#36 王都へ!
「忘れ物は無い〜……?」
「はいっ」
本日、カスミはビフレストの面々と共に、王都へと向かう。
昨日遠出のために必要なものを色々買ったりしたので、準備は万端だ。
「まぁ、王都には大体なんでもあるから、忘れ物あっても向こうで買えば良いよね〜……」
「それもそうですし、手ぶらなのであんまり遠出する感覚無いですね……」
フィオにカスミが返した言葉の通り、全員荷物は何も持っておらず、それらは全て各自の収納袋や魔法でしまってある。
そして、カスミに関しても、腰に付けたポーチに収納袋と同じ機能が付いていて、そこに必要なものは全部入っている。
収納ポーチとでも呼ぶべきそれは、丸くて可愛らしいデザインをしており、今回の遠出のためにレネがポーチを作り、アネッタとローニャが以前強い魔物を倒した時に手に入れた高純度の魔石を媒介に、クリスタが発動させた空間魔法をフィオが付与してくれた、世界に一つだけのポーチだ。
しかも、このポーチはカスミの魔力を感じないと開かない仕組みが付いており、さらにカスミから一定距離離れると、パーティーハウスに転送されるという、完璧な防犯機能も付いている。
普通の収納機能が付いた収納袋ですら、普通の冒険者じゃ手が届かないくらいの値段がするそうなので、このポーチの値段は果たしてどれくらいになるのかは分からないが、自分のために作ってくれたものなので、カスミはありがたく受け取り、大切に使わせてもらうことにした。
もちろん、そんな貴重で素晴らしいものをくれたビフレストの面々には、これまで以上に張り切って恩返しをしていくつもりである。
「じゃあ、王都に飛ぶよ〜…… 皆んな集合〜……」
忘れ物の確認も終えたので、転移魔法を使えるフィオの周りに全員が集まった。
「ん〜……」
「わっ、フィオさん?」
そんな中、フィオはカスミのことを後ろから抱きしめていく。
「はぐれないようにしないとね〜……」
「あ、ありがとうございます?」
「別に触れてなくても大丈夫だろ」
「触れてた方が確実〜…… カスミちゃん以外は別の場所に飛んでも戻って来れるし〜……」
「失敗なんてしないだろ……」
アネッタの言う通り、フィオが既に使える魔法の発動をミスることはない。
つまり、単にカスミと触れ合いたかっただけである。
「じゃあいくよー…… 『テレポート』〜……」
そんなフィオが少し瞑目し魔力を高め、転移魔法を発動させると、カスミの視界は一瞬光に包まれ、次に視界が開けた頃には、辺りの景色は見た事ないものに変わっていた。
「王都から1kmくらいの街道に到着〜……」
そこは背の低い草原地帯の中にある、石畳で整備された街道の上。
「あっちに王都見えるよ〜……」
「わぁ……! 大きな都市ですねっ」
フィオの指す方向に目を向けると、カスミ達が住んでいるサミアンの街のものよりも高い外壁に囲まれた都市が見えた。
「あれがナステリア王国の王都、レヤイースだ」
「この世界でもトップクラスに大きな都市だね!」
クリスタとレネがそう王都レヤイースについて教えてくれた。
その後もビフレストの面々に王都について色々と聞きながら、カスミは王都に向かって歩き始めた。
そうしていると、少しずつ王都