#47 カリーを作ろう
王都の朝市から帰ったカスミは、早速昼食作りに今日買ってきたものを使おうとウキウキしながら厨房に立っていた。
「何作るにゃ?」
そこには暇潰しに手伝いに来たローニャもおり、カスミが収納ポーチから取り出している様々な食材を見て、不思議そうにしていた。
なお、ローニャは昨日カスミが王城へ料理指南に行っている間にカジノに行っていたそうだ。
王都に来た初日にアネッタと討伐依頼をサクッとこなして軍資金は沢山あったそうだが、昨日はちょい負けくらいで終わったとのこと。
なので、まだ軍資金もあるから次は勝つと息巻いていたが、カスミと出会ったおかげでギャンブル欲が割とマシになっているらしく、今日は家でのんびりしていたのだとか。
「なんか色々出してるけど、これ全部使うにゃ?」
「そうですね」
カスミが今厨房のテーブルに並べた食材や調味料だけでも10種類くらいあり、何作るんだろうとローニャは首を傾げていた。
「今日はカレーライスを作ります! ……こっち風に言うとカリーライスですかね?」
そんなローニャに対して、カスミはこれから作る料理を宣言した。
「カリーライス、にゃ?」
「はい。 ……見た目はちょっと最初は受け付けないかもしれないんですけど、味はもう間違いないので、安心してください」
「味が良いならローニャはなんでも食べるにゃー」
食材や料理名を聞いただけでは味の想像がつかなかったローニャは、とりあえずカスミに従って調理を手伝うことにした。
まずは使う野菜の下拵えとして、にんじん、じゃがいもの皮を剥いて一口大にカットし、玉ねぎは薄切り、トマトは細かく刻んでおく。
この作業はローニャに任せ、カスミは先程買ってきたファングウルフという狼の魔物の肉を、気持ち小さめの食べやすいサイズに切って、塩、胡椒、カリーパウダーを振りかけて下味をつけておく。
この肉は肉屋の店主曰く、食感は硬めで噛めば噛むほど旨味が出るタイプの肉と聞いたので、今回はカリーと一緒に煮込んで食べてみることにした。
そんなウルフの肉を切り終えたら、カスミはフライパンに油を引いて、まずは玉ねぎが飴色になるまで炒める。
それが済んだら一旦置いておき、今度は鍋にサラダ油を引いて、おろしたしょうがとにんにくを軽く熱して油に香りが移ったら、カットしたにんじん、じゃがいも、ウルフの肉を加えて火を通していく。
「炒め物にゃ?」
「いえ、ここからですよ」
不思議そうにフライパンと鍋を眺めているローニャを横目に、カスミは鍋の方にフライパンで炒めていた玉ねぎと刻んだトマト、水、コンソメ、そしてローレルを加えて、アクを取りながらしっかりと煮込んでいく。
「なんか葉っぱ入れたけど、美味しいにゃ?」
「この葉っぱは食べないですね。 でも入れると良い風味が出るんです」
見た目は普通にその辺りに落ちていそうな枯れ葉のように見えるローレルだが、これを入れるだけでカリーの風味がかなり良くなる優れものなのだ。
そんなローレルを入れた鍋のアク取りをローニャに任せ、カスミは再びフライパンに油を引き、そこへ薄力粉を入れて、弱火で焦がさないように炒めていく。
その薄力粉が薄茶色になってきたら火を止め、満を持してカレー粉を加えて混ぜ合わせていく。
「茶色いにゃー?」
「私は美味しいって知ってるので、美味しそうに見えるんですけどね」
ローニャからしたら土のように見えるものがしっかり混ざって、カレーベースと呼べるものになったら、ローニャがアク取りをしてくれていた鍋に入れる。
さらに、コクを出すための隠し味に砂糖も少し入れたらしっかり混ぜ、あとは野菜が柔らかくなるまで煮込めばOKだ。
「うーん、見た目は確かにあんまりにゃけど、凄い美味しそうな匂いはするにゃ」
「美味しさを知って貰えばローニャさんも、きっとこれが美味しそうに見えるようになります!」
それからカリーが出来上がるまで、さっぱりとしたドレッシングでいただくグリーンサラダなんかも作っておく。
そして、カスミはきっとビフレストの面々ならカリーを気に入ってくれると半ば確信していたので、ライスはいつも以上に大量に炊いておいた。
そんな作業をしていたら、鍋の中のカリーもいい感じに煮詰まってきたので、カスミは軽く味見をしてみた。
