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#74 話し聞かせる

「……ん」



 チェアリィと和やかな時間を過ごしたカスミは、いつも通り祈り始めてから5分くらいの時間軸に送ってもらった。


 それから目を開けて振り返ると、そこには凄い光景が広がっていた。



「ああ、凄い……! こんな、こんな神気を直で見れるなんて……!」



 カスミから向かって左側に、地面に膝をつき、もう号泣と言ってもいいくらい涙を流しながら恍惚とした表情を浮かべているイセトがおり、その首根っこは呆れ顔のアネッタに掴まれていた。


 そんなイセトの目は淡い光に包まれており、どうやら神聖眼のスキルを使ってカスミのことを見ているようだった。



「そういったスキルを持たぬ私でさえ少し感じ取れたよ」


「私は割とはっきり見えました……! カスミ様、凄いですわ……♡」



 そして、向かって右側の方では、教皇であるフォルネンと大聖女であるマリーエルが、こちらも膝をついてカスミの祈り姿の感想を述べていた。



「み、皆さんなんで膝を……」


「ああ、お疲れ様でした、カスミ様。 いやはや、とても尊い祈り姿でしたからな。 つい礼の姿勢を取ってしまいました」



 朗らかに笑いながらフォルネンがそんな風にカスミに言ってくる。



「カスミ様、とっても凄かったですわ」



 そしてマリーエルもカスミの手を取りながら感激した様子で声をかけてくる。



「あ、ありがとうございます……? でも、マリーエル様の方がすごいですよっ。 若いのに大聖女なんて地位についてて」


「あら、若いだなんて。 私は今年で25ですのに、お上手ですね、カスミ様は」


「……えっ?」



 ニコニコと上機嫌でそう言うマリーエルに、カスミは思わず言葉を失ってしまった。


 それもそのはず、マリーエルは身長も10歳児のカスミと変わらないし、顔立ちも完全に少女で、カスミはてっきり10歳くらいの子が大聖女として頑張ってるのかと思っていた。



「わ、若すぎませんか……?」


「そうですか?」


(か、可愛い……!)



 思わず出たカスミの言葉にキョトンとしながら首を傾げるマリーエルはそれはもう可愛らしく、ナステリア王国の姫であるミーユイアに似た破壊力があった。



「イセトから聞かされてはいますが、カスミ様は本当に大聖女にはならないんですか? 私、喜んで譲りますけども」


「い、いや、そういうのはちょっと…… 私は普通の平民ですし……」


「あら、私も元は平民ですよ。 たまたま光魔法が使えて、微かに神気を纏っているだけで、いつの間にかこの地位になってました」


「そ、そうなんですね? でも、私にはやっぱり荷が重いですよ…… それに、今の生活を気に入ってますので」



 カスミがそう言いながらチラリとビフレストの面々の方へ視線を向けると、ビフレストの面々はカスミが大聖女になるのを断っているのを見て安心した様子だった。

 


「そうですか…… 残念ですが、カスミ様の意思が一番大事ですね」



 そんなカスミを見て、マリーエルも少し残念そうな表情を浮かべながら、カスミの手をゆっくりと離した。

 


「あ、それで、話したいことがあって……」



 それからカスミは、先程チェアリィに話していいか確認したことを話すことにした。


 少なくともここにいる教国の3人は信頼に値する人だと話してわかったので、カスミがチェアリィから使命を託されてることや、あとはチェアリィの容姿や声、話し方なんかも伝えた。



「おお、そうですか……! チェアリィ様はそのようなお方なのですね……!」



 すると、ここまでは落ち着いた態度を崩さなかったフォルネンが、まるで少年に戻ったかのように目を輝かせながらカスミの話に夢中になっていた。


 それはマリーエルとイセトも同様だった。


 ただ、カスミがチェアリィがかつての戦争に心を痛めていたということを伝えると、その表情は沈痛なものに変化していく。



「やはり女神様は見ておられたのですね…… 本当に申し訳ない……」


「み、皆さんが当事者だったわけではないですからっ」


「それでも、この国の人間、そして教皇として、責任を感じずにはいられません」



 慌ててカスミはフォローをしたが、フォルネンはそう言って目を伏せ、謝るような素振りを見せた。



「でも、今の教国、そして世界はとても平和で喜んでましたよっ」


「おお、それは嬉しい限りです。 これからもより一層励まなければ」



 一応、チェアリィがそう遠くない未来に地上に降臨するつもりだということは秘密にすることになっているので言えないが、もしその時が来たら少なくともここにいるフォルネン、マリーエル、イセトには会って欲しいなとカスミは思った。



「カスミ様、本当にありがたいお話を沢山聞かせていただき、ありがとうございました」



 そんなチェアリィとの話を伝え終わると、フォルネン、マリーエル、イセトは深々とカスミに対して頭を下げてきた。



「そのお礼と言ってはなんですが、私達に何か協力できることがあればなんでもお申し付けください」


「おっ、それなら……」



 そんなフォルネンの言葉を聞いていたクリスタが前に出ると、ナステリア王家と交わしたカスミの後ろ盾になって欲しいという要望をフォルネンにも伝えてみた。



「ふむ、それなら喜んで後ろ盾となりましょう。 カスミ様の安寧のためにも」



 すると、フォルネンはあっさりと後ろ盾になることを了承してくれ、聖職者がビフレストに関わろうとする際は厳しい取り締まりを入れることを約束してくれた。



「ありがとうございます、教皇様っ」


「いえいえ、カスミ様がしてくださることに比べたら、些細なことです」


「あ、そうしたら、そのお礼と言ってはなんですけど、ちょっと作ってきたものがあるんです」



 カスミはそう言うと、収納ポーチからいくつかものを取り出していった。

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