#60 祭りを楽しむ
なんやかんやあったが、お腹を満たしたカスミ達は祭りのメイン会場である広場にやってきていた。
そこには屋台の他にも、簡易的なステージなんかも用意されていて、ちょうど今は吟遊詩人と楽器を持った者達がパフォーマンスをしていた。
「熱量がありますねっ」
「ああいうパフォーマンスはこういう時じゃないとできないからな。 気合いが入ってるんだろう」
クリスタの言う通り、騒音などの問題から歌ったり楽器を鳴らすパフォーマンスはしたくてもできない場合が多い。
だからこそ、こういった祭りの時がパフォーマーにとっては稼ぎ時のようで、中々に熱意のこもったパフォーマンスが行われていた。
「〜〜〜♪」
「うっ……」
そんなパフォーマンスにカスミが惹き込まれていると、曲が変わったところで何故かクリスタが顔を顰めた。
「あっ、これクリスタの歌だ」
「えっ、クリスタさんの?」
「お、おい、レネっ」
どうやら今、吟遊詩人が歌い始めたのはクリスタが題材となった歌らしく、カスミがその歌の歌詞をよくよく聞いてみると、エルフの魔法剣士が竜を倒した英雄譚を歌にしているようだった。
「か、カスミ、あっちでサーカスやってるぞ?」
「ふふ、いい曲じゃないですか、クリスタさん」
「か、カスミ?」
「華麗なるエルフの魔法剣士なんて、かっこいいですねぇ」
「くぅ……!?」
カスミがニヤニヤしながらクリスタに今聞いた歌詞を復唱すると、クリスタは顔を赤くしながら後退った。
「私のこと女神だとかなんとか言っておいて、クリスタさんにもそういうのあるじゃないですかっ♪」
そんなクリスタに、カスミは笑みを深くしながら詰め寄る。
「うぐっ……」
「歌なんて覚えやすくていいですねぇ。 私も覚えようかな〜」
「か、勘弁してくれ……」
「なら、言うことありますよね?」
「女神ってからかってすみませんでした…… もう言いません……」
「はい、そうしてください」
思いもよらぬ形でクリスタの弱点を見つけたカスミは、歌いじりをしない代わりに女神いじりもしないという形で話をつけた。
「あはは、クリスタもこうなったら形無しだねー」
「くそっ、過去の自分を殴りたい……」
レネに指でツンツンされながらからかわれるクリスタは、なおも歌い続ける吟遊詩人に恨めしげな目線を送った。
ちなみにこの歌の内容は多少脚色はされているものの、クリスタがドラゴンを倒したというのは事実で、実際冒険者の間では有名な話だったりする。
そして、その話を歌にしたいとさすらいの吟遊詩人がクリスタに許可を求めにきたのだが、その時のクリスタは深く考えずに許可を出してしまった。
結果、今となっては吟遊詩人の間では定番の歌となってしまい、文句を言いたくてもこの曲が作られたのはもう5、60年は昔の話なので、今更やめてくれても言えなくなってしまったクリスタなのであった。
とりあえず、ここにいるとクリスタの羞恥心がさらに高まってしまうので、カスミ達はステージ近くからは退散し、少し離れたところでパフォーマンスをしているピエロがいたので、それを見ることにした。
そのピエロは、10個くらいのボールでジャグリングをしたり、大きなボールで玉乗りをしたりと、中々に見応えあるパフォーマンスをしてくれていた。
「ああいうの本当に凄いですよね」
「カスミちゃんも練習すればできるようになるんじゃない?」
「いやぁ…… 私、運動神経無いですし……」
「上に乗っても落ちないボールとか作ってあげよっか?」
「そこまでしたらなんか負けた気になりますっ」
「確かにね!」
ピエロのパフォーマンスを見ながら、レネとそんな風に話したりして久しぶりの心休まる時間をカスミは過ごしていった。
ここ一か月はミーユイアの誕生日パーティーのことを常に考えていたので、久しぶりの何も考えずに目の前のことを楽しむ時間は、カスミにとっては良い休息になった。
その後ものんびりと他の出し物を見たり、目的もなく王都のまだ行ったことのないところを歩いてみたりしていたら、あっという間に時間が経ち、空が茜がかってきた。
「そろそろ帰るか」
「はいっ。 とっても楽しかったです」
「私達も楽しかったよー!」
それから今日見たものの感想なんかを述べながら、クリスタとレネと交互に仲良く手を繋いで拠点へと帰るカスミなのであった。
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