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#53 改めて謝罪

「うーん……」



 王都の拠点にて、カスミは王城から届いた手紙を読んで何やら唸り声を上げていた。



「カスミちゃん、どうしたの〜……?」


「あ、フィオさん」



 そんなカスミのところへフィオがやって来て、カスミが座るソファにポスっと腰掛けた。



「その手紙は〜……?」


「陛下からのお手紙です」


「なんて〜……?」


「この前のディケルト殿下について正式に謝罪したいから、明日の料理指南の前に来て欲しいと」



 手紙の内容をざっくりと噛み砕いてカスミはフィオに話した。

 


「遅いね〜…… もっと早く謝るべきでしょ〜……」


「いや、王族の皆さんは忙しいでしょうし……」


「その辺の公務なんかよりカスミちゃんに謝る方が先〜……」


「別に全然怒ってないんですけどね……」



 先日のディケルトの無礼に関してはカスミより他のビフレストのメンバーが怒っており、特にクリスタとフィオは未だに根に持っているようだった。



「お詫びはなに貰う〜……?」


「手紙にも現実的に可能なら何でもお詫びとして渡すって書いてたんですけど、別に謝罪の言葉が聞ければ私はそれで……」


「だめだめ〜…… 貰うものは貰わないと舐められちゃうよ〜…… カスミちゃんが決められないなら私が決めようか〜……?」


「ちなみにフィオさんならどんなものを?」


「とりあえず、カスミちゃんが好き勝手使える街一つ分くらいの土地の権利でしょ〜…… お金は星金貨10枚は即金で、今後一年につき一枚は毎年貰う〜…… あとは〜……」


「そ、そんなのいらないですよっ」



 まだまだあるぞと言わんばかりのフィオを、カスミは慌てて制止した。



「土地とかお金とか要らないですっ。 ただでさえ、シクウさんから凄まじい額のお金が入るって言われてるのに……」



 恐らくは来月くらいに売り出されることになるカスミの調味料やレシピなのだが、シクウが少なく見積もった売上額と、カスミに入るであろう金額を教えてもらったのだが、桁違いの数字すぎてカスミはあまり考えないことにしたのだ。


 少なくとも、個人で持っていいような額では無かったので、ある程度残して他は寄付したり、ビフレストのメンバー達のために使おうとカスミは思っている。



「土地があれば、カスミちゃんの好きなことできるよ〜……?」


「う、うーん、魅力的な気もしますけど、私個人では要らないですね……」


「でも、それくらいは貰っとかないと、王族は無礼を働いた相手に詫びもできないのかって、逆に向こうが言われちゃうよ〜……」


「えぇ……」



 カスミの想像以上にことは大事なようで、その後もカスミは何を詫びとして貰うのかをうんうん悩みながら考えるのであった。




 *




 カスミが詫びの品について悩んだりした次の日。


 カスミは王都に来た初日同様、ドレスに着替えて謁見の間にやって来ており、その横にはクリスタとフィオもいた。


 そこには当たり前のように王族が全員揃っていたのだが、初日と違って何だか全員申し訳なさそうな、不安を感じさせるような表情や態度をしていた。



「よく来てくれた、カスミ殿」



 そんな中、王であるダスロウが代表してカスミに声をかけてくる。



「今日呼んだのは、先日我が愚息ディケルトが、カスミ殿に失礼を働いたことに対する謝罪のためだ。 ……ディケルト、前へ」


「……はい」



 ダスロウに呼ばれたディケルトは、王子王女が並ぶ場所から前に出て、カスミの前で片膝を付き、平民にすることは基本的にないであろう最大限の礼の姿勢をとった。



「カスミ様。 俺…… 私は、貴女に対して大変失礼な態度を取りました。 本当にごめんな…… 申し訳ございませんでした」



 まだちょっと勉強中なのか、言葉は少し辿々しくはあるものの、心のこもった謝罪をカスミに対して行った。



「あ、頭をお上げください、ディケルト殿下。 私は気にしておりませんので、今後の王族としての振る舞いを期待しております」



 そんなディケルトにカスミは緊張しながらもそんな言葉を送った。


 やっぱり10歳の子供とはいえ、王族にこうまでして謝られると、カスミの方がちょっと申し訳なくなってしまうので、もういいよーと念じながら、ダスロウの方へちらりと視線を向けた。



