#39 王族との試食会
カスミが用意してきた料理が玉座の間に運ばれてくると、ダスロウを始めとした王族の者達が、用意された簡易テーブルを囲むように集まってきた。
「まぁ、これが食べ物ですの? 可愛らしいですわ!」
まずテーブルに並べられた料理を見て、そう感想を漏らしたのは、それらの料理が出されることになるかもしれない誕生日パーティーの主役である、第二王女のミーユイアだった。
その言葉通り、テーブルに並べられたのは、どれも指で摘めるくらいのサイズ感をした、いわゆるフィンガーフードと呼ばれるような料理達で、見た目がとても華やかだった。
「一つずつ説明していきますね。 まず、こちらはベーコンとズッキーニのピンチョスになります。 ピンチョスというのは、小さく切ったパンの上に野菜やお肉などを乗せて食べる料理ですが、今回はパンは使っておりません」
まず最初に紹介したのは、炒めた厚切りベーコンを同じく炒めたズッキーニで挟み、塩胡椒を振ったシンプルなフィンガーフード。
「では、食べてみよう。 ……ほう、これは良い! ズッキーニの瑞々しい食感と旨みに、ベーコンの塩気がとても合っているな」
最初にベーコンとズッキーニのピンチョスを口にしたダスロウがそう感想を漏らすと、他の王族達もこぞってそれを口に運んでいった。
すると、全員が美味しそうにそれを頬張ってくれ、掴みとしては成功だなと、カスミも一安心した。
というのも、このベーコンとズッキーニのピンチョスは、フィンガーフードというものを知ってもらうべく作ったのであり、カスミの調味料や特別な食材などは使っていないのだ。
なので、ここからが本番である。
「次はこちらですね。 一口ハンバーガーになります」
次にカスミが説明を始めた皿には、地球ではお馴染みのハンバーガーを一口サイズにして、楊枝に刺したものが並べられていた。
「んー! これ美味い! ……あっ、美味しいですぞ?」
それを食べて真っ先に声を上げたのは、王族の中では最年少にあたるディケルトだった。
やはりハンバーガーは子供ウケが良い料理なので、ディケルトの口にはとても合ったようだ。
再びアリレインから、粗野っぽい言葉遣いを咎める鋭い視線が飛んできて、慌てて感想を言い直したりしていたが。
「この不思議な酸味と甘味はなんだろう?」
「こちらにはケチャップという、トマトをベースにした調味料を使ってるんです」
そんなハンバーガーに使われている、肉やチーズ、野菜からは出ない味に気付いた第一王子のナタクの呟きに、カスミは丁寧にそう答えた。
やはり王族からしても、地球産の調味料は未知の味のようだ。
「それで、3つ目なのですが、これはもし忌避感があったら食べなくても大丈夫ですっ」
「これはなんでしょうか?」
「えっと、ライスを使った一口おにぎりですね」
第二王妃のシャラミラの問いかけに、カスミはちょっと不安になりつつもそう答えた。
というのも、この世界ではライスは家畜の餌として扱われているので、王族に出すものとしては相応しくないかもしれないのだ。
だが、カスミとしてはこの世界にライスの魅力が広がって欲しいし、ミーユイアの誕生日パーティーにもライスを使った料理を出したいと思っている。
なので、勇気を出して焼いたマグロを解してツナ状にしたものをマヨネーズで和え、それを中に詰めた小さな丸いツナマヨおにぎりを用意させてもらった。
「ライスですか、どれどれ…… あら、とっても美味しいですわ」
ただ、そんなカスミの不安を知ってか知らずか、シャラミラはなんの躊躇いもなく楊枝に刺されたおにぎりを口に運んでいった。
「もちもちとした食感に、中に入っているのは、魚の解し身でしょうか?」
「あっ、えっと、焼いたマグロを解して、マヨネーズという調味料で和えたものを入れてますっ」
「とっても美味しいですわ、カスミ様」
「シャラ、貴女は相変わらず恐れを知りませんね」
ツナマヨおにぎりの感想を述べながら、ふんわりとカスミに微笑むシャラミラを愛称で呼びながら、アリレインがそう軽くツッコミを入れた。
「だって、カスミ様の料理が美味しいのは、先の二品で分かっていましたし」
「まぁ、それはそうですけれども」
「レインも食べてみてくださいな」
「分かりました。 ……ん、確かにこれは美味しいですね……! 家畜の餌とされていたライスがこんなにも美味しいものだったとは……」
シャラミラに勧められたアリレインもおにぎりを口に運んでくれ、その美味しさに驚きと称賛が入り混じったような声を上げた。
それに続いてツナマヨおにぎりを口に運んだ他の王族達…… 特に王子王女達にツナマヨおにぎりはかなり好評で、ディケルトなんかは特に目を輝かせていた。
やっぱり子供の舌にツナマヨはかなり刺さるようだ。
「そうしたら、最後はこちらですね」
ここまでの3品だけでも既に王族達はカスミの料理の虜になっていたが、カスミは4品目の紹介に移った。
「こちらは生ハムとメロンのカナッペになります」
「生ハムとメロン、ですか?」
果物と生ハムという組み合わせを聞いたコレントが驚きの声を上げた。
というのも、こちらの世界は果物は果物で食べるというのが当たり前で、加工品ですらあまり無いのが現実なのだ。
それにも関わらず、目の前の皿には、生ハムに巻かれたメロンが何かの生地の上に乗っている状態で置かれていて、あまり感情を表に出さないようにする訓練をしている王族の面々でも、少し面食らってしまっていた。
「この下の生地はクラッカーというサクサクした食感の生地で、その上に生ハムメロンを固定するためのクリームチーズが塗られています」
「クリームチーズ?」
「名前の通り、クリーム状のチーズですね」
コレントが疑問に思うのも無理はなく、この世界にクリームチーズというものは無い。
普通のチーズはあるものの、大体がスライスしたり削ったりしてトーストに乗せるか酒のアテに使われるくらいで、そこまで人気のない食材だそう。
そんな生ハムメロンだけでも不思議なのに、見たことのないチーズまで使われていると聞かされ、全く味の想像がつかない王族の面々だったが、見た目はかなり華やかで美味しそうに見えることは間違い無かったので、皆で一斉に口に運んでいった。
「おお、これは…… 美味だな。 メロンの甘みと生ハムの塩気が絶妙に噛み合っていて、まろやかなチーズとサクサクとした生地がまた良いアクセントになっている」
その結果、王族の者達が思ったことをまとめたような感想をダスロウが述べてくれた。
他の王族達も、果物と肉という組み合わせが織りなす新感覚の美味しさに感心しつつ、なるべく口内で長く楽しもうとじっくり噛んで味わっていく。
「カスミ殿、其方の作る料理は素晴らしいな。 シクウ殿も絶賛していたが、想像以上だった」
「そう言ってもらえて光栄ですっ」
それから全てを食べ終えたダスロウが、カスミに最上級の賛辞を送ってくれ、カスミとしては肩の荷が降りた気分になった。
「ひいては、ミーユイアの誕生日パーティーの件についても、私はぜひカスミ殿に任せたいと思う。 ミーユイアはどうだ?」
「もちろん、カスミ様にお願いしたいです! 今からもう楽しみで仕方ありません!」
当の誕生日パーティーの主役であるミーユイアにダスロウが担当はカスミでいいか尋ねると、ミーユイアは食い気味に担当はカスミでいいと告げてきた。
「ありがとうございます。 精一杯、努めさせていただきますね」
こうして、カスミは正式にミーユイアの誕生日パーティーに出す料理を任されることになったのであった。
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