#54 誕生日パーティー①
「いよいよ明日ですね!」
「そうですね」
カスミは現在、ついに明日に迫ったミーユイアの誕生日パーティーのリハーサルのため、会場となる王城内にある舞踏場に来ていた。
そこには当然主催であり主役のミーユイアもおり、会場のセッティングや本番の段取りの確認を念入りに行っているところだ。
ちなみに明日のパーティーには、カスミとビフレストのメンバー達も参加することになった。
ビフレストのメンバー達も、カスミが今回のパーティーのために用意した料理やデザートには当然興味があり、どちらにせよ付き添いは必須なので、ならパーティーにも参加させてもらおうということになった。
主催のミーユイアからしても、この国における最大戦力であるビフレストのメンバー達が参加してしてくれることは、王家がビフレストの面々と友好的な関係を築けているというアピールになるということで、二つ返事で了承してくれた。
なお、カスミはパーティーの最初の方は厨房で料理とデザート作りに取り組み、終盤でデザートを振る舞うタイミングになったら、しれっと会場に合流する予定だ。
沢山の貴族が参加するし、その中にはカスミくらいの子供もいるそうなので、変に注目を集めることもないだろう。
「本来はダンスを行うスペースをこの辺りに取るのですが、今回はもうこの辺りにも料理を並べて、立食用のテーブルを沢山置きます!」
そんなミーユイアの言葉通り、会場の真ん中には料理を置くためのテーブルがずらっと並んでおり、そこに王城の料理人達が控えて希望した人に料理を渡していくような形を取るようだ。
そうして料理を受け取ったらすぐ食べられるように、立食用のテーブルも沢山置かれていて、本来ダンスをするための舞踏場は、レストランのような空間になっていた。
「私も挨拶回りとかせずに、カスミ様の料理をひたすら楽しみたいですわ……」
「あはは…… 頑張ってください、ミーユイア様」
「頑張りますわ! それに、デザートはゆっくり食べられますもの!」
主催であるミーユイアは、パーティーが始まったら参加する貴族達に挨拶回りに行かないといけないそうなので、メインの料理に関してはゆっくり食べられないそう。
ただ、デザートの数品やメインであるケーキに関しては、ミーユイアの強い希望もあってゆっくり食べる時間が設けられるとのこと。
「料理のメニューは拝見させてもらいましたけど、デザートに関しては何も聞かされてないので、本当に楽しみですわ!」
「ふふ、腕によりをかけて作りますね」
実は既にカスミはケーキを含め、デザート類も試作済みなのだが、それを試食した王城の料理人達と、ミーユイアの代わりにチェックしに来た第一王妃のアリレインからは、もう大絶賛だった。
王城の料理人の中にはあまりの美味しさに涙を流す者も現れた程で、作ったカスミも自信を持って当日を迎えられそうだった。
「それと、誕生日パーティーが終わったら、お友達としてカスミ様とゆっくりお話したいですわ」
「お望みとあれば、私はいつでも大丈夫ですよ」
「むぅ…… カスミ様は私が望まないとお話したくないですか?」
カスミの少し距離を感じさせる発言に、ミーユイアは少し拗ねたような表情を浮かべながらそんな風に言葉を返す。
(か、可愛いっ……!)
「そ、そんなことないですよっ。 私もミーユイア様とお話したいです」
12歳のお姫様の拗ね顔の破壊力にカスミはノックアウトされそうになったが、なんとか平静を装いながらそう答えた。
「……じゃあ、ユイと」
「えっ?」
「ユイ、って呼んでください。 身内にはそう呼ばれているんです」
「よ、よろしいのですか?」
「嫌ですの……?」
「そ、そんなことないですっ。 じゃあ…… ゆ、ユイ様……」
「様もいらないんですけど……」
「そ、それは流石にっ」
「……まぁいいです。 私も、カスミと呼んでいいですか?」
「もちろんですっ」
カスミがそう答えると、ミーユイアは顔を綻ばせ、カスミの手を取ってきた。
「ふふ、カスミっ」
「は、はい?」
「呼んだだけですの♪」
(ぐはぁっ……!?)
呼び方が親密なものに変わったことで、カスミとの関係に特別感が増したのか、ミーユイアは花咲くような笑顔をカスミに向けながらそんな事を言ってきた。
その言葉と仕草はなんともあざとく可愛らしく、カスミの心に大ダメージを与えてきた。
「ミーユイア様、こちらの飾り付けなのですが……」
「あ、はい、今行きますわ。 では、カスミまたね♪」
「は、はい……! ユイ様も、頑張ってください……!」
それからミーユイアはメイドに呼ばれてパーティーの準備に戻っていった。
カスミはそんなミーユイアを見送りつつ、可愛らしいミーユイアのためにも、明日のデザート作りを頑張ろうと改めて決意するのであった。
*
そして、いよいよやってきたミーユイアの誕生日パーティー当日。
会場となる舞踏場には、続々と貴族達が集まってきていた。
「おお? あれはなんだ?」
「シェフが沢山いる、ということは料理? いやだが、見た目がかなり美しいぞ」
そんな貴族達は、舞踏場の真ん中に設置されたテーブルの上に所狭しと並ぶ料理らしきものに早速興味を示した。
それもそのはず、こういったパーティーでは多くて5種類くらいの料理が並び、見た目も変わり映えがないことがほとんどなのだが、今、貴族達の目の前にある料理は20種類近くあり、しかもどれも見たことのない華やかさをしていた。
「な、なんだ、これは……!?」
そうして貴族達が見たことのない料理に期待を寄せる中、貴族に混ざって会場にやって来たアヴァリス商会の会長、マルズロは盛大に焦っていた。
彼は王家が渋る中、無理を言って今回のパーティーに料理を出させてもらえるよう、話を取り付けた。
そのため、存在感を示せるよう、最高級のワイバーンの肉のステーキを用意をし、それは確かに料理が並ぶテーブルの一角に置かれている。
しかし、その周りにある料理は、ただ焼かれただけのステーキ肉とは違い、一つ一つの料理に何種類もの食材が使われているのか、非常に彩り豊かで、料理をまとめるための楊枝やピックなんかも形や色がこだわられていた。
そのため、完全にただのステーキ肉はそれらの料理に埋もれてしまっている。
当のマルズロでさえ、自分が用意したステーキ肉より、他の料理達の方が魅力的に思えてしまう始末だった。
『皆様、ようこそお越しくださいました』
そんな状況にマルズロがダラダラと冷や汗を流し始めた中、この国の宰相がパーティーの始まりを告げる挨拶を始めるのであった。
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