「うむ。 ディケルトよ、下がってよい。 カスミ殿、私は王であるが一人の親でもある。 子の仕出かしは親の責。 私からも謝罪を」



 だが、ディケルトからの謝罪が済んだのも束の間、今度はダスロウがカスミに頭を下げてきて、それに合わせて他の王族達も深々と頭を下げてくる。



「お、お気になさらずっ。 私は本当に気にしてませんので、頭を上げてくださいっ……」



 そんな風にされたカスミは、もはや居た堪れなくなってきて、慌てて王族達の頭を上げさせた。



「地面に頭擦り付けるべきじゃない〜……?」



 だが、横にいるフィオがぬけぬけとそんなことを口にする。

 


「カスミ殿がそれを望むなら勿論そうするが」


「しなくていいですからっ」



 土下座も辞さないと言うダスロウだったが、カスミはクワッと目を吊り上げてそれを制した。



「では、謝罪の言葉は以上にしよう。 ただ、もちろん言葉だけでは誠意が伝わらない。 よってカスミ殿が望むものを詫びの品として贈りたいのだが、なにか希望はあるか?」


「本音を言えば、別に何も要らないんですけど…… 貰わないとダメみたいなので、ひとまずなにか食材を貰えればと」


「ふむ、どんなものが良い?」


「うーん、可能なら普通に売っているものではなく、この国の特産品とかが良いですね」


「分かった。 カスミ殿が王都に滞在している間に用意して渡そう。 他には何かあるか?」


「それだけでいいんですけど……」



 カスミ的には美味しい食材が貰えるだけでもありがたいのだが、横にいるクリスタとフィオは納得いってなさそうだった。



「そうしたら…… 土地をいただけますか?」


「うむ、分かった。 街一つ分ほどならすぐに……」


「あ、でも、私が欲しいわけじゃなくて……」


「ふむ?」


「その土地はシクウさんのデラフト商会に使ってもらって、そこに今度発売される調味料を量産できる工場などを作ってもらおうかと」



 実はカスミはここに来る前に、先日訪れたデラフト商会の支店に寄っており、丁度よくそこに居てくれたシクウに「土地がもらえたらあげてもいいですか?」と、話を持ちかけていた。


 いきなりそんなことを言われたシクウは頭に?マークを浮かべていたが、事情を話したらシクウもディケルトが無礼を働いた現場にいたこともあり、すぐに納得してくれた。


 ただ、工場を建てられる程の土地をタダで貰うというのは、商人として認められなかったようで、譲渡は断られた。


 ただ、広い土地なんてものは世界でも有数の商会であるデラフト商会からすればいくらあっても嬉しいものなので、カスミから土地を借りるという形でなら喜んで話を受けると言われた。


 カスミ的には土地の権利などは全くもっていらないので、シクウに権利ごと譲渡する気満々だったのだが。



「それは我が国にも利がある話だが、良いのか?」


「もちろんです」


「分かった。 流通もしやすい土地を用意しよう。 他には何かあるか?」


「もういいですっ」


「現金などは……」


「いらないですっ」



 土地を貰うということだけでも、カスミとしては貰い過ぎだと思っているので、それ以上の詫びの品は断固として拒否した。


 横にいるクリスタとフィオは少し納得いってなさそうだったが、今回の件の当事者であるカスミがもう十分と言っているので、苦笑しながらも、それを尊重することにしたようだ。



「カスミ殿は欲がないな」



 ダスロウも金品や何らかの権利をカスミに渡す気満々だったようだが、断固拒否の姿勢を見せるカスミにこちらも苦笑いを浮かべていた。

 


「私はもう恵まれすぎてますから」


「そうか。 これからも我が国への支援を続けてくれると思っても良いか?」


「もちろんです」


「はは、その言葉を聞けて肩の荷が降りた。 では、引き続きよろしくお願いする」


「はいっ」



 そんなところを落とし所とし、今回の謝罪の場はお開きとなったので、カスミはクリスタとフィオと共に謁見の間を後にするのであった。

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