#68 教国へ
「クリスタさん、ちょっといいですか?」
「うん? どうしたカスミ」
ある日の昼下がり。
リビングでカスミが淹れた紅茶を飲んでいたクリスタにカスミは声をかけた。
「お手紙を書こうと思ってるんですけど」
「手紙? ミーユイア様にか?」
「いや、王都の教会で出会ったイセトさんに」
「……覚えてたのか」
カスミの言葉を受けたクリスタは、ちょっと嫌そうな顔を浮かべた。
「カスミが忘れてくれてれば、そのまま無かったことにしようかと思ってたが……」
「い、いやいや、わざわざお話もらったわけですし……」
先月王都に赴いた際、カスミは教会に寄ったのだが、その時にイセトというこの国の隣国でもある教国の大司教と出会い、なんやかんやあって教国にぜひ来て欲しいという話を受けた。
王都からサミアンに帰ってきて既に二週間ほどが経過しており、その間はかなりのんびり過ごしたので、そろそろまた大きな動きをしても良いかなとカスミは思い立った。
「本当に行くのか、教国に?」
「折角なので、行ってみたいです。 王都に行った時とは違って、滞在しても数日くらいですかね?」
「そこはちゃんと手紙に書いておこう。 向こうからしたらなるべく長くいて欲しいだろうからな」
「分かりました」
ということで、クリスタと相談しながらカスミはイセトへの手紙を書いていった。
書いた内容をざっくりまとめると、教国に行く時間ができたから、都合のつく時間を教えて欲しいということと、滞在は長くても5日ほどで考えているといった感じだ。
そして、教国に行くことを他のビフレストのメンバー達にも伝えたところ、もれなく全員一緒に行くことになった。
主な理由としては、変な聖職者からカスミを守るためというなんとも物騒なもので、もしかして治安が悪いのかと思い、聞いてみたのだが、別にそういうわけではないとのこと。
ただ、聖職者に目をつけられると面倒という共通認識がどうやらビフレストの面々にはあるようで、ひとまずカスミも心配をかけないよう、教国では常にビフレストの誰かと一緒にいようと心に決めるのであった。
*
イセトへの手紙を出してから3日ほどが経った。
「恐ろしく早い返事だな……」
パーティーハウスに届いたイセトからの返事が書かれた手紙を見て、クリスタはそう呟いていた。
というのも、この世界の手紙は届くまでに基本一日はかかる。
郵便局のような機関が、カスミが以前アリレインからもらったレターポータルの大きいバージョンのような魔道具で世界各地に手紙を送るので、その機関がある街は割とすぐに手紙は届く。
だが、イセトは大司教という教国においてはそれなりの立場の人間で、手紙に何か危険物が仕組まれてないかのチェックだったりをする必要があるので、普通よりも手紙が届くのに時間がかかる。
それでもわずか3日で返信が来たということは、カスミからの手紙を受け取ってすぐに読み、恐らくいろんな場所に話を通した上で返事を送っていることを考えると、恐らくカスミの手紙の返信をするために駆け回ったことが推測できる。
そんな手紙の内容をざっくりまとめると、ぜひ来て欲しい、教皇と大聖女も歓迎する、ほとんどの予定をキャンセルしたからいつでも来ていいよといった、文面だけでも凄まじい熱量が感じられるものだった。
「教皇と大聖女が関わってこのスピードか…… やっぱり行くのやめないか?」
「いやいや、流石にここまで歓迎してくれるみたいですし……」
「……仕方ないか。 謁見の場にはとりあえず私達全員も同行しよう」
それから、いつでも来て良いとの事だったので、5日後に行くという旨の手紙を再び送った。
すると、今度は送った2日後に手紙が返ってきて、大いに歓迎する旨と、カスミ達が滞在するための宿の位置が書かれた地図が入っていた。
本当に大歓迎だなとカスミは苦笑しつつ、教国に行くための準備を始めた。
そして、あっという間に時は経ち、約束の日の朝方。
ビフレストのメンバー全員で、サミアンの街から少し離れた人気のない草原にやって来ていた。
「お久しぶりです、ガリュウさん」
「グル♪」
そこには先行していたアネッタが呼んだ、以前背中に乗せてもらったドラゴンのガリュウが既に待ってくれており、カスミが挨拶をすると、ガリュウは心なしか嬉しそうな鳴き声を漏らした。
今回教国へはそんなガリュウの背に乗って向かうこととなっている。
長距離移動ならフィオの転移魔法で行くのかとカスミも最初は思っていたのだが、フィオの転移魔法はフィオが記憶している場所にしか飛べず、フィオが最後に教国に行ったのはもう50年ほど前らしく、どんな感じだったかうろ覚えだし、仮に覚えててもその場所が様変わりしてたら転移できないそうなので、今回はガリュウを頼ることになった。
ということで、早速ガリュウの背にカスミ達は乗り込んでいった。
「よし、頼んだぞガリュウ」
「グルゥ」
そして、アネッタの言葉を受けたガリュウは、ブワッと大きな翼を広げて飛び立ち、教国の方向へと進み始めるのであった。
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