年生の女の子。

 訳あって両親は大抵家にいない。つまり二人暮らしをしている。


 工 愛佳は疑っていた。

 最近、兄の挙動がおかしい。何かを隠している気がする。

 例えば、この前の日曜日の晩御飯の時…


 ---


「瑛太兄、なんで最近部屋に鍵かけてるのかなー?」


「え…とと年頃の男ですから、プライベートを守りたいと言いますか…」


「へー、いつも部屋で何してるのかなー?」


「プライバシーです。」


「もしかして…彼女と電話してるとか?」


「…ち、ちゃうわ!かかか彼女とかおらんしー?」


「…ふーん。」


 ---


 あれはフェイクだ。

 動揺したフリをして、『あ、この人彼女いるって隠したいのね。』と思い込ませる巧妙な切り返しだ。


 愛佳は疑い深い。

 この程度のフェイクにはかからない。


 疑わしきはこのエピソードだけではない。

  ・最近エッチな本を買わなくなった

  ・代わりにUSBやDVD-ROMなどを購入している

  ・帰宅後部屋に直行する

  ・部屋に鍵をかけている(回想済み)

  ・部屋からたまに『愛してる』と聞こえる

  ・部屋の掃除を拒む

  ・鼻毛を抜いて、床に落とす

 

 これらの条件を総合的に考慮して、考えられる結論は1つ。

 愛佳のイメージはこうだ。


 ---


「お、新作エロゲーだ!買ってしまうでごさるぞ。」

「もう拙者エッティな本は卒業したでござるよ。」

「これからはエロティックゲームの時代なり。」


  ○最近エッチな本を買わなくなった

  ○代わりにUSBやDVD-ROMなどを購入している

 

「帰宅!そして部屋に直行ううう!」

「おーっと、愛佳にシコティッシュフォールドな子猫ちゃん達は、見せられないよ!鍵をロックううう!」


  ○帰宅後部屋に直行する

  ○部屋に鍵をかけている


「ハァハァ…全員俺の嫁だ。ごめん、愛してる。」

「瑛太兄ー。掃除はー?」

「あ、大丈夫です。」


  ○部屋からたまに『愛してる』と聞こえる

  ○部屋の掃除を拒む


  「瑛太兄、そこの醤油取って。」

  「いいよ。(鼻毛そわそわするな。)」

  ○鼻毛を抜いて、床に落とす

 

 ---


 非常にマズい。

 狂信的なエロゲー信者と化している。


 エロゲーが悪いとは言わない。

 問題はそこでは無いのだ。


 愛佳の望み。

 それは兄に一緒にいてほしいと言う願い。


 ブラコンという訳では無い。

 孤独が嫌いなのだ。

 冒頭にもあるが、両親は大抵家にいない。

 それは最近に限ったことではない。


 昔、まだ自分の年をぎりぎり片方の手で数えられる頃。

 愛佳はいつも不思議に思っていた。


 なぜ、父と母は家にいないのか。


 迎えがいないため、園には預けられなかった。

 週に4回、父方の叔母が世話をしに来るが、

 最低限、身の回りの世話をしにくるだけ。

 叔母は社交的な方ではない。


 瑛太が小学生に上がってからは、さらに孤独の時間が増えた。

 時間の経過とは不思議なもので、自然と叔母の足も遠のいていった。


 1人でいるということは、1人で考える時間が長くなる。

 もちろんそれ自体悪いことではない。

 だが、幼い少女はいろいろ考えてしまうのだ。


 このまま誰も帰ってこなかったらどうしよう…

 このまま1人で死んじゃったらどうしよう…


 そういった状況下で、瑛太は愛佳にとって心の支えだった。

 友人もいるだろうに、真っ先に家に帰り、共に過ごしてくれた。


 愛佳が小学生になり、孤独な時間は減った。

 幼少の反動で、友達をとにかく作った。


 昼は級友、夜は兄、孤独な時間は徐々に減っていった。


 はずなのに…


「瑛太兄をおっ○い丸出しの女にとられてたまるか!」


 今日はクラス委員で遅くなるとか言っていた。

 部屋に入るチャンスは今しかない!


