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#52 王族の食事を改良

 本日、カスミは王城にやって来ていた。


 そこでは今日も今日とて、ミーユイアの誕生日パーティーに出す料理の確認と練習をしたのだが、それは一旦切り上げ、これから王族に普段振る舞っている食事メニューの改良をすることにした。


 それに当たって、先んじて普段出しているメニューをカスミは見せてもらっていたのだが、かなり思うところがあった。


 というのも、どの曜日のメニューもメインは基本何かの肉のステーキかソテー、それにサラダとスープと何かもう一皿、日によってデザートがあるかないかという、まあ変わり映えのしないメニューだったのだ。



「とりあえず、メニューをもっと増やしたいです。 なので、こちらをどうぞ」



 そんなメニューを見て、これは早々に改良が必要だと思ったカスミは、収納ポーチから50枚はあろうかという紙の束を取り出した。



「カスミ殿、これは?」



 その紙の束を見て、料理長のムッダがこれはなにかと尋ねてくる。



「これは今度、デラフト商会と協力して売り出すレシピです。 許可はもらったので、とりあえずこれらを食事のメニューに加えましょう」


「おお……! そんな貴重なもの、よろしいのですか?」


「来月には一般にも売り始めるものなので、大丈夫ですよ」



 今回カスミが持って来たレシピは、醤油などのまだ売られていない調味料を使ったものもちょこちょこ入ってはいるが、大体は今あるものでも作れるものばかりだ。


 なお、マヨネーズやケチャップ、あとはフレンチドレッシングなどの割と簡単に手作りできる調味料に関しては、もう先日までに作り方を教えて作ってもらっている。


 そのおかげで、カスミがスキルで用意しようと思っていた調味料がかなり減ったので、既に誕生日パーティーに使う分の調味料はほとんど用意できている。


 そんな背景もありつつ、今日は早速王族に出す夕食メニューを作ってみることにした。



「それで、メニューを変えるにあたって、メインの料理に魚を追加したいです」


「魚ですか…… 中々こちらの方では食されないので、我々も使う機会がありませんでしたね」


「魚は色々と調理の手段があって、色んな味や食べ方を楽しめますよ。 今日はシンプルに塩焼きですけどね」



 カスミはそう言いつつ、今日のために市場やデラフト商会で仕入れた魚を収納ポーチから取り出し、厨房のテーブルに並べていった。



「今回はこちらの鮭を使います」



 そうして並べられたのは、カスミにとっては馴染み深い鮭の切り身で、見事なオレンジ色をしていて脂も乗っており、非常に美味しそうだった。

 


「綺麗な身色をしてますね」



 あまり魚を扱ってこなかったムッダも、一目でこの鮭が美味しいものだと理解したようだ。

 


「扱いやすくて美味しい王道のお魚ですね。 これに塩を振って、グリルで焼いていきます」



 今日はシンプルに鮭の塩焼きなので、塩を全体に振ったら、少し放置して出た水気を拭き取り、あとはグリルで皮がパリパリになるまで焼けばもう完成だ。



「鮭を焼いている間に、スープとサラダを作りましょう」



 鮭はもう時折様子を見つつの放置でいいので、次にカスミは鍋に水を張り、そこへ乾燥昆布を入れて火にかけ始めた。



「カスミ殿、それはなにをしているのでしょう?」



 海藻を水で煮込むという見たことがない調理を披露するカスミを見て、ムッダは純粋な疑問を投げかけてきた。


 


