12敵の敵もエネミー?
三段の石の段。
木製の壁。ドア。
これまた木製の青緑色の看板には薬を示す十字に蛇が巻き付く絵。
「……間違いないです」
ゼナルの案内の元家に着くと、リュークは中へ迷いなく踏み込んだ。
仄かに香る薬品の匂い。
入ってすぐカウンターのような台があり、その向こうに背の低い老人がいる。
老人の背後に棚があり、瓶、袋、箱、様々な形で薬が並んでいる。
老人はこちらを全く見ない。
気づいていないのかフリなのか、ぼーっと棚の方を見ている。
ゼナルがリュークに待っているよう目配せし、前へ出た。
そのまま老人の真後ろへ立つ。
コン……コココン……コン……コココン……
指でカウンターを叩くだけだ。
コン……コココン……コン……コココン……
それをしばらく続けると、おもむろに老人が立ち上がった。
何もせず静かに奥へ入っていってしまった。
ゼナルの様子から、一応成功したようだ。
「それだけなら俺でもできんじゃね?」
「駄目ですよ。叩くだけじゃなくて、呼吸とか、咳払いとか、たまに足で叩いたり……色々あるんですよ。」
かなり警戒心の強い人のようだ。
リール・バンドン・メラーニという人物は。
突然、店の奥の方から気配がした。
誰かが走ってくる激しい音がして、かなりの勢いで近づいてくる。
二人は自分の武器に手をかける。
視線は老人が入っていった扉に注がれる。
大きな足音と共に現れたのは……女。
黄色い切れ長の瞳。長いまつげ。
濃いブルーの大きなピアスを隠す明るい茶色の髪。後ろの髪は短く切られている。
その女はちらりとリュークを見たがすぐにそらす。
そしてゼナルを見て、目を見開いた。
カウンターを飛び越えて手を伸ばす。
「ゼナ……」
その手はゼナルに触れる前に止まった。
動かせなかった。
一瞬でゼナルの剣はその女の首を捕らえていた。
二本の短刀が首を挟むようにクロスする。
首に冷たい剣の腹を押し当てながら冷たく言い放つ。
「反王族派のリール・バンドン・メラーニ。交渉をしろ」
リールは、はっと正気に戻ったように腕を下ろし、威圧的な表情になった。
剣を押し付けられているにもかかわらず、その状態のまま対面する。
「……何の用だ。まずは要件、それから……」
「俺たちは……」
ゼナルはリールの言葉を遮った。
きつく睨み付けて、さらに剣を押し付ける。
「まぁまぁまぁまぁ!落ち着けって」
突如響き渡るリュークの陽気な仲裁でゼナルが退いた。
それを確認してリールがリュークを睨む。
「誰だ貴様」
彼女の声は低く鋭い。
ゼナルを呼びかけた時とは別人のようだ。
その発言にまたゼナルが剣を持ち上げたが、リュークが制止した。
「争いに来たんじゃないんだ。ちょっと協力してほしくてな」
「ここは薬屋だぞ?お前、病気か」
「ここに来てとぼけられるとはなぁー」
にやっと笑って近づく。
リールはそれに合わせて一歩ひく。
なにが愉快なのか、また笑ってこう言った。
「うまくいったら、報酬はこの国だぜ?」




