#59 王都の祭り
ミーユイアの誕生日パーティーが終わってから一日空いた本日。
カスミは出かける準備を整えていた。
というのも、今日は城下町の方でミーユイアの12歳を祝う生誕祭が行われるとのことなので、カスミはこれからレネとクリスタと一緒に祭りを回る予定だ。
他のメンバー達も誘ったが、フィオは人混みが嫌、アネッタも高身長で中々いない龍人ということもあって人目を集めるのでパス、ローニャは生誕祭記念の賭け事がカジノで行われるらしく、そっちに行くとのこと。
「準備できましたっ」
「お、じゃあ行こっか!」
それからカスミが準備を整え玄関へ行くと、既にレネとクリスタが待っており、仲良く3人で拠点を出た。
「どんなお祭りなんですかね?」
「屋台がかなりの数出るとは聞いているな」
「公園で出し物とかもやってるんじゃないかな!」
カスミが祭りについて聞くと、クリスタとレネはそれぞれそう返してくれたが、クリスタもレネも王都で行われる祭りに参加するのは初めてとのことで、そこまで詳しいことは知らないようだ。
そんなカスミ達一行がのんびり雑談をしながら祭りが行われているエリアに向かっていると、徐々に人の流れが多くなっていき、油断すると他人とぶつかりそうになるくらいの人の多さになったところで、屋台が立ち並ぶ大通りに辿り着いた。
「活気が凄いですねっ」
「お昼時だしね!」
「私達も何か食べるか」
時刻は正午を少し回ったくらいと、丁度よくお腹が空いてくるタイミングなこともあって、大通りを歩く人々は左右に立ち並ぶ屋台にどんどん吸い込まれていった。
それはカスミ達も例外ではなく、とりあえず近くにあった串焼き肉を売っている屋台に立ち寄った。
「いらっしゃい!」
「2つもらえるか?」
「あいよ!」
そこではクリスタが手際よくバイソン肉の串焼きを購入し、カスミに一本手渡してきた。
「大っきいですねっ」
渡された串には、大きめの一口サイズのバイソン肉が5個も刺さっていて、これだけでカスミは満腹になれそうなボリュームがあった。
それなのに値段は300ゴルドと、前世だったら考えられない安さにカスミは脱帽させられた。
「2個くらいにしとく?」
「そうしますっ」
他にも屋台を回りたいので、カスミはひとまず2個くらい食べてみることにした。
大きめに口を開け、はむっと一口でバイソン肉の串焼きを頬張ると、強めに振られた塩がバイソン肉の野生味ある旨みに合っていて、非常に美味しかった。
これぞ屋台飯といった大味な料理に、前世で子供の頃に行った祭りを思い出して、カスミはなんだか懐かしい気持ちになった。
それからよく噛んでカスミが串焼き肉を2個食べて残りをレネに渡すと、残りの3つをレネはあっという間に平らげ、もう一本の串焼きの方も、いつの間にかクリスタの胃の中に消えていた。
クリスタもレネも細くて綺麗なのにどこに入ってるんだろうと何度目か分からない疑問をカスミは感じつつも、その後もいくつかの屋台を回っていった。
大きなフランクフルトだったり、果物を使ったジュースなど、どれもかなり大味なものばかりで、だからこそカスミは凄く祭りを楽しんでいるなと思わされた。
ただ、カスミ的には焼きそばやたこ焼き、りんご飴のような日本の祭りではお馴染みの屋台飯がちょっと恋しくなってしまった。
なので、そういった屋台でも出せるような料理も今度まとめてレシピ登録しようかなと思ったり思わなかったり。
「あれ美味かったなー」
「な。 ライスなんて食えんのかって思ったけど、めちゃくちゃ美味かったな」
「えっ」
そんな中、すれ違った人達からライスという単語が聞こえてきて、思わずカスミは声を上げた。
「どうした、カスミ?」
「今、すれ違った人がライスについて話してて……」
「ほう? ライスが食べられる屋台があるのか」
まだライスは一部の者にしか美味しさが伝わっていないとカスミもクリスタも思っていたが、なんとライスを扱う屋台がどこかにあるらしい。
「すれ違ったってことは、向こうの方にあるのかな?」
「行ってみましょうっ」
流石に気になったカスミは、先程すれ違った人達が歩いてきた方向へ歩き始めた。
それから少し歩いたところで、カスミにとっては馴染み深い、白い三角の絵が書かれている屋台を見つけた。
「らっしゃいらっしゃい! 実は美味しいライスの屋台だよ! 一度食べてみてくれい!」
そこではそんな風に客寄せをしている店員がいて、興味を惹かれた者達がその屋台の前で列をなしていた。
その列にカスミ達も並び、少し待っていると順番がやってきて、改めて屋台の中を見てみると、そこでは鉄板の上で焼かれたおにぎりに、薄切りの焼いたオーク肉を巻いたものが売られていた。
「いらっしゃい!」
「肉巻きおにぎりだ……!」
「おっ! 嬢ちゃんおにぎり知ってんのかい! 分かりやすいようにここでは肉巻きライスって名前で売ってんだがな!」
カスミの呟きに、屋台の店主がそう言葉を返してきた。
「って、んん? 黒髪黒目の…… 嬢ちゃんもしかして、あの女神様か?」
「えっ!?」
「王都の近くの俺が住む村でライスを育ててたんだが、この前メッコ村っていう同業の村から、ライスの食い方を教わってな! それで、食い方を教えてくれたのは黒髪黒目の女神様ってのも聞いたんだが……」
「ひ、人違いじゃないですかね!?」
「いや、黒髪黒目なんてそういるもんじゃ……」
「わ、私、子供ですしっ! そ、そんなことより、これ3つくださいっ!」
「お、おう、毎度あり」
有無を言わさないカスミの勢いに何も言えなくなった屋台の店主は、注文通りに肉巻きライスを3つ紙パックに包んで渡してくれた。
そんな店主にカスミは代金を渡し、ぴゅーっと一目散にその屋台から退散した。
「はぁっ…… はぁっ……」
「カスミちゃーん、走ると危ないよー」
屋台から走り去って息を切らすカスミに、クリスタとレネが追いついてきた。
「くくっ、ライスの美味さが広まっていて良かったじゃないか、女神様?」
「女神じゃないですっ!」
カスミのことを女神と言いながらからかってくるクリスタに、カスミは鋭い目を向けながら女神じゃないと否定した。
「そういえばなんか前に女神がどうとか言ってたね。 いいじゃん、女神カスミちゃん!」
「よくないですっ」
レネもそんな風に言ってくるが、カスミは女神呼びを認めるつもりはなかった。
「まぁ、女神どうこうは抜きにして、ライスの美味しさが広まってるのは良いことじゃないか」
「それはまぁ、そうですね」
一旦女神呼び問題は棚上げし、とりあえず買ってきた肉巻きライスをカスミ達は口に運んだ。
すると、肉の旨みと程よい脂、そしてライスの香ばしさと甘みが口の中で一つになり、かなり満足感が得られる仕上がりになっていた。
「やっぱりおにぎりは食べやすくていいな」
「肉巻きは無理かもだけど、普通の塩だけのやつとかでも、携帯食としてはかなり優秀だよね!」
クリスタもレネもカスミと同じように、肉巻きおにぎりをとても美味しそうに頬張っていた。
そんなライスが関わる思いがけぬ出来事もあったものの、まだまだ祭りは始まったばかりなので、お腹を満たしたカスミ達は違う場所へと移動を始めるのであった。
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