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#40 誕生日パーティーについて

「改めてカスミ殿、素晴らしい料理をありがとう」


「喜んでもらえたのなら良かったですっ」



 試食会も終わり、再び玉座へと戻ったダスロウに、カスミは改めて労いの言葉をかけられた。



「そうしたら、早速明日にでも我が王城の料理人達とパーティーに出す料理の打ち合わせと、料理指南をお願いしたい。 料理人達にはこちらから話を通しておく」


「分かりました」


「もし負担でないようなら、パーティーの料理だけでなく、普段の食事のメニューについても彼らに教えてやって欲しい」


「えっと、余裕がありそうでしたらっ」


「うむ、それでよい」



 カスミの回答に満足したのか、ダスロウは笑顔で頷いてくれた。



「それと、シクウ殿から、カスミ殿を守るための後ろ盾になって欲しいとの話も受けている。 今日の謁見はそれに値するかを確かめるのが目的でもあったのだが…… むしろこちらから申し出たい程だ」


「あ、ありがとうございますっ」



 そして、王族に後ろ盾になってもらうという件も、ダスロウ自ら承諾してくれた。



「それに際して、何か希望などはあるか?」


「そこは私が」



 と、ここでクリスタが話に入ってきた。



「こちらからは、貴族や商人がカスミに干渉する事を防いでいただくことと、カスミの自由を保障することがまず絶対条件です。 あと、今回のミーユイア第二王女殿下の誕生日パーティーの料理を担当するといったようなことは、そう頻繁には頼まないようにしていただきたい」


「承知した。 貴族の者達は恐らく、情報統制をしてもいずれカスミ殿には辿り着くだろうから、あらかじめ釘を刺しておこう」


「助かります。 代わりと言ってはなんですが、カスミの料理を流行らせたのがこの国の王族であるという事実は広めていただいて構いません」


「うむ、それなら十分こちらとしても利がある」



 クリスタとダスロウの話を聞いて、後ろ盾になってもらうのにその程度の見返りでいいのかなとカスミは思ったが、カスミが思っている以上に、流行りの発祥というネームバリューはこの世界において重要なのだ。



「カスミちゃんをちゃんと守ってね〜……」



 そんな後ろ盾になってもらう話をしている中、フィオがそんなことをダスロウに向けて言い放った。

 


「もちろんです…… おっと、違うな。 はは、フィオ殿に敬語を使う癖がまだ抜けない」


「ちゃんとカスミちゃんを守ってくれたら、私からも何かしてあげる〜……」


「おお、それは心強い」


(今、フィオさん、陛下に敬語使われてたよね……? どういう関係なんだろう)



 威厳を感じさせるこの国の王であるダスロウに、いつもと変わらない調子で話をするフィオに対してカスミは疑問を抱いたが、ここで聞くことはできないので、その疑問は一旦胸にしまっておいた。



「では、細かいことはまた後日正式に決めよう。 カスミ殿はなにか他に要望などはあるか?」


「えっと…… あ、そうしたら、ミーユイア様の好きな食べ物などをお聞きしたいです」


「分かった。 ではこの後、ミーユイアはカスミ殿と誕生日パーティーについて話をするように」


「分かりましたわ!」



 気合い十分といった感じでミーユイアがそう答えた。

 


「それでは、この場はこれでお開きにしよう」



 そうして、カスミにとっては長いようであっという間だった謁見が終了した。




 *




 謁見が終わったカスミは、王城内の談話スペースであるサロンに移動し、そこでミーユイアとアリレインと対面していた。


 あれから少し話を聞いたのだが、どうやらミーユイアの誕生日パーティーは、主役であるミーユイアが直々に段取りや会場のセッティングなどを決めるそうだ。


 12歳というのは貴族が一人前として認められる一つの節目であり、その誕生日パーティーを自ら手掛ける事が、代々王族が継承してきた一人前を迎える上でのしきたりのようなものなんだとか。


