#49 大司教との遭遇
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神界へ来てからなんだかんだでチェアリィと1時間ほど話していたカスミは、聞きたいことも聞けたため、一旦今日のところは帰ることにした。
前回同様、カスミが神界から地上に戻るに当たって、カスミが祈り始めてから5分ほどしか経っていない時間軸にチェアリィが送ってくれるそうなので、待ってくれているクリスタに関しても問題なしだ。
「じゃあ、また近いうちに来ますね」
「ええ、待ってるわ」
それからカスミがチェアリィと別れの挨拶をして、瞬きをすると、視界が一瞬で切り替わった。
その目の前には大きな女神像の姿があり、地上に戻ってきたことを実感した。
「ああ、なんと素晴らしい……!」
「おい、それ以上近付くな」
ただ、地上に戻ってきたカスミの耳に入ってきたのは、知らない男とクリスタのなんだか剣呑なやり取りだった。
カスミがそのやり取りが行われている背後を振り返ると、そこには聖職者が着るような服を着た、なんだか恍惚とした表情を浮かべている人懐っこそうな顔立ちの青年と、その首根っこを掴んでいるクリスタの姿があった。
「え、えっと?」
「ああ、カスミ、終わったか。 じゃあ行こう」
「ち、ちょーっと待ってください!」
「……っち、面倒な」
カスミが祈り終わったのを確認したクリスタは、首根っこを掴んでいた青年をぺいっと放り捨て、カスミと一緒に大教会をそそくさと出ようとした。
だが、それに青年が待ったをかける。
「貴方様、お名前はなんと!?」
「わ、私ですか? えっと、カスミです」
「カスミ様っ! ああ、素敵なお名前ですね! 流石は神の…… もがっ!?」
何かを言おうとした青年だったが、その口をクリスタが手でガッと塞いだ。
「……おい、それ以上はここで言うな。 人が見ている」
「もがもが……!」
ハイライトの消えた瞳でクリスタがそう言うと、青年は慌ててコクコクと首を縦に振った。
それを確認したクリスタは、用心しながら青年の口元から手を離した。
「ぷはっ! も、申し訳ありません。 興奮してしまっていました」
「はぁ…… 目を付けられる可能性もあると思っていたが、早かったな…… おいお前、どこか静かに話せるとこに案内しろ」
「分かりました!」
カスミからするとよく分からないやり取りをしているクリスタと青年だったが、とりあえず何か内密な話をするそうなので、カスミとクリスタは青年の案内で、大教会の関係者スペースにある一室に通された。
「ここなら外に声は漏れません!」
「えっと、何があったんでしょうか?」
未だにどうしてこうなっているのか分からないカスミは、素直にクリスタにそう尋ねた。
「カスミの祈ってる姿から、こいつ曰く凄まじい神気が放たれていたそうだ」
「神気、ですか?」
「文字通り神の気配です! ああ、思い出すだけでも興奮してしまいます……!」
カスミとしてはそんなもの出している自覚は全く無かったのだが、青年曰く凄いのが出ていたらしい。
「カスミ様、貴女様はもしかして、神の使いなのでしょうか!?」
「は、はい?」
「あんな神気を放つ人は他にいません! 聖国の大聖女様でも、放つ神気はカスミ様と比べてしまうと僅かなものなのです! つまり、カスミ様は神に連なる者で間違いないのかと!」
青年はカスミに捲し立てるようにそう言ってくる。
(う、うーん、関係が無いとも言えないから、否定しずらいなぁ……)
「おい、そんな一方的に喋ってないで、まずは名乗ったらどうだ?」
カスミがどう答えようか悩んでいると、クリスタがひとまずの助け舟を送ってくれた。
「ああ、その通りですね! 私は聖国で大司教の地位を賜っております、イセトという者です」
「ほう…… その若さで大司教か」
イセトの地位を聞いたクリスタが、意外そうな表情を浮かべながらそう呟いた。
カスミも神官の地位についてはあまりよく知らないが、大司教というのが貴族の位で表すなら伯爵かそれ以上くらいの偉さという認識はあった。
「いやぁ、我ながら身に余る地位だとは思っています」
「その神気とやらが見える力と関係があるのか?」
「はい。 私は神聖眼というスキルを持っていまして、神気が見れたり、スキルを使えば相手が嘘を付いているかなども分かります」
