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22確固としたマインド


リュークがミーナと会って六日目の夜、召集がかかった。


「伝達はうまくいったようだ。明日、『シストリアン』に突撃する」


リールと目を合わせ、小さく頷く。


皆静まり返っているが、その目はぎらぎらと燃えていた。

心では他人には計り知れない闘志を燃やしているのだろう。


それはリュークとゼナルも同じだった。


絶対にミスは許されないのだ。

チャンスはたった一度きり。




「城の奴等もこちらの動きに気づいているはずだ。油断するなよ」


兵士たちもいくらここに争いが無いとはいえ馬鹿ではない。

異変に気付き、対処しようとしているはず。




当の城では問題が起こっていた。


やはり異様な感じに気付き、リール達の目的を突き止めることができいた。


『シストリアン』での欠点は人員不足だ。

もともとの住民が少ないため、戦える者はさらに少なくなる。


だから報酬を弾ませ、外の者を『シストリアン』へ集まらせようとしたのだが……


兵士たちの指揮を勤める隊長の部屋の扉が大きな音をたてて開かれる。


「隊長!住民がほとんど集まりません!!」


「なんだと!?何故よりにもよって今回……」


戦うこと以外にも住民を雇うことは多々あるが、高い報酬を出して集まらないことなど今までになかった。


これにはリールやリュークの策が関係していた。


集まった住民のほとんどが『コゴリティ』の人間だ。

何故ならまだ計画のことを伝えていない場所だからだ。


もともと城に召集がかかった場合、多く集まるのは金に困っている『デリーパ』の人間だ。

危険な仕事でも生きるために集まる。


今回『スーシャ』の人間は不況の影響があったため、リールたちに期待をした。

お金よりこの状況の打開を求めたのだ。


何より殺しあいになるとわかっているため、あえて参加しようとは思わなかった。


それは『デリーパ』の住民も同じだ。

しかしやはり、高い報酬には目が眩む。


毎日生きるのがやっとの生活ではなくなるかもしれないのだ。

それに、革命軍が成功して生活がよくなることは保証されていない。


このままなら皆、死ぬ恐怖を撥ね飛ばして城に向かっただろう。


だが彼らの未来に希望を持たせたのはリュークとゼナルだ。


二年間、放浪しながら人助けのようなことをして存在をしらしめた。


そのことが、彼らの城に向かう足を止めた。



そんなことは露知らず、ただただ疑問に思うしかない。


どうして国民は集まらないのか?


そしてその事実を知った瞬間、隊長は終わりを感じていた。





城の状況を知ってか知らずか、リールは着々と作戦を説明する。


しかしリュークは聞いていなかった。


ただぼーっとするだけ。


ゼナルがそれに気付き、声をかけようとする直前に


「リューク、何か不満があるのか?」


リールに声をかけられて、はっと我に返る。


「言いたいことがあるなら言ってくれ」


視線が集まる。

リュークはリールを見つめて、それから一人一人の顔を見回す。


「お願いがあるんだ」


再びリールを見てはっきりと言った。


「俺だけで国王とバンスの首を取らせてくれ」







静かさの中に動揺が広がる。


「なんだと?」


リールの問にもう一度、強い口調で言い切った。


「俺だけで行かせて欲しい。あまり犠牲者は出したくないんだ。狙いは二人の首だけだろう?」


見渡しても、答えはない。


だが不満そうにリュークを見るものが多かった。


「…………それは……できないな」


「なんで」


「私たちだって信念を持ってやってきている。自らの手で二人を殺したいと望んでいる。そしておまえは……最後まで信用しているわけではない。逃がされたりしたら、あとはないんだぞ?」


最初からはいそうですか、わかりましたと了承してもらえるなどと都合のいいことは考えていない。


確固とした意思を持って、言いきる。


「頼む」


リュークに賛同する奴もいないし、リールは首を縦に降らない。


だがどうしてもそうしたかった。


「…………私たちのメリットがない」


「皆も人殺しがしたいわけじゃないはずだ。仕方なくっていうだけで。だから俺が、犠牲を最小限に留めて二人の首をとる。時間制限をしてくれていい。俺が動いてから何時間か……その間に殺して……二人の首を掲げよう。そうすれば逃がしたとか疑いはないし、こっちの犠牲者も出ないじゃないか?全てが終わった後の政治は全て任せるし、俺は姿を消す。だから首を掲げたら突入しないでくれ。掲げられなかったら……あとは任せることになるんだけど……」


沈黙。

リュークの言うことに間違いはない。

ただやり方が無謀過ぎるだけで。


しかしいつになく真剣な、笑みのない顔で言われて圧されていた。


「…………しかし…………」


「なぁ」


決めきれないリールにリュークが接近する。


正面から至近距離でリールを見つめ、そっと柔らかな笑みを浮かべる。


思わずドキッとしたリールだが



「頼むよ」



一転。

笑みを消し去り、リールを鋭い目で睨み付けて低く発せられた声。


突然の変化。


リールは全身が震え、声が出ないし動けない。皆も思わず後ずさった。

空気が凍ったように物音がしない。


これはもはや、威嚇や脅迫に値した。



リュークが最初に求めたのは情報の提供。

そして戦力だが、これはあまり期待していなかった。というより、伝達の方だけで充分に満足していた。


おかげで自分はさらに時間を潰すこともなく、ミーナとも仲良くなれた。



譲れない。


なんとなく、譲れない。


予感というか、胸騒ぎというか……


「わ、かった」


とうとうリールが折れ、了承した。


「……ありがとう」


また珍しく、リュークが泣き笑いのようなものを浮かべるものだから、恐がったり怒ったりするより、呆れてしまった。


手のかかる子だなと思う。


「ただし、お前が言ったことは全て守れよ。…………二時までだ。それ以上は待てない。二時までに二人の首を見せること。そして……」


今度はリールがリュークに詰め寄り、胸ぐらを掴んだ。


「死ぬなよ」


リュークは目を見開いた。

が、すぐに大きく頷く。


そこへ、


「もちろん、着いていきますよ」


「……ゼナル………………」


「待ってろなんて、言いませんよね?」


視線がゼナルに集まる。


リュークが呆れる番だった。


ゼナルは言うことを聞くようで、とても頑固なのだ。

自分が決めたことは絶対に曲げない。


それを十分に知っていたため、もう断ることは出来ないと諦めた。

同時に、やはり心強く、嬉しかったが。


「頼むわ」


「当たり前です」


「俺も行く」


せわしなく動く皆の視線はレファムを捕らえた。


目を丸くする。


レファムは落ち着いた様子で淡々と言う。


「俺は、絶対に行く」


「な、なんで……」


リールのか細い声が漏れた。

それはもはや策士ではなく、母親のもので。


息子が二人とも危険な場所へ行くと言うのだ。正気でいろと言う方が無理な話だ。


だがさすが、これだけを束ねる器。

一息つくと、さっと表情を戻した。


「どうだ、他にいるか?」


「仕方ないから俺も行こっかなー」


声をあげたのは、ゼナルがパンを食べているときに声をかけたやつだった。


「サーベルっていいまっす。よろしく」


「…………そうか。他は?」


もう名乗り出る者はいなかった。


リールはリュークに向かって言う。


「この二人を連れていってくれ。こちらからも、頼む」


「……わかった」




四人で『シストリアン』へ侵入し、二時間以内に二人の首を跳ねる。




その夜は長かった。






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