表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/27

13隠されたベイス


彼女は信用してくれていないだろう。

だが二人を中へ通した。


暗く細い通路は思ったより長く、緩やかな下り坂で続いていた。

灯りは老人の持つランタンだけ。

その後をリューク、ゼナルの順に続く。

リールは一番裏に着いた。


ゆっくりと暗闇を歩きながらふと、

リュークは先程のリールの行動を不思議に思い返していた。



着いたのは、結構な広さの地下室だ。周りは石で固められていて、隙間に蝋燭立てがまばらに並んで部屋を灯している。


適当に置かれる机や椅子、地べたに数十人…年齢、性別バラバラの人達がこちらを見ていた。その目付きは皆鋭い。

各々が武器を所持していて、中にはどうやって使うのかわからない形状の物もある。


既にリュークとゼナルの手には抜き身の剣が握られている。


その横をリールが悠々と通りすぎる。

二人の正面の机に座っていた二、三人がさっと退き、そこへ優雅に座り、足を組む。



「ようこそ、『リボルト』へ」



まったく歓迎していない様子で言った。


二人を除いて、ここにいる全員がリールをリーダーと認識しているようだ。

だが慕っているのか、素直に従っているのかはわからない。

そんな空気だった。


「さぁ、用件を聞こうか」


リュークの表情から笑みは消えない。


「俺はリューク。『ディス』だ。頼みは…」


その瞬間、何人かは立ち上がり、また何人かは少し腰をあげて武器をとった。

それをリールが手をあげて制止する。


リュークを睨み付けたまましぶしぶといったように剣を収めた。


しかし数人はまだ武器を持って構えている。

それに対抗してゼナルが剣を持ち上げる。

重い空気の中、そいつらが一歩にじりよった時だった。


リューク達の一番近くにいた巨漢の男の首に刃がかけられた。

男は少し驚いたようだが、すぐさま不機嫌な顔になる。


首にかかった刃物は長く、ゆるい曲線を描いている。

まるで鎌のようだが、大きさは比ではない。


巨漢の男の後ろでその鎌を持った男が低く呟いた。


「母が、止めたろ?」


母━━━━━━ということはゼナルの兄か。


男の一言で、立つ者はいなくなった。

巨漢の男もその場にどさっと座り、あぐらを組む。かなり不服そうな顔だが。


皆が座ったことで、ゼナルの兄だけが目にはいった。

黒っぽい大きな鎌を片手で扱っているが、細身な体だ。リールと同じ明るい茶色の髪は、全体的に右側へ流されている。

金色の瞳が、リュークではなくゼナルを見下すように睨んでいた。

なんの戸惑いも見せず、ゼナルは剣を構えたままだ。


しかしそれ以上何も言わず、後ろへ下がって壁にもたれる。


リールはその様子を一瞥もしなかった。

嫌そうな顔でリュークを見たままだ。


「ほぅ……ディスが何の用だ。物乞いでもしに来たか?」


くすくすと笑いが聞こえる。

心底馬鹿にしているようだ。


「報酬は国?よくもまぁ」


女の声。


「ちょっと強がっちゃっただけだよなぁ?」


男の声。


ゼナルが限界だった。

二本の短剣を逆手に持って低く構える。


今にも斬りかかりそうな様子を見てまた、がちゃがちゃと武器の鳴る音が聞こえる。


一気に緊迫した空気になった。


「おい、待てって。ほんと、気の短い奴が多いよなぁー、もっと余裕持っていこうぜ」


なんとこの空気に会わない発言なのか。

不愉快そうな視線が集まる中、リールに向かって笑いかける。


「この不況をどうにかしたいんだよね。欲しいのは情報。場合によっては戦力も」


しーん……とした空気に、笑いが起こった。

リールも笑っている。


「あはは、お前本気か?バカな奴だ。お前がどうにかできる問題ではない」


「そうかぁ?でもお前らに出来ないなら、俺がやるしかないだろう?」


空気が張りつめる。

多くの者が立ち上がって武器をとる。

リールも制止しなかった。


それどころか好戦的なようで、胸ポケットに手を入れる。


「貴様……この状況わかってるんだろうな。私はいつでもお前を殺せるんだぞ」


「殺れるもんなら殺ってみろよ?」


一斉に、椅子を蹴飛ばし机を乗り越え、皆が武器を振るった。

つまらなさそうに座ったまま、それを眺めている者もいる。ゼナルの兄も同じだ。


だがその目は大きく見開かれた。

一人が天井すれすれをふっ飛んできて、机やらを倒しながら……気絶した。


そして次々と倒され、殴られ、飛ばされていく。何が起こっているのか。


リールも驚き、目を凝らす。


「凄いことになってんなぁー、後で飛んでったやつに謝らなくちゃなー」


「…………!?」


「おーい、ゼナル。そこら辺で止めとけ」


リールは立ち上がり、胸ポケットから銃を取り出して眉間に突きつけた。

いつの間にか隣にリュークがいたのだ。


かかっていった奴はじりじりと後退りし、その真ん中には既に短剣をしまったゼナルが立っていた。

その回りに何人かが倒れているが、血は流れていない。


「お前はやりすぎなんだよ」


「元凶はリュークじゃないですか」


悠長な会話におかしくなりそうだ。


「……クソっ」


誰が、こんな奴らが強いと思うだろうか。


一人は恐ろしい勢いで急所を突きまくっていたし、『ディス』の奴は大勢に囲まれた中からあっさり抜け出した。

改めて見ると、ゼナルの立つ場所からここまで一直線に人が立っていない。数人が倒れているだけだ。


「おぉ……それ銃か。よく手に入ったな」


子供が新しいおもちゃを見るように目を輝かせて、珍しい銃に魅入っているリューク。


リールは警戒を解かない。

しかし正直、気が抜けていた。



変な奴……

『ディス』だと思えば恐ろしく強い。

強いかと思えばなんて危機感の感じられない。

この笑顔は余裕か、お気楽なのか……それとも何か背負っているのか……



そんなことを考える自分にも呆れてしまって、リールは銃をしまった。


「リューク。気が変わった。話を聞くがその前に……二人で話がしたい」


しかしここにいるのは皆、かなり腕が立つ奴等で、プライドもある。

納得がいかない者の方が多い。


「どういうつもりだ?」


「そいつは敵だ」


「いつも言っているだろう私に異論がある奴は、出ていって構わない」


人を見る目。

リールの人を見る目に関しては自信を持っていたし、他の皆も認めていた。

それがこの『リボルト』を大きくしたと言っても過言ではないかもしれない。


だから引く気は、なかった。


それからほとんどがゼナルから離れて座り、数人が出ていった。


「おい、あいつらいいのか?」


数人が出ていった方を指さして言うが、スルーされた。


リールに着いていくと先程まで暗くて認識できなかったが、ゼナルの兄が立つ壁に扉がついていた。

中には机が一つと椅子が数個、壁には幾つもの様々な種類の武器。小さな個室だ。


リールが先に入り、立ち止まった。


「ゼナルは……いいか」


リュークは少し驚き、少しして微笑んだ。


「あぁ、大丈夫だ。二人がいいんだろ?それに……あいつは強い。心配なんか無用だ」


「……そうか」


そう言って振り返らずに中へ入るリールに続いた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