#76 光について
教皇フォルネン、大聖女マリーエルとの会談を終えたカスミは、イセトの案内で大教会の中を巡っていた。
「この先は養成所になります!」
「養成所…… 誰か勉強しているんですか?」
「ここでは光魔法の適性がある子供達が日々研鑽を積んでいるんです。 光魔法の使い手は貴重で重宝されますから、子供の頃からその才覚を伸ばす取り組みを我が国では行っております」
カスミの質問にイセトはそんな風に教えてくれた。
「かくいう私も時折教鞭を取ったりします」
「お前が? ……変な思想とか植え付けてないだろうな」
クリスタがそう言いながらイセトにジトッとした目を向ける。
「おっと手厳しい。 ですがご心配なさらず。 少なくともこの養成所では思想は各自で育むことをモットーとしております。 あくまでここは光魔法の才覚を伸ばす場所ですので、卒業後の進路もこの国で神官になる者、僧侶として冒険者になる者と様々な道に分かれますし」
「そうなんですね」
てっきりカスミはここで育つ子供は皆、教会でそのまま働くのかと思っていたが、割とその辺は自由に決められるらしい。
そんな養成所に折角ならということで入ってみると、正面には走り回れそうな広い訓練場が広がっていて、ちょうど十数名の子供達が光魔法の練習をしており、その周辺がピカピカ光っていた。
「どうやら今はライトレイの魔法を練習しているようですね」
ライトレイというのは光魔法の中では数少ない攻撃魔法で、光の光線を対象に放ち、高熱で焼き焦がすという魔法のようだ。
「強そうな魔法ですね」
「確かに低級の動きが遅い魔物相手なら有効ですが、ある程度当て続けないといけないので、動きが速い魔物にはあまり使えないんです」
「へぇ…… もっとこう、光を絞れば威力上がりそうですけどね」
イセトにライトレイの難点を聞かされたカスミは、視線の先で子供達が放っているボウリングの玉くらいの太さの光線を、ピンポン玉くらいに絞れば良いんじゃないかと思い、それを何気なく口にした。
「…………」
「あ、あれ? 皆さんどうしました?」
すると、イセトだけじゃなく、魔法に通じているクリスタとフィオも黙り込み、何か考えるような素振りをし始めた。
「カスミちゃん、光を絞るってどういうこと〜……?」
「えっと、昔に虫眼鏡で実験みたいなことをしたことがあって、太陽の光を集めてこう…… うーん、口で説明するのはちょっと難しいですね」
「虫眼鏡ってなに〜……?」
「小さいものが拡大される透明な板が埋め込まれた道具、ですかね?」
「ん〜、これのこと〜……?」
フィオはそう言うと、収納魔法から虫眼鏡と違って取っ手はないが、レンズ部分はそのまま虫眼鏡と同じような道具を取り出した。
「あ、そうですこれです」
「魔道具作りの時にたまに使うものなんだ〜…… それで、これをどうするの〜……?」
「えっと、そうしたら……」
フィオから虫眼鏡もどきを受け取ったカスミは、自分の収納ポーチから紙を取り出し、地面に置いて虫眼鏡をその上にかざしていく。
幸い今いる訓練場には天井がなく、天気も快晴なので、虫眼鏡もどきを通った太陽の光が紙に当たって光の円を作り出した。
「これをこうすると……」
そして、カスミはその状態で紙から少し虫眼鏡もどきをゆっくりと遠ざけた。
すると、光の円はそれに合わせて小さくなっていき、見つめていると眩しく感じるくらい光が収束すると、その光が当たっている場所が徐々に黒く焦げ始め、シューと煙も立ち始めた。
「おー! 燃えてるにゃ!」
「さっき私が言ったのはこんな感じです」
「なるほど…… フィオ」
「ん〜…… アースウォール〜……」
カスミの説明を聞いたクリスタは、フィオに目配せをして土魔法で小さな壁を作ってもらった。
「ライトレイ」
そして、その壁目掛けてクリスタはライトレイの魔法を放ち、その光を魔力操作とイメージでできる限り細めてみた。
すると、クリスタの放ったライトレイはレーザー光線のような一筋の光になり、それをクリスタが横なぎに動かすと、かなりの厚みがあるアースウォールがバターのように焼き切られていった。
「お〜…… これは凄いね〜……」
「カスミのおかげでイメージもしやすかったな。 全く、カスミは本当に驚かせてくれる」
「あはは…… 私が考えついたわけじゃないんですけどね」
カスミ的には子供の頃に理科の授業で習った知識を披露しただけなのだが、そんな何気ない知識も科学が発達していないこちらの世界では新たな発見になるようだ。
しかも魔法にその知識を転用すれば、凄まじい効果を発揮するということが目の前の焼き切れたアースウォールを見てもよく分かる。
「ただ、中々に魔力を使ったな。 少なくともあそこにいる子供達ではすぐに使えたりはしないだろう」
「それでも素晴らしい発見ですね! どうしても光魔法は攻撃手段に乏しいとされてましたが、こんな高威力の魔法があれば話は変わりましょう! 流石カスミ様です!」
一連の実験を見ていたイセトは、興奮しながらカスミのことを手放しで褒め称えてくる。
カスミはそんなイセトに対して苦笑いを浮かべつつ、誰かのためになるならまぁ良かったかなと、熱心に魔法を練習する子供達の方を見て思うのであった。
その後、一通り大教会を見て回ったカスミ達は、有意義な時間を過ごせたと満足感に浸りながら、行きと同じ馬車に乗り込み、宿へと帰っていくのであった。
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