重なる想い 1
病院の裏口から、専用通路を通って、とあるドアの前にたつ。
"第二研究室"
コンコン、とノックしてから入る。
ふわぁ、と香りのいい紅茶の香りがした。
「よぉ。」
机の隣で紅茶を淹れている白衣の男性。
見慣れた親友の顔も研究者の姿になれば、少し変わって見える。
暁斗はどかっとソファーに座ると、栄一は気にせず紅茶をおく。
「随分と勝手な真似しやがって。」
「さっきも言ったろ?俺は茉莉花の味方だ。」
「そりゃそうだろうが、探偵としてどうなんだ、それ。」
栄一と暁斗のやり取りは、俺に対するのと変わらず、そっちもそういう仲のようだ。
「探偵としては雇用主の意思を尊重してるが?」
「どこがだよ!」
「お前の本心が見抜けないほど、バカじゃないからな?」
ぐっと何かをこらえた顔になった栄一は、すぐにあきらめて頭を抱えた。
そのやり取りの間に、俺はソファーに座る。
「桔梗。」
紅茶を俺の前におきながら、栄一は呼んだ。
「その、すまんかった。」
「何もしてないぞ?」
「いや、その、盗撮と変わらないからな。」
確かに俺の夢の出来事を研究記録にしてるなら、言われればそうか。
「きちんと理由がわかればいいさ。」
「ちょろいん。」
「今から訴えるぞ?」
栄一は笑いながら自分の分の紅茶を持って、同じ机を囲むように座る。
「で、探偵くん。どこまで話した?」
「ほぼ全部。」
「依頼料減額するからな!」
暁斗が真顔で答えたのを聞いて、栄一ははぁ、とため息をする。
「なら、桔梗。お前は何か知りたいことはあるのか?」
「あー、そうだな。一応、確認なんだが。」
俺は本人から直接聞いてすっきりしたい。
「お義兄さんと呼ばれたい?」
「冗談よせよっ!気持ちが悪い!」
ちょっとさっきのやり取りが楽しそうだったから、俺も混じる。
「そんなこと言わないでくれよ、元お義兄さん。」
「お前はフラれただろ、ざまぁ。」
「違うな。告白してないからセーフだ。」
あ、やっぱりこいつ、茉莉花が好きだったんだな。
だから、負けたとか、腹立つとか言ってたのか。
「話が進まねぇだろ!?で、桔梗。真面目にないのか?」
「…………正直、未だにそこが引っ掛かってる。」
「兄だった、ってとこか?」
俺の疑問に、栄一は察したのか頭をかく。
「似てねぇだろ。」
「ああ。兄妹でも男女で違うこともあるけど。」
「簡単だ、俺と茉莉花は血が繋がってない。」
思わぬ発言に紅茶を飲もうとした手が止まる。
「は?」
「俺は養子なんだよ。」
「茉莉花もか?」
俺の言葉に、栄一は首をふる。
「両親は子供に恵まれなくてな、俺が養子になった後に、不妊治療が実ってようやく生まれたのが茉莉花だ。」
「その後に離婚したから、名字が渡辺じゃなかったのか。」
栄一の名字は早川だと覚えていたが、それは離婚した片親の名字だったのか。
「俺の親権は親父に、茉莉花はお袋にいってな。お袋と茉莉花が出ていった形になった。」
「確か、俺らが高校生だった頃だよな?」
「そこは覚えてたんだな。」
紅茶を飲みながら、俺達は会話を続ける。
ふと時計を見れば、夕方に差し掛かっていた。
数日休みを取って良かった。