 それを聞いたカスミは、自分では絶対にできないしやりたくないなと正直に思ったが、ミーユイアはやる気に満ち溢れていて、素直に尊敬した。


 ちなみにアリレインは、ミーユイアが分からない事があった場合にすぐ教えるための監督役のような立場でここにおり、基本は口出しはしないとのこと。



「そうしたら、料理についてですが…… 主に先程出したようなフィンガーフードと、フォークやスプーンで気軽に食べられるようなものを用意するつもりです」


「とても良いと思います!」



 早速カスミがパーティーに出す料理について話すと、ミーユイアは可愛らしい笑顔を浮かべながら賛同してくれた。

 


「ちなみに、こういったパーティーでは大体どのくらいの種類の料理が出るものなのでしょう?」


「大体、メインのお肉料理と、スープにサラダ、あとはデザートといったところなので、多くて5〜6種類くらいでしょうか」


「えっ、そんなに少ないんですか?」


「カスミ様はどのくらい用意するおつもりでしたの?」


「今考えているところだと、フィンガーフードだけで10種類くらいですかね……? 他にも少しガッツリとしたものを何種類かと、デザートにメインのケーキと小さめのものを2〜3種類くらい作っても良いかなって思ってたんですけど……」


「まぁ! そんなにバリエーションがあるのですか!」



 カスミ的にはこれでもまだパーティーには物足りないかなと思っていたくらいだったのだが、今考えているものだけでも十分なようだ。


 結局、あんまり種類を増やしすぎても、作り手達の負担が大きいし、満腹で食べたくても食べられないといったことが起きる可能性もあるので、今考えているメイン料理とデザートの合わせて15種類くらいのメニューを用意する事に決まった。



「盛り付け方やお皿などはカスミ様に任せても大丈夫ですか?」


「はい。 王城の料理人の方々とそこは相談しながら決めようと思います」


「ああ、とっても楽しみですわ。 主催する立場である以上、試食するべきかもしれませんが、今回はそれはせずにおこうと思います」


「確かに、主役であるミーユイアにこそパーティーを楽しんで欲しいですから、代わりに私が試食はしておきましょう」



 横で話を聞いていたアリレインが、しょうがないなといった感じでそう口にする。

 


「あらお母様? もっともらしい理由をつけてますが、単にカスミ様の料理が食べたいだけでは?」


「……そんな事ありませんわ? 監督役として、パーティーに出される食事をチェックするのは当然の責務です」



 悪戯そうに笑いながらそう指摘するミーユイアに、アリレインは目を逸らしながらしれっとそれっぽいことを口にした。



(王族の皆さん、仲良いなぁ)



 カスミの中のイメージでは、貴族や王族は家族であっても殺伐としているようなイメージがあったのだが、この国の王族はそんなこともないらしい。


 


「あ、それと、ミーユイア様は何か好きな果物なんかはありますか?」


「果物ですの?」


「はい。 ケーキやデザート作りの参考にしたくて」


「でしたら、私はこの国の北部が特産のベリーが大好きですわ!」


「ベリーですね、分かりました」



 そうしてミーユイアの好みも聞け、気付けば1時間近く打ち合わせしていたこともあり、今日のところはこれで解散しようかという空気になってきた。



「あの、カスミ様?」


「はい?」



 そんなタイミングで、なんだか改まった様子でミーユイアがカスミに声をかけてきた。



「良ければ私と…… お友達になって欲しいですのっ」


「えっ、お友達、ですか?」


「その…… あんまり同年代の女の子と話す機会もなくて……」



 王族ともなると、貴族ですら容易に近付くことはできない存在なので、どうしても孤立してしまいがちになるのだとか。



「私は普通の平民ですので、ミーユイア様には相応しくないかも……」


「だ、だめですの……?」


「うっ……!?」


(お、お姫様の涙目上目遣い、可愛いぃ……! 眩しいぃ……!)



 流石に身分の差があるので断ろうかと思ったカスミだったが、純真無垢なお姫様の無意識な可愛らしくあざとい仕草に、中身30歳のカスミは一撃でノックアウトされた。



「わ、分かりました…… 私なんかでよろしければ、お友達になりましょうっ」


「わぁっ、ありがとうございます!」



 こうして、カスミはお姫様と友達になることが決まってしまった。


 カスミ的にはやっぱり恐れ多くはあるのだが、ミーユイアが本当に嬉しそうな笑顔を浮かべているので、同年代のお友達としてこれから頑張ろうと内心決意するのであった。

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