#38 王族との謁見
「ふわぁ……!」
そんな間の抜けた声を上げているのは、乗っていた馬車から降りたカスミだった。
現在、カスミの眼前には、見上げるだけでは全貌が見えないくらい大きな城と、美しく整えられた庭園が広がっていた。
(地球のテーマパークとかにある城とかより、全然迫力があるなぁ……!)
カスミがそう思うのも無理はなく、前世で見たことある城は、大体が遺産として残されていたり、テーマパークで客を喜ばせるための華やかな装飾がなされているものが全てで、実際に目の前で使われている城の姿を見ると、何だか城全体が生き生きしているように見えた。
そんな城に夢中になっているカスミの後ろでは、クリスタ、フィオ、コレントが微笑ましそうにその姿を見ており、特にコレントは自分が住んでいる城に感動してもらえるのは、とても嬉しく思っていた。
「それでは、中に参りましょう」
それからカスミの興奮が少し落ち着いてきたタイミングで、コレントの案内の下、カスミ達は城の中へと入っていった。
城の中は、高価そうな調度品がいたるところに置いてあったり、人が通る場所のほとんどに絨毯が敷かれていたりと、何だか歩いているだけで身が引き締まってしまうような気がする空間になっていた。
「では、こちらへどうぞ」
そんな空間をコレントの案内で進んで行くと、広めの部屋にまずは通された。
その部屋には、沢山のメイドがスタンバイしており、その背後には大量のドレスや装飾品が並べられてもいた。
そんな見た事のない豪華な光景に、カスミは目を白黒させてしまう。
「こちらでお着替えを済ませた後、謁見となります。 準備はゆっくりで構いませんので、皆さん頼みましたよ」
「「「はい、コレント王女殿下」」」
コレントの言葉にメイド達は美しい礼をしながらそう返すと、早速カスミ達に似合いそうなドレスの選定を始めた。
「はぁ…… これがめんどくさいから、謁見したくないの〜……」
テキパキとメジャーでカスミ達の体を測るメイド達を横目に、フィオがため息を吐きながらそう呟く。
「私はここで待ってちゃだめ〜……?」
「ここまで来たんだから、行くべきだろう。 それに、向こうはお前にも会いたいと思ってるんじゃないか?」
「私は別に〜……」
そんな会話をするフィオとクリスタにちょっと疑問を持ちつつ、カスミはメイドにされるがままドレスに着替えさせてもらった。
どうやらメイド達も、小さくて可愛らしく、こちらの世界では珍しい黒髪黒目の少女であるカスミを着飾るのは楽しいようで、あーでもないこーでもないと議論したりしていたが、最終的にはライトグリーン色の裾が広がっているタイプの可愛いドレスを着ることになった。
(わぁ、ドレスなのに凄い着心地良い。 きっと高いんだろうなぁ……)
肌に触れるだけで分かるドレスの素材の良さに、カスミは改めて身が引き締まる思いだった。
そして、カスミの横にいるクリスタは、体のラインが出るタイトな群青色のドレスを、フィオは可愛めのデザインをした薄い黄色のロングドレスを着させられていた。
2人とも紛うことなき美女、美少女なので、その姿は同性であるカスミをも魅了してしまうくらい美しく、可愛らしかった。
「クリスタさん、フィオさん、とっても綺麗です……!」
「ふふ、ありがとう。 カスミもすごく可愛いよ」
「ん、カスミちゃんが一番可愛い〜……」
「えへへ…… ありがとうございますっ」
そんな風にカスミ達がお互いのドレス姿を褒め合ったりしていると、着替え終わったことを伝えに行ったメイドが戻ってきて、それからカスミ達は謁見の間へと案内された。
程なくして辿り着いた謁見の間には、まず大きな両開きの扉があって、そこを守るように立っていた鎧姿の騎士の人達が、ギギギッと重厚な音を立てながらその扉を開けてくれた。
そして「そのまま王の前までお進みください」と言われたので、カスミは前を歩くクリスタに付いて行って、地面に敷かれた赤い絨毯を進み、一番奥にある玉座の前まで辿り着いた。
事前に膝とかついた方がいいのかとカスミはクリスタとフィオに聞いたのだが、家臣ではないので恭しい礼はする必要がないとのこと。
