勿忘草の香り 4
頭を抱えた俺をみて、まるで運命の神様のごとく、嫌らしい笑みを浮かべる暁斗。
「ハッ、ちょっとは気が晴れたわ。」
「さっきから何か引っかかるな。」
「個人的な恨みだ、許せ。」
その個人的な恨みが気になる。
「ちなみにいうとな、俺も多少アンタに面識あるんだぞ。」
「えっ?」
「ほら、これだよ。だから、腹が立つ。」
マジで覚えてない。
「俺は茉莉花経由で栄一と知り合ってな、アンタとボードゲーム囲んだんだが?」
「……、すまん。」
暁斗は頭を抱えてから、タバコを壮大にふかしだした。
「まぁいい。俺はいい。」
どうやら相当恨みを買っているようだ。
この"興味のないことは忘れるクセ"は、こういう場面で足を引っ張るとは思いもしなかった。
「話が脱線したな。続きだが。」
暁斗が続きを話そうとした瞬間、スマホの着信音が鳴り響く。
暁斗のスマホらしく、さっと懐から取り出して、画面を確認する。
「ちょうどいい、黙って聞いてくれ。」
スピーカーにしてから着信を取る。
「どうした?」
「悪いな、今大丈夫か?」
声の主を聞いて、俺は息を飲んだ。
栄一だった。しかも、かなり焦った声だ。
「ああ、問題ない。」
「病棟に、あいつが来てたらしい。」
多分、俺のことだろう。さては、あのクソババアが吐いたな。
「そうか、まずいな。茉莉花とは接触なかったか?」
「茉莉花は一般病室だが、どうやらそこには向かわなかったようだ。」
クソ、タイミングがよければ会えたのか!
「よかったな。」
「それよりもあいつ!なんでここがわかったんだ?」
いや、偶然です。
「おそらく出回っちまってる情報を辿ってきたんだろ?確か、あいつの会社にこないだ中途採用で、バカが入り込んだからな。」
「その口ぶりだと、何かわかったのか?」
「本田由依が、あいつの会社に採用されてた。」
うわ、探偵こえぇ。そこまで調べられるのか。
「クソ!あいつらは何で毎回邪魔しかしないんだ!」
「もうここまで来ると、運命ってやつが怖くなるな。」
笑えねぇ、と栄一は乾いた笑いをしている。
「なぁ。」
暁斗が少し、しんみりとした声で語る。
「もうここまで来たら、あいつに話したらどうだ?」
「ハァ?お前、何を。」
「茉莉花の為にも、全部ぶっちゃけちまえ。」
俺は暁斗の顔を見る。暁斗も真っ直ぐ俺を見つめ返す。
「っ、お前!言ってる意味がわかってんのか!」
「ああ。」
「いや、わかってないだろ!」
栄一は苛立ちを暁斗にぶつけている。
「あいつは茉莉花を忘れてる!茉莉花の想いをまた踏みにじることになるんだぞ!」
ズキッと胸が痛んだ。
そうだよ、すっかり忘れてたよ!
でもな、でもな!
今なら、その想いに答えたいと思ってる。
「それに、茉莉花がやったことを全て知るんだぞ!」
「茉莉花が、やった?」
栄一の言葉に、暁斗が一瞬にして声のトーンを変えた。
「お前がそそのかした、だろ?」
「ッ!暁斗、お前!」
「事実だ、栄一がそそのかし、茉莉花がやった。それは変わらない。」
その行為は罪になるのだろうか。
判例すらあるか解らないが。
「だが、今辞めれば、俺たちで事は終わる。幸いに、茉莉花が行ったあの行為は録画されてない。
唯一記録にあるのは、お前の夢とあいつの夢に入り込んだのだけだ。」
良かった、あの吐き気のする夢は記録にないのか。
「もうやめよう。な?」
無言が続く。栄一は迷ってるのか。
俺はちらっと暁斗を見る。視線はずっと俺からはずさずに語っていた。
おそらく、状況を受け入れろ、と言ってるんだろう。
その上で、答えを出せ、と。
何があろうと答えは変わらない。
サラサラ、とメモを書いて、暁斗に見せる。
「"何があろうと、今度は守ってみせる。"」
ニヤリ、と暁斗は笑った。
「……わかった、今から電話して、」
「必要ない。近くにいる。」
「ッ!この声、桔梗か!」
栄一は相当驚いたのか、声が震えた。
「すまんな、栄一。」
「お前ッ!どっちの味方なんだよ!?」
「言わせんな、茉莉花の味方だ。」
予想外な言葉に俺は思わずビックリしたまま暁斗を見た。
ニヤリ、と笑っていた。
「栄一。こいつ、食えねぇな。だいたい把握されてたし、肝据わってるし、何より。」
「今度はちゃんと守ってみせる、だってよ。」
暁斗の言葉に、栄一も俺も固まった。
「はぁ。」
ため息をこぼしながら、栄一が呟く。
「桔梗、こっち来れるか?」
「病院だな。すぐ行ける。」
すぐ近くにいるから、問題ないな。
「暁斗、俺の研究室に連れてこれるか?」
「勿論です、雇い主の意思は尊重します。」
「お前、あとで覚えてろよ?」
はっはっはっ、とわざとらしい笑い方をして通話は終了した。
すごーい!君は運命力を操るフレンズなんだね!
流行りに乗れなかった、ちなみに私はサーバルちゃん推し。




