#70 今回の宿へ
カスミの空の旅も10分ほどで終わりを告げ、ふわりと着地したクリスタに地面に下ろしてもらった。
「うう〜……」
そんな着地地点の近くでは、レネが地面に倒れ伏しており、その横でレネのことをツンツンしているフィオと翼をしまったアネッタもいた。
「レネさん、大丈夫ですか……?」
「カスミちゃ〜ん…… 怖かったよ〜……!」
そんなレネのところへカスミが心配しながら駆け寄って声をかけると、レネは涙目を浮かべながらカスミに抱きついてきた。
「大げさだな」
「アネッタは飛べる種族だから分からないんだよっ」
反面、同じスカイダイビングをしたアネッタはケロッとしており、レネの反応に大げさだと言うが、それを受けたレネはフシャーと威嚇するかのような表情を浮かべながらアネッタに文句を言った。
「聞いてよカスミちゃん! アネッタがね、もう地面まで10mくらいのとこまで止まらなかったんだよ!」
「そ、それは怖いですね……」
「超怖かった! おかげで体に変な力入って体中痛いし、心臓もさっきまでバクバク鳴るしでもう散々だよ!」
「アネッタさん、もうちょっと優しく降ろしてあげてくださいっ」
あまりにもレネが気の毒な様子だったので、カスミはアネッタに軽く注意をした。
「別にレネなら死なねぇし、良いだろ?」
「だとしてもこんなに怖がらせちゃだめですよ。 それに、私でも同じことしましたか?」
「それは…… しねぇな」
「その優しさをレネさんにも分けてあげてください」
「……分かったよ。 悪かったな、レネ」
「まぁ、いいよ! 今度もしあったら優しくしてね!」
仲間で信頼してるからこそアネッタはレネを多少雑に扱ってしまったようだが、親しき仲にも礼儀はあるべきだとカスミは思うので、アネッタを軽く問い詰め、レネに謝ってもらった。
レネはそんな謝罪を笑顔で受け入れ、アネッタの手を使って地面から立ち上がった。
「お〜、めでたしめでたし〜……」
「いや、そもそもフィオが運んでくれれば良かったんだけどね!」
「一人で飛ぶのと誰か運びながら飛ぶのとだと負担が大違い〜…… 」
ぬけぬけとそんな事を言うフィオにレネがジトーっとした目を向けるものの、フィオはどこ吹く風といった感じだった。
そんな一幕もありつつ、とりあえず地上には降りれたので、カスミ達は教国の首都を目指して歩き出した。
街道から少し外れた場所に着地したこともあり、それなりに距離があったが、30分ほどで入口の門まで辿り着いた。
そこでは検問が行われていて、カスミ達も列に並んで順番が来るのを待ち、順番が来たら検問をしている騎士にイセトから受け取った手紙を見せた。
「これは、大司教様の……! いや、教皇様の紋章まで……!?」
その手紙には大司教のイセトだけじゃなく、教皇しか使わない紋章が押印されており、それを見た騎士はペコペコ頭を下げながらカスミ達をすんなり通してくれた。
「そうしたら、とりあえず宿に行くか」
カスミとしては初めて来た国の首都なので、散策もしたいところだったが、ひとまずは宿を目指すことにした。
それからイセトからの手紙に同封されていた地図を頼りに進んでいくと、城下町を抜け、富裕層が住むエリアに目的の宿はあった。
「わぁ、立派な宿ですね」
そんなカスミの言葉通り、その宿は見るからに質が良さそうな綺麗な外観をしており、中に入ると煌びやかな、それでいて上品さを感じさせる空間が広がっていた。
「恐らく権力者が招いた者を泊めるための宿だろうな」
「歓迎されてるってことですかね」
「まぁ、そうだな」
そんな風にカスミはクリスタと会話しつつ、受付へと向かった。
「ようこそ我が宿へ。 紹介状のようなものはお持ちでしょうか?」
「はい」
一応イセトからの手紙はカスミ宛の手紙だったので、カスミが受付の者に渡した。
普通だったら子供が? と思われても仕方ない場面ではあるが、教育がしっかりしているのか、受付の男性はにこやかな笑みを崩さず手紙を丁寧に確認していった。
「……はい、カスミ様ですね。 大司教のイセト様より連絡いただいております。 お部屋の方までご案内いたします」
そして、しっかり話が通っていたようで、カスミ達はこの宿の最上階にある豪華な部屋に案内された。
「当宿のスイートルームでございます。 ルームサービスなどお気軽にご利用なさってください」
「あの、お金とかは……」
「既にイセト様よりいただいておりますので、ご心配なく。 それでは、ごゆっくり」
受付の男性はそうにこやかに言い、綺麗な所作のまま退室していった。
「スイートルームって、凄い高いですよね……」
「まぁ、この宿のレベル的に相当だろうな。 私達も依頼の時はそれなりに良い宿は取るが、ここまでのは取らない」
なんだか歓迎されすぎて逆に怖くなってきたカスミだが、以前会ったイセトの言動的に、全部良かれと思ってやってくれている気はしている。
なので、もし今度こういう機会があったら、ここまではしなくていいとちゃんと言おうと心に決めるのであった。
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