終わりが始まり 1
ナイトメアが去った直後、俺の視界に入ったのは見慣れない天井で驚く。
ああ、臨床試験を中止したのか。と一人納得して
病室のベッドから起き上がると、栄一と暁斗が座っていた。
「起きたか。」
「ああ、あのあとどうなった?」
俺は少しの気だるさを感じつつ、栄一に話しかける。
「ナイトメアが去った後、"ドリームダイバー"が緊急停止した。再起動を試みたが、ピクリとも動かない。」
「壊されたのか?」
「おそらく。」
栄一ははぁ、とため息をする。
「茉莉花の臨床試験も、どこまでが"ドリームダイバー"の範囲なのか怪しくなってる。全てナイトメアが関わっていたなら、報告は無理だな。」
余計なことしかしねぇ、と栄一は顔を手で覆う。
「茉莉花は無事なのか?」
「ああ、さっき目を覚ました。」
暁斗が代わりに答える。
そうか、良かった。
「他のやつらも目を覚ましたせいで、内科の医者から呼び出し食らったから、そろそろいく。」
栄一が立ち上がり、ドアの向こうへ消えていく。
それを見送って、俺は暁斗をみる。
「あいつ、大丈夫か?」
「いや、ダメだろ。なんせ親友を裏切ってた形だから、本来は顔も会わせられないはずだからな。」
「ああ、そうだよな。気にしてないが。」
そう言うと、暁斗がきょとんとした。
「すごいな、アンタ。普通は色々あるだろ。」
「何が?」
「いや、何がって。親友が妹抱いてたんだぞ?しかもアンタが好きな相手だぞ。」
暁斗は俺が分かってるのかどうかを心配しているようだが、
「過去のことだろ?」
俺が気にもとめてないことがわかると、頭をかきながら納得したようだ。
「…………アンタ、ホントにすげぇな。」
「血の繋がらない兄妹系の薄い本なら見飽きてるし。」
「ずいぶんとまぁ良い趣味だな。」
気にしてない、は嘘になる。
俺だって相当ショックはでかかったが、何よりも茉莉花が心配だった。
「茉莉花は大丈夫か?」
「ああ、目を覚ました直後は少し混乱したようだが、栄一もいたからな。」
暁斗はごほん、と咳払いをして、俺に向かって座り直す。
「騙し討ちはしたくないから、言っておく。」
「ん?」
「茉莉花が落ち着いたら、告白するつもりだ。」
暁斗の話に、俺はああ、だろうなと呟いた。
言ってくれるだけマシだ。
「なんか、俺も逃げてたんだな。さっきナイトメアにも突っ込まれて、再認識した。」
立ち上がって暁斗もドアの近くに移動した。
「十中八九フラれるから、横取りにはならないからな。」
「…………そうか?」
暁斗は暁斗で良いやつなのは、会って数時間の俺でもわかる。
いや、ボードゲームを囲んでるなら、それなりにわかっていたはずだ。
「多分、ナイトメアが茉莉花の代弁だって言った辺りから確証を得ちまったからな。」
そんなことを言ってたな。
「まぁ、今日は一旦帰るわ。」
「ああ、またな。」
「今度は忘れるなよ。」
暁斗はそういい残して去っていった。