「つまり、お前の前では嘘はつけないと」
「スキルを使えばそうなりますが、私は教皇様の許可なしではスキルの使用を禁じられていますので、今は全く分かりません」
どうやら常時発動するタイプのスキルでは無いらしく、クリスタは少し警戒を緩めた。
「ただ! 神聖眼を使っていないのにも関わらず、カスミ様の神気は見えたのです!」
「スキルの残滓でも見えたということか……」
「今もうっすらとカスミ様の体から漂う神気が見えております! ああ、神聖眼を発動したらどれほど素晴らしいものが見えるのか……!」
「……それで、お前はカスミをどうしたいんだ」
事あるごとに陶酔しだすイセトにジトっとした目を向けながら、クリスタがそう尋ねる。
「理想を言うならば、我が聖国にいらしていただき、次期教皇への推薦を……」
「却下だ」
「それはちょっと嫌です……」
イセトの要望は、クリスタだけじゃなくカスミもバッサリと切り捨てた。
「では大丈夫です」
「……あっさりと引き下がるな?」
だが、イセトは要望を切り捨てられたにも関わらず、あっさりと引き下がった。
「カスミ様の意思が何よりも優先されますから。 神に連なる者の歩む道を、一信徒の私が遮るなど、あってはならないことでしょう」
「良くも悪くも聖職者だな、お前は……」
「ですが、理想とは別に、ぜひ教皇様や大聖女様には一度会っていただきたいですね。 きっと喜ばれるでしょうし、カスミ様の希望を話せばそれを尊重してくださいますから」
「……って、言ってるがどうする?」
「変に私のことを広めたりしないなら、聖国? にも行ってみたいですね。 偉い人に会うのは緊張しますけど……」
未だに何度も行っているこの国の王城ですら、毎回入る度に少し緊張するカスミなので、また一国のトップに会うというのは少し気が重い。
ただ、色んな国に行ってみたいのもまた事実なので、イセトには変にカスミのことを拡散しないようにという条件付きでOKを出した。
「ああ、ありがとうございます!」
「あ、でも、今月末まで王都にいる予定なので、早くても来月以降とかになると思います」
「構いません! では、こちらをお渡ししておきます!」
イセトそう言いながら、懐から小さな判子のようなものを取り出し、カスミに渡してきた。
「それは司教以上の者が持つ、聖印というものです。 聖国に来られる準備ができましたら、私の名前宛に手紙を送ってください。 聖印をその手紙を包む便箋の手頃な場所に押してくれれば確実に私の下に届きますし、内容を確認されることもありませんので」
「分かりました」
「もういいか? この後も予定があるんだ」
「もちろんです。 本当に、カスミ様との出会いに感謝を! また会えるのを心より楽しみにしております」
クリスタのちょっとぶっきらぼうな言葉にも、イセトはそんな風に言ってくれ、さらには大教会の前まで見送ってもくれた。
そんなイセトにカスミはぺこりと一礼し、大教会を後にした。
「はぁ、面倒なのに捕まったな」
「クリスタさん、聖職者の方が嫌いなんですか?」
「そう見えたか?」
「はい」
「……実は、前にもチラッと話したと思うが、以前私は無理やり求婚されてな。 その相手が聖国の貴族…… つまり聖職者だったんだ」
「あー、そうだったんですね……」
「イセトもそうだったが、聖職者というのは思い込みが激しくてな…… 本当に面倒だった」
今思い出しても嫌な気分になるのか、クリスタの表情は少しゲンナリとしてきた。
「でも、イセトさんは良い人そうでしたよ」
「まぁ、そうだな。 ただ、聖職者の全員がそうとも限らない。 カスミのことをいいように使おうとする者もいるだろうな」
「それは嫌ですねぇ……」
「だからこそ、聖職者のトップに話をつけられるのは良いことかもしれないな。 この国の王だけじゃなく、聖国にも後ろ盾になってもらうか」
カスミが大事なクリスタは、世界的に信仰されている女神教のトップを味方につけられれば、カスミの安全はより保証されるだろうという結論に至ったようで、ちょっと悪い笑みを浮かべていた。
そんなクリスタにカスミは苦笑しつつ、次の目的地へと歩を進めるのであった。
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