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#55 誕生日パーティー②

 この国の宰相がミーユイアの誕生日パーティーの始まりを告げる挨拶を、声を遠くに届けるための拡声魔法を使いながら始めると、参加者達は上座の位置にあるステージの方へ体を向けた。



『それでは、王家の皆様のご入場でございます』



 それから宰相がそう宣言をすると、まずは王妃のアリレインとシャラミラ、それに続いて王子王女のナタク、コレント、ディケルトがステージ横の出入り口から入場してきた。


 参加者達はそれを割れんばかりの拍手で出迎える。



『そして、本日の主役、ミーユイア第二王女殿下の入場です』



 そして、他の王族達とは少し間を空けたタイミングで、この国の王であるダスロウと共に、綺麗に髪をセットし、バッチリメイクを施した、豪華なドレス姿のミーユイアが入場してきた。


 その瞬間、舞踏場には先程よりもさらに大きな拍手が鳴り響いた。


 それからミーユイアは、ダスロウと共にステージの真ん中に立ち、優雅な仕草で一礼をすると、ピタリと拍手は止まった。



『皆様、本日は私の12歳の誕生日を祝すパーティーに来てくださり、ありがとうございます。 本日は皆様にも楽しんでいただけるよう、沢山の準備をして参りました。 その中の一つとして、今日は食通である皆様でも味わったことのない美食の数々を用意致しましたので、どうぞ心ゆくまで楽しんでいってください』



 そして、ミーユイアが凛とした態度でそう挨拶を述べると、再び盛大な拍手が舞踏場内に響き渡った。



『では、これから皆様にお皿をお渡ししますので、気になる料理の前へどうぞ。 待機している料理人がお皿に料理を運ばせていただきます』



 そうして、主催のミーユイアによる開会の挨拶の後には、宰相が早速料理と受け取り方について説明をした。


 すると、参加者達は待ってましたと言わんばかりに皿を受け取り、気になる料理の前へ移動を始めた。



「シェフ、これはなんだい?」


「こちらは焼いたバゲットの上に、生ハムとアボカドというクリーミーな野菜と、クリームチーズという口溶けの良いチーズといくつかの調味料を合わせたものを乗せた料理になります」


「ほう、聞いたことのない食材に作り方だが…… 一つもらおう」



 今回用意した料理は、カスミが初めて王族達と話した時に試食品として出したフィンガーフードの他にも、手軽に食べられるような料理が沢山用意されていた。



「あむ…… おおっ!? な、なんだこれは……! 口の中で様々な食材の旨みと、酸味のある味が広がる……!」



 その中の一つである、アボカドとクリームチーズを混ぜ合わせて塩、胡椒、レモン汁で味を整えたディップを、生ハムと一緒にバゲットに乗せた料理を食べた貴族は、そのこれまで食べてきた料理とは一線を画す美味しさに驚きの声を上げた。



「あら、こちらはなんですか?」


「こちらはマグロという魚の表面を焼き、バターと醤油という新しい調味料で味付けをしたものになります」



 その横には、四角く切ったマグロのたたきに、溶かしたバター醤油を回しかけ、楊枝を刺したマグロのピンチョスが並べられていた。



「表面だけということは、内側は生ということ? 魚で生は危険なのでは……」


「新鮮な魚であれば生で食べられるものも多いそうです。 もちろん、今回こちらにあるものは全て安全性はチェックしてありますので、まずはお試しで一つどうでしょうか?」


「……では、一つもらうわ」



 半生だというマグロのピンチョスに、少し疑問は持ちつつも、貴族の女性はそれを一つもらい、ゆっくりと口に運んでいった。



「んっ……! まぁ、とっても美味しいわ! あまりお魚は食べたことなかったけど、お肉とは違った美味しさで、使われてるソースも香ばしくて良いわ!」



 すると、マグロの旨みと、バター醤油の香ばしさが口の中で広がり、飲み込んでもしばらく余韻が残るくらいの中々にパンチのある味わいをしていた。



「これはなんだ……? 黄色い粒が沢山入っているが……」


「こちらはライスを香辛料と海鮮と共に炊き上げたパエリアという料理になっております」



 そして、カスミがぜひライスの美味しさに気付いて欲しいと願って作ったパエリアも並べられていた。



「ライスだと? あの家畜の餌のか?」


「先入観はあるかもしれませんが、ライスは実はとても美味しい食材だったのです。 騙されたと思って一口いかがでしょう?」


「そこまで言うなら…… 匂いは悪くないしな」



 ライスと聞いて少し顔を顰めた貴族の男だったが、熱意のある説明を聞いて興味が湧いたようで、食べやすいように小さいカップによそわれたパエリアを、恐る恐る口に運んでいった。



「お、おお…… 普通に、美味だな。 香辛料らしき風味と、海鮮の旨みがひしひしと感じられる…… ライスのもちもちとした食感もまた良いな……!」



 すると、口の中で広がった香辛料と海鮮の風味に驚くと共に、噛めば噛むほどライス特有の甘味もその風味に加わってきて、その後もライスという新たな主食の美味しさに気付く貴族が続出した。



「ふふ、流石カスミだな」



 そんなそこかしこで新たな美食に舌鼓を打つ他の参加者達を横目に、クリスタを始めとしたビフレストの面々も、カスミの料理を心から堪能していた。



「どれもうまうまにゃー♪」


「お、あっちのも美味そうだな」



 その中でも大食漢なローニャとアネッタは、一巡目で取り皿にこんもりと山ができるくらい料理を受け取っていたが、早くも2周目に突入しようとしていた。



「他の人達もいるんだから、程々にしなよー?」


「まぁ、補充もされてるしいいんじゃない〜……?」



 その横にいるレネとフィオもそれなりには食べているものの、他の参加者がいる手前、少しセーブはしていた。


 それでも少しずつ皿に料理を取ってきて、全種類は確実に食べるつもりではあるようだが。


 そんなビフレストの面々は全員しっかりとドレスに身を包んで、髪のセットや化粧も施しており、非常に美しい見た目となっていた。


 本人達は気付いていない、もしくは気にしていないが、その美しさは他の参加者達の視線を存分に惹きつけており、独身の若い貴族の中には声をかけようか迷っている者もいた。


 しかし、声をかける前に、目を光らせているクリスタが視線で制してくるので、結局誰もビフレストの面々には近付くことができなかった。




 *




「3番トレーもう少しで無くなるぞ!」


「7番追加できた! 運んでくれ!」



 舞踏場で貴族達が食事を楽しんでいる中、その盛り上がりに比例するように、厨房は大忙しになっていた。


 途中で料理の補充が必要になることは想定されていたが、思っていたよりもペースが早く、料理人達はひたすら追加の料理を作り、できたものからメイドや執事の者達が舞踏場へと運んでいった。



「……うん、これで完成ですね」



 そんな厨房の一角。


 大忙しの者達から少し隔離された場所で、カスミはこの後出すデザートの仕上げを行っていた。



「こ、これは……!」


「凄すぎます……!」



 そんなカスミの周りにはアシスタントとして数名の王城の料理人がいたのだが、最後の方はもうカスミのパティシエとしての技術に見惚れるばかりで、特に仕上がったケーキを見た時にはもう鳥肌が止まらない様子だった。



「運ぶのはお任せして大丈夫ですか?」


「もちろんです!」



 そうして自分の仕事をやり遂げたカスミは、後のことは任せてパーティーに参加すべく、厨房を後にするのであった。

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