すると、口内にはスパイスの効いたパンチのある風味と味、さらに沢山の野菜やウルフの肉から滲み出た旨味が広がり、目分量で作ったのだが、これ以上手を加える必要はなさそうだった。
「これ、どうやって食べるにゃ? カリーライスっていうくらいだから、ライスと食べるにゃ?」
「そうですね。 こんな感じで、ライスと一緒のお皿に盛り付けます」
それからカスミは人数分の大きな皿にカリーライスを盛り付け、食事テーブルに運んでいった。
「「「「………………」」」」
そんなカリーライスとグリーンサラダを運び終える頃には、他のメンバー達も集まってきていたのだが、ローニャ以外の4人は目の前に置かれた茶色いものがライスにかかっている皿を見て、動きを止めていた。
「こちらはカリーライスです」
「カスミはいつも見たことないものを作るが、今日のは中々見た目がアレだな……」
「お、美味しいですよっ」
全員の思っていることを代弁したクリスタに対して、カスミはこれ美味しいよ! と、必死にアピールした。
「まぁ、確かに匂いは美味しそうだな。 とりあえず、食べてみよう」
そんなカスミのアピールと、日々のカスミの料理の美味しさから来る信頼感が、見た目の悪さに打ち勝ったようで、ビフレストの面々はカリーライスをスプーンで掬って、まずは一口食べてみた。
「「「「「んんっ!?」」」」」
すると、今度はローニャも含めた5人が一斉に驚いたような声を上げた。
「お、美味しいにゃ! 何味って言えばいいか分からないけど、美味しいにゃ!」
ローニャが叫んだ通り、大量のスパイス、野菜、肉が一つになったカリーライスは、これまで食べてきた料理とは味のベクトルが違い、何にも例えられない美味しさがそこにはあった。
「私の住んでたところでは、カレー…… ああ、こっち風だとカリー味って言われるものがありましたね」
それは地球でも同じことで、カレーはもうカレー味という一つのジャンルとして確立されていたので、こっちの世界でもカリー味と表現するのが正しいのだろう。
「一口一口満足感あるのに、どんどん次が欲しくなるね!」
幸せそうにカレーを頬張りながらそう言うレネ。
その言葉通り、カリーはスパイスによる食欲増進効果が凄まじく、全員全く手を止めずにカリーライスをどんどん口に運んでいく。
「うし、おかわり行ってくる」
「わぁ、アネッタさん早いですね」
その結果、アネッタがもうあっという間に食べ終わり、早くも2杯目をおかわりしに行った。
「美味しいのは間違いないけど、ちょっと舌がピリピリするね〜……」
「確かにそれはそうですね」
そんな美味しいカレーだったが、味見段階ではちょうどいい辛さかなと思っていたカスミも何口か食べていると、少し口の中が辛くなってきた。
カスミは前世ではこのくらいの辛さは余裕だったのだが、どうやら舌が少し子供の体に引っ張られているらしい。
それはフィオも同様だったようだが、それでもはふはふ言いながら美味しそうにカレーを頬張ってくれていた。
「あ、そうしたらっ」
そんなフィオがおかわりをしに行こうとしたタイミングで、カスミは一度席を立ち、鍋に入ったカリーを別鍋に三分の一ほど移し、移した方のカリーに少しはちみつを加えた。
「フィオさん、良ければこちらをどうぞ」
「なにが違うの〜……?」
「はちみつを入れたので、少し甘口になったと思います」
「お〜、ありがとう〜……」
礼を言うフィオと一緒に、カスミも少しだけはちみつを入れた方のカリーをおかわりして口に運んでみた。
すると、一杯目のものよりも確実に甘口になっていて、しかもはちみつのおかげでいい感じにコクも増しており、これはこれでとても美味しかった。
「ん〜、こっちの方が食べやすくていいね〜……」
「カリーは甘口か辛口かでかなり味わいが変わりますし、具材によってもたくさん種類が作れるんですよ」
「へ〜、面白いね〜……」
今回作ったカリーは一番シンプルなものだが、カリーはカスミがパッと思いついたものだけでも10種類はあるので、次カリーを作る時はまた違ったものを作ろうとカスミは思った。
そんなカリーライスは、余ったら何か別の料理に使おうと思っていたのだが、見事に全て食べ尽くされ、ぜひまた作って欲しいと全員からリクエストされたカスミなのであった。
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