「これは出汁という食材の旨みを引き出したスープを作ってます。 この出汁は色んな料理に使えますし、出汁にも色々と種類があるんです」 


「スープをさらに別の料理に使うのですか」


「今作ってるメニューは、総じて和食と定義されるものなんですけど、和食において出汁は欠かせないんです」



 やはり日本人のカスミとしては、こちらの世界にも和食の素晴らしさを伝えたい気持ちが大いにあるので、今回は出汁のひき方も丁寧に教えていく。



「沸騰直前になったら、この昆布は取り出して、さらにここへ鰹節を入れます」



 昆布の旨みがしっかり抽出できたら、今度は鰹節を入れて、さらに旨みの強い出汁をひいていく。



「……よし、このくらいですね」



 鰹節を入れてから再び鍋の中身が沸騰し始めたタイミングで火を止め、灰汁を丁寧に取ったら、布巾を被せたざるでしっかりこす。



「これが昆布と鰹節の合わせ出汁ですね。 良ければ少し味見してみますか?」



 カスミがそう聞くと、周りで見ていた王城の料理人達は皆コクコクと首を縦に振ったので、小皿に出汁を少量入れて、味見してもらった。



「おお…… これは、味というより、正しく旨みですな」



 ムッダの言葉通り、しっかりと抽出された昆布と鰹節の旨みが合わさった出汁は、決して強い主張をしているわけではないのに、全く無視できない確かな美味しさがあった。



「そうしたら、スープはこの出汁を存分に味わってもらえるお吸い物を作りましょう」



 出汁の美味しさに感動する王城の料理人達を見て嬉しい気持ちにカスミはなりつつ、出汁を手頃なお椀に注いでいく。


 そしてそこへ、塩と醤油を少し加えて味を整え、野菜を売っていた市場の店で手に入れた三つ葉を真ん中に載せる。



「これで完成です」


「何と。 シンプルですな」


「具材を入れても良いんですけど、最初はこっちの方がインパクトがあるかなって」


「それは間違いない」


「そうしたら、サラダも作っちゃいましょう」



 お吸い物を完成させたカスミは、王城の料理人達にも協力してもらって、大根ときゅうりを細切りにし、それをマヨネーズと少量の出汁で和えたお手軽サラダを作っていった。


 これも王城の料理人達に味見してもらったところ、ものの5分もかからずにできたにしてはあまりにも美味しいそのサラダに、全員が感動の意を示した。


 あとは王城にも先日用意した炊飯器から炊き立てのライスをお椀によそい、お吸い物ときゅうりと大根のサラダを作っている間に焼き上がった鮭の切り身を盛り付ければ、これぞ和食といった感じの夕食が完成した。



「ふむ、見栄えは華やかというより、美しいという言葉が当てはまりますな」


「盛り付けの時に花や木の実、他にも自然由来の飾りがあるとより映えると思います」


「いやぁ、お見それしました。 流石カスミ殿ですな」



 一連の調理や完成した料理を見て、ムッダを始めとした王城の料理人達は、改めてカスミに畏敬の念を抱いた。


 その後もカスミは、他のレシピと合わせて数日分のメニューを提案し、実際に作るのは王城の料理人達に任せて今日のところは拠点へと帰るのであった。




 *




 その日の夜。


 夕食を摂るために王族達は食事スペースに集まったのだが、その前には見慣れない料理がいくつも並べられた。



「ムッダ、この料理は?」



 当然それを疑問に思った王のダスロウが、配膳をした料理長のムッダにそう尋ねる。



「本日、カスミ殿に食事メニューの改良を行っていただきました。 見慣れないものが多いのはそのためです」


「なるほど、そういうことか」



 カスミが考案した料理と聞いて、王族の面々は途端に表情を綻ばせた。


 そして、料理が全て並んだところで、ダスロウが音頭を取り、夕食がスタートした。



「おお…… このメインの魚は素晴らしいな。 身がふっくらとしていて、程よい塩気がたまらない」



 それから早速メインである鮭の塩焼きを口に運んだダスロウから、感嘆の声が漏れた。

 


「そちらのメインに使用されたのは鮭という魚です。 それをぜひ横にあるライスと共に食べてみてください」


「ライスはメイン料理と共に食べる主食でしたね。 ……まぁ、なんて美味しいのでしょう。 鮭の美味しさが、ライスと共に食べることでさらに引き上げられていますわ」



 ムッダの説明を受けた第一王妃のアリレインは、言われた通りに鮭とライスを一緒に口に運んだ。


 すると、少し前までは家畜の餌と思っていたライスが見事に鮭の旨みと塩気とマッチし、改めてライスの偉大さに気付かされるのであった。

 


「このスープ、ほとんど透明ですね? ……んっ! 何でしょうこの美味しさは……!」


「綺麗なスープなのに、しっかりとした味がある…… しかも何だか飲むと安心しますね」



 次に、出汁をふんだんに使ったお吸い物を口に運んだ第二王妃のシャラミラと、第一王子のナタクが、お吸い物のこれまで口にしてきたスープとは別種の美味しさに驚きつつ、その優しい味わいに心を奪われていた。



「このサラダも味と食感がしっかりしていて美味しいですわね」


「これはこの前の料理にも使われていた、マヨネーズという調味料ですよね! 私、この味とっても好きですわ」



 そして、普段の食事では脇役も脇役なサラダだが、今回の大根ときゅうりのシャキシャキとした食感を残しつつ、出汁とマヨネーズでしっかり味付けされたサラダは、これだけでお腹を満たしたいと思わせるくらい第一王女のコレントと第二王女のミーユイアは美味しいと感じた。



「うま…… じゃなくて、どれも美味しいっ……!」



 そんなこれまでとは正しく一線を画す美味しさの今日の夕食を食べた第二王子のディケルトは、改めてカスミの料理を気に入ると共に、こんな素晴らしいものを作ってくれるカスミに、自分は本当に失礼なことをしてしまったんだなと、内心後悔をした。


 カスミに無礼を働いてから、これまで避けてきた勉強にも真面目に取り組むようになったディケルトだが、しっかり礼儀を勉強すればするほど、自分が本当に失礼なことをしてしまったんだなと自覚する日々を送っていた。



(今度は、ちゃんと謝ろう……!)



 そんな冗談抜きで感動してしまうくらい美味しい食事は、ディケルトの心と体を成長させる糧にしっかりなってくれたようで、ディケルトは感謝をしながら出された夕食をライスの一粒も残さず完食し、次にカスミと会ったら誠心誠意謝罪をしようと心に決めるのであった。

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