 こうして、『兄奪還作戦』は幕を開けた。


「総員、突入!!」

 因まなくても、1人だ。

 勢いよく扉を開ける。ターゲットはこの部屋に潜伏しているに違いない。


「ふむ、使用済燃料は転がっていないようだな。」

 少し安心する。


「ベッドの裏は、心の裏側なり!」

 ベッドの裏は、ベッドの裏である。

 尚、目当てのものはない。


「ふぬう。表裏のない、良き兄上であったか。」


「ふふふ…カーペットの下、お前の下心を剥き出しにしてやるよ!!」

 もちろんなにもない。


「ハァハァ、やり手か。」


 ここで愛佳、突然!この部屋の変化に気づく!


「外付けHDDだと…?」

 そう、以前はこのような大容量記憶媒体は、この部屋に存在していなかったはずだ。

 ここから導き出される真実は一つ!


「ダウンロード派…だ…と…!?」

 巧妙な男だ…潜伏者など見つからないに決まっている。

 なぜなら、敵は厚く重いパッケージ()など疾うに脱ぎ捨て、

 新たなHDD(大地)へと飛び立つ、一匹の蝶なのだから。


 しかし、流れはこちらにあるのだ。

 奴はスクリーンセーバーさんを甘く見た。


「阿呆な男よ。ふーん、とりあえずこの『AIちゃんの部屋♡.exe -ショートカット』でもダブルでクリクリしてやろうかのぉ…」

 もはやJC(ジェーシー)の皮を被ったJC(じーちゃん)である。


 さっきの同情エピソードはなんだったのだろうか。


「わっちに見つかりんしたのが運の尽きじゃけぇ。さあ、ヒラリヒラリと舞い踊るように姿見せんかあ!」


 クリクリッ


「…ほぅ。」

 金髪のアゲハ蝶が、床で足を広げて寝ている。

 言うまでもないがAIちゃんである。


「…ちょっとくらい遊んでみてもいいよね…。」

 そう、これは欲求は欲求でも、崇高なる好奇心である。

 社会経験とも言う。


 愛佳はそっとマウスカーソルを移動させる。

 カーソルの先端はたわわなOPの上に移動する。


 手が震える。マウスを握る手は、じっとりと汗ばんでいる。


 そして、静かに右指を押し込む。


 クリッ


「あっ」


「…やーらしか。」

 すでに目の色が変わっていた。

 喜びとしてのイエロー、憂いを帯びたブルーなどではない。

 世の果てに似ている漆黒の瞳だ。


 カーソルは迅速に下方へ移動する。

 ある箇所でピタッと止まる。

 カーソルの先端は進行方向にまっすぐ進む。

 そして…


「ん…ふわぁぁ…って、くすぐったいくすぐったい!!」

 足の裏を高速でくすぐる愛佳!

 中学生はそういうことは知らないのだ!


「あはは!はは!ちょっと!やめ…やめんかコラ!愛佳!」


「へ?私の名前?」


 ---


 こうして愛佳に、新しい家族ができた。

 孤独の影は静かに引いていく。


 ◇◆


「瑛太兄、なんで最近部屋に鍵かけてるのかなー?」


「え…とと年頃の男ですから…プライベートを守りたいと言いますか…」


「へー、いつも部屋で何してるのかなー?」


「プライバシーです。」


「もしかして…彼女と電話してるとか?」


「…ち、ちゃうわ!かかか彼女とかおらんしー?」

「ってこれ!前やった奴ー!」


「…ふーん。ふふっ。」


「なに笑ってんだお前?俺そんな面白い?やっぱ?」


「なーいしょ!」

 尚、瑛太が2人が出会っていたことを知るのは、もう少し先の話である。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございます。

次回もよろしくお願いします!


<Tips>

AIちゃんは近接系を選びがち

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