勿忘草の香り 2
「【夢の死神】の噂はどこまで知ってる?」
「気に入られると悪夢に閉じ込められる、逃げられなかったら死ぬ。被害者は神代女子高出身者。」
「んー、出回っちまってんな。ある程度ぼかしたつもりだったんだが。」
あ、こいつも一枚噛んでたのか。
「まぁ、いいや。とりあえず。」
コーヒーを口にする暁斗。つられて俺も一口。
今度から通おう、ここをキャンプ地とする。
「きっかけは、彼女が操者の夢に現れたからだな。"ドリームダイバー"を使って、他人の夢に入り込める。しかも、その夢を操作できると知った操者は、あることを考えた。」
「あること?」
「イジメの、復讐だよ。」
思わず、あの吐き気のする夢を思い出す。
彼女が同じ学校の生徒によって虐げられるあの悪夢だ。
「まさか、彼女は自分が経験したイジメを、夢で再現したのか?」
「おー、よくわかったな。その通りだ。」
暁斗はタバコを消すと、頭をかいた。
「夢に入り込む条件は、対象を認知できることだけらしいからな。イジメた相手くらいはわかるだろ。」
「……え。」
「いや、だから、イジメた相手くらいは、」
「そこじゃない。」
「認知できるって、知ってるって意味だよな?」
「ああ、そうだ。ん?」
暁斗はふと思い出したかのように止まる。
「なら、なんで俺の夢に現れたんだ?」
俺が固まっていると、暁斗がああ、と呟いた。
「なるほど。そりゃ、茉莉花も落ち込むなぁ。」
「おい、どういう意味だよ?」
そう暁斗に問いかけると、はぁ、とため息をこぼす。
「ヒント、勿忘草。」
「ハァ?勿忘草って、こないだ夢で話したやつか?」
彼女と話した花の話だよな?
勿忘草、花言葉、"わたしをわすれないで"。
「"わたしをわすれないで"。」
「ヒントその2、子供の頃。」
「子供の…………、ん。」
かすかになにかがよぎった。
なんだ、なんだったか?
「"まりかもまぜて?"」
「あっ。」
「サービスだ。」
ひらり、と写真が視界に入る。
その写真を見た瞬間、俺は思わず呻いた。
「渡辺、そうか、あいつ、」
写真に写っていたのは、親友の栄一だった。
そして、その隣には、彼女が、茉莉花がいた。
二人が楽しげにゲームをしている写真だ。
「これ、俺の部屋だ。」
「そして、この写真は多分、アンタが撮ったんだろ?」
思い出した、そうか、そうだったんだ!
俺は彼女に会っていたんだ!
幼い頃から、ずっと!
ずっと、兄と、栄一とつるんでいたから、たまにしか会わなかったから、記憶がなかった。
「あいつの妹だったのか!」




