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#69 スカイダイビング?

 ガリュウの背に乗って飛ぶこと8時間ほど。


 以前メッコ村に行った時よりもスピードを出したおかげで、馬車で行くよりも断然早いスピードで隣国に当たる教国の首都が眼下に見えてきた。



「この辺りはどこが人目につかないか分からないから、ガリュウで降りるわけにはいかないな」


「どうするんですか?」


「レッツ飛び降り〜……」


「え、えぇっ!? フィオさーん!?」



 地上へ降りる手段をカスミが聞いている途中で、フィオがなんの躊躇いもなくぴょんっとガリュウの背中から飛び降りていった。



「フィオは風魔法で飛べるから大丈夫だ」


「そ、そうなんですね…… えっ、ということはつまり……」


「私達も飛び降りるぞ」


「えぇっ……!?」



 まさかの飛び降りるという降下手段に、思わずカスミは顔を青くしてしまう。



「そんなに怖がらなくても、カスミは私が抱っこして、風魔法でゆっくり降りるから心配するな」


「そ、それでも怖いですけど……」


「はい! 私もクリスタとがいいです!」


「ローニャもにゃ!」



 カスミがビビっていると、レネとローニャもクリスタと共に降りたいと言い出した。


 どうやらレネとローニャは飛べるほどの風魔法は使えないらしい。


 ちなみに2人とも身体強化の魔法は使えるので、全力で体にかければ飛び降りても死にはしない。


 ただ、骨折とまではいかずとも流石にかなり痛いので、降下手段としてはあまり適さない。



「あと一人が運べる限界だ。 どっちかはアネッタに降ろしてもらえ」


「やだー!」


「アレは無理にゃー!」


「運ぶのを面倒くさがって先に行ったフィオを恨むんだな」


「えっと、アネッタさんは風魔法じゃないんですか?」


「俺はこれだな」



 カスミがそう聞くと、アネッタは少し瞑目し、次の瞬間には背中からガリュウに似た形の翼が出現した。



「わっ、アネッタさん、翼生やせるんですかっ」


「龍人族は魔力を使って体の一部にドラゴンの体を再現できるんだ。 頑張れば火のブレスとか吐けるぞ」


「凄いですっ」


「ま、本物のドラゴンには遠く及ばないがな。 この翼も長時間飛んでられるわけじゃないから、地上付近までは自由落下で、着地する時に少し飛ぶつもりだ」


「じ、自由落下ですか……」



 つまりはもろスカイダイビングをするということで、レネとローニャが嫌がったのもカスミ的には納得だった。



「ほら、早く決めろ」


「うぅ、絶対負けられない……!」


「ここで全部の運使うにゃ……!」


「「じゃーんけーん!!」」



 それからアネッタとのスカイダイビングをかけたレネとローニャの仁義なきじゃんけんが行われた。



「勝ったにゃー!!」


「ま、負けたぁ……」



 その結果、ローニャが勝利し、アネッタとスカイダイビングするのはレネに決まった。



「ほら、レネ行くぞ」


「ま、待って、心の準備が…… と、というかほら、アネッタ滑空はできるでしょ!? 滑空で降りようよ!」


「滑空しながらぐるぐる回って降りてたらいつまで経っても着かないだろ。 疲れるし。 ……ほら、いくぞ。 暴れんなよ」


「ま、待って待って……! き、きゃあぁぁぁぁ〜〜〜っ……!!」



 かなりの高さに二の足を踏むレネだったが、観念しろと言わんばかりにアネッタにしっかり抱き上げられてしまい、そのままアネッタが躊躇なくガリュウの背中から飛び降り、真っ逆さまに落っこちていった。



「あぁ、レネさんご無事で……」



 そうして可愛らしい悲鳴を上げながら落ちていくレネを、カスミは両手を合わせて見送った。



「さて、私達もいこう」


「ちょっと怖いですけど、分かりました…… あ、ガリュウさん、今回もありがとうございました」


「グル♪」


「ガリュウさんとももっとお話とか、一緒に街を観光とかできたら良いんですけどね……」


「グル……」



 まるで「俺もしたいっす……」と言っているように首をもたげたガリュウだったが、なかなか難しいことではあるので、ひとまずカスミはガリュウの鱗を撫でてガリュウに感謝の言葉をかけた。


 それが済んだらカスミはクリスタにしっかりと抱っこされ、クリスタの背中にローニャが抱きつくような形で地上に降りることとなった。



「いくぞ、それっ」


「わぁっ……!」



 そして、クリスタがガリュウの背から飛び降りると同時に、風魔法のヴェールのようなものがカスミ達を包み込み、ふわふわと綿毛が舞うような感じでゆっくりと落下を始めた。



「風とかは感じないんですね」


「ガリュウの背に乗ってた時と同じような魔法だからな。 こっちの方が動いてる分コントロールが難しいから、全員を運んだりはできないんだ」


「フィオなら全員運ぶのできなくもないのに、逃げたにゃー」



 危うくスカイダイビングさせられそうになったローニャが恨めしそうにそう言う。

 


「まぁ、多少疲れるからな」


「ありがとうございます、クリスタさん」


「ふふ、いいんだ。 カスミを抱っこできるの嬉しいからな」


「そ、そうですか?」


「カスミは可愛いから、家でも見かけると抱っこしたくなる。 カスミが嫌がるからあまりしないが」


「い、嫌ではないんですけど、恥ずかしいです……」


「一緒に抱きついて寝たりしてるから、今更じゃないか?」


「そ、それとこれとは違うんですっ」


「ふふ、そうか」



 少し顔を赤らめながら抗議するカスミに、クリスタは微笑みながら優しく頭を撫でてくる。



(うう、クリスタさんに抱っこされたりこうやって頭撫でられると凄い嬉しくなっちゃう……)



 ふとした時に子供の体に精神が引っ張られてしまうカスミなので、特にこうして抱っこされたり頭を撫でられると恥ずかしいが嬉しくなってしまうのだ。


 せめてもの抵抗として、寝る時以外は早めに降ろしてと言うのだが、本心ではカスミもずっと抱っこされてもいいかなと思っている。


 ただ、中身は大人なので、その気持ちを認めたら尊厳を失うような気がして、いつもささやかな抵抗をするのだ。



(でも、クリスタさん本当に嬉しそうだし、これからは少しだけ許してあげた方がいいかな……?)



 そんな風に悶々と考えたりしつつ、カスミの空の旅はしばし続くのであった。

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