だが、目の前の玉座に座る男性や、その両隣の椅子に座る女性達、そしてさらにその横に立っている4人の少年少女達は全員が高貴なオーラを放っており、自然と頭を下げてしまうカスミだった。
「よく来てくれた」
そんなカスミ達に、玉座に座る見た目は30代くらいに見えなくもない、王冠を被った威厳のある男性が声をかけてきた。
「私はこの国の王、ダスロウ・モノ・ナステリアだ」
「冒険者パーティー、ビフレストのリーダー、クリスタでございます」
「ビフレストのメンバー、フィオ〜……」
「お、同じくメンバーのカスミですっ」
クリスタとフィオの名乗りに続いて、カスミもそう名乗りを上げた。
「では、他の者も簡単に挨拶を」
「第一王妃、アリレイン・モナ・ミルサントですわ」
「第二王妃、シャラミラ・モナ・ミルサントと申します」
カスミ達の名乗りに頷いたダスロウは、横にいる王族達にそう声をかけた。
すると、まずは第一、第二王妃のアリレインとシャラミラが手短に名乗った。
アリレインは切れ長の目元に銀髪のロングヘアをした、仕事ができそうな20代後半くらいの見た目をした綺麗な女性で、シャラミラはぱっちりとした目元と柔らかい笑みが特徴的な、見た目は20代前半くらいのこちらも綺麗な女性だった。
2人とも誰が見ても絶世の美女と言うであろう美しい風貌をしている。
「第一王子のナタク・モノ・ナステリアです」
「第一王女、コレント・モナ・ナステリアですわ」
その次に名乗りを挙げたのは、温和そうな銀髪イケメンで、10代後半くらいの第一王子であるナタクと、先程案内をしてもらったコレント。
「第二王女のミーユイア・モナ・ミルサントです」
「俺はディケルトだ!」
そして、今回カスミが担当する予定の誕生日パーティーの主役である、少し青みがかった銀髪をふんわりとウェーブさせた髪型をしている、可愛らしいお姫様であるミーユイアと、元気という言葉を絵に描いたような、見た目は10歳前後くらいの第二王子、ディケルトが挨拶をし、ひとまずここにいる者達の自己紹介は終わった。
ちなみに、ディケルトは第一王妃のアリレインから鋭い目線を飛ばされ「あ、第二王子だ! よろしくな…… あー、よろしくお願いします!」と、挨拶をやり直していた。
そんなディケルトを見て、王族なのに結構わんぱくな少年なんだなと、カスミはちょっと意外な気持ちになり、少し緊張が解れた。
「さて、早速本題だが、カスミ殿に我が娘であるミーユイアの誕生日パーティーに出す食事を任せるという話が出ている。 これは王家とも関わりの深いデラフト商会のシクウ殿からの推薦だ」
「はい、存じておりますっ」
「それで、カスミ殿の料理はあのシクウ殿が、この世のものとは思えない程に美味だと言うのだ。 これだけでも十分信頼には値するが、貴族や王族にとって12歳の誕生日というのは特別でな。 そんな大切な誕生日を迎えるパーティーで出す料理を任せる料理人を、外部の者に任せるというのは慎重にならざるを得ない」
「その通りだと思いますっ」
ダスロウの言葉に、カスミは緊張しつつもしっかりと返事をする。
「ですので、軽く食べられるものをご用意させていただきましたっ。 そちらを食べてみて、ご判断していただければと思いますっ」
「うむ、そうさせてもらおう」
カスミの提案をダスロウが承諾したかと思うと、どこからともなくメイドや執事の者達が現れ、料理を乗せたワゴンを運んできた。
そのワゴンの上の皿には、先程ドレスに着替えた際に、メイドの人達に渡しておいたカスミの料理が載っていた。
王族が客人から出される料理を食べるとなると、毒や危険物が入っていないかだったり、出すに値するものかを確認する必要があり、その料理がちゃんとここに運ばれてきたということは、毒味した者からもOKが出たということだろう。
「ほう、これは……」
「今回は4品程用意させていただきました」
それから持ってこられた料理を確かめるべく、王家の者達とカスミ達は、メイドと執事が用意した簡易テーブルの周りに集まるのであった。
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