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#58 パーティーを終えて

「くそっ!!」



 ミーユイアの誕生日パーティーが大成功で終わった後。


 アヴァリス商会の会長マルズロは、王都にある屋敷で荒れていた。



(なんだあの料理にデザートは……!)



 彼の怒りの原因は、先程パーティーで振る舞われた数々の美食……



(デラフト商会め……!)



 を、用意したとされているデラフト商会に向いていた。


 彼も料理やデザートの美味しさ関してはもう感動するレベルで認めてはいたのだが、その料理に使った調味料や食材をデラフト商会が用意したという事実に腹を立てていた。


 しかも、他の参加者達は、あの素晴らしい料理を作った料理人ともデラフト商会は何らかの繋がりを持っていると確信していた。


 これから起こると思われる食文化の向上に当たって、間違いなく貴族達はデラフト商会を食材や調味料の仕入れ先に選び、それが広まれば平民達もデラフト商会の商品を求めるようになるだろう。



(あのエルフめ……!)



 マルズロの目論見では、デラフト商会へのイメージアップを防ぐために、高級品であるワイバーンの肉をぶつけたわけだったのだが、むしろワイバーンの肉は他の料理が売り切れる中で、ほとんどが余って廃棄処分する形になってしまった。


 しかも、実はマルズロはデザートとしてこちらも最高級の砂糖を惜しみなく使ったケーキを用意していたのだが、これはマルズロ自身が舞踏場内にいたシェフに働きかけて、提供をやめさせたのだ。


 料理を食べた時点で、デザートも既存のものとはレベルが違うものが出るというのは流石のマルズロも予想できたので、これ以上恥をかかないようにするための苦肉の策であった。


 おかげでそのケーキも廃棄処分となり、今回のパーティーに料理を出すために使った金は、全てが無駄になった。


 むしろ、デラフト商会の引き立て役となってしまったと言えるだろう。



「くそぉぉぉーーっ!!」



 そんな事実を改めて思い出したマルズロは、怒りのままに暴れ回り、屋敷をめちゃくちゃにし、酒を浴びるように飲み、泥のように眠りについた。


 そして、その次の日からは、今回のパーティーに使った分の金を回収すべく、多方面に奔走する羽目になったのであった。




 *




 一方、ミーユイアの誕生日パーティーを無事に終えたカスミは、王都の拠点に帰ってきていた。



「久しぶりにドレスとか着たから疲れたにゃー」


「本当にな」


「ローニャさんもアネッタさんも綺麗でしたよ」



 会場では伝える暇は無かったが、ビフレストの面々のドレス姿は非常に魅力的で、それが見れたこともカスミの思い出になっていた。



「カスミちゃん、私はー?」


「もちろんレネさんも素敵でしたよ」


「えへへー、ありがとっ! まぁ、カスミちゃんが一番可愛かったけどね!」



 そんな風に言い合ったりしつつ、ひとまず全員で風呂に入って体を綺麗にした。



「さっぱり〜……」


「ですねっ」


「にしても、やっぱああいうパーティーだと腹一杯は食えねぇのが不満だな」



 そんな風呂上がりにカスミがフィオに後ろから抱きしめられながらリビングで休んでいると、アネッタがおもむろにそんなことを口にした。


 それも仕方ないことで、今日用意した料理はどれも一口サイズのものばかりだったし、数に限りもあったので、いつも毎食3人前は平気で食べるアネッタからすれば全然量は足りなかっただろう。



「あ、それなら、パーティーで余ったもの貰ってきたので、食べますか?」


「カスミの料理が余ったのか?」


「いや、私のはありがたいことに余らなかったんですけど、アヴァリス商会さんが出したステーキが……」



 実はカスミは帰り際に一度厨房に挨拶をしに寄ったのだが、その時に大量に余っていたワイバーンのステーキをいくらかもらってきたのだ。


 他の料理人達も自分達では滅多に食べられない高級肉なので、喜んでお持ち帰りしていたりする。



「お、良いな、食おうぜ。 それに、カスミは何も食べていないんじゃねぇか?」


「そうですね。 あんまり食べる暇無かったので」


「ローニャも食べるにゃ!」



 どうやらアネッタ以外のメンバー達も、まだお腹に余裕があるようなので、カスミは貰ってきたワイバーンのステーキを収納ポーチから取り出し、フライパンで軽く温め直しつつ、付け合わせに野菜スティックとそれに付ける味噌マヨを用意した。


 そうしてサクッと作った夜食をテーブルに運び、お腹が空いていたカスミは早速ワイバーン肉のステーキを口に運んでみた。



「んんっ! 美味しいっ……!」



 すると、口の中には野生味溢れる凄まじい旨みが広がってきた。


 やはりこの世界で高級肉扱いされているだけあって、普段食べているオーク肉やバイソン肉よりも確実に質が良い肉だとカスミは感じた。


 一度冷めてしまってちょっと硬くなってしまっているのにこれだと考えると、しっかり調理してソースなども作った出来立てはどれだけ美味しいんだろうなと考えさせられる美味しさだった。



「んー、確かに美味しいけど、カスミちゃんの料理には及ばないねー」


「貴族とかだとワイバーン肉は食べ慣れてるから余計ににゃー」



 そんなレネとローニャの言う通り、いかに質の良い高級肉であっても、ただ焼いただけではカスミの料理の味の深みには遠く及ばない。


 それは実際にこのステーキが余ってしまったという事実からもよくわかるだろう。



「まぁ、何はともあれお疲れ様だ、カスミ。 大変な仕事だっただろうに、よく頑張ったな」


「確かにやることは沢山ありましたけど、やりがいがあって楽しかったですっ」



 クリスタの労いの言葉に、カスミはそんな風に返した。



「それでも動きっぱなしだったから、しばらくはしっかり体を休めような」


「ふふ、分かりました」



 どこまでも過保護なクリスタにカスミは笑みを浮かべつつ、ある程度お腹を満たしたところでベッドに入り、長いようであっという間だった1日を終えるのであった。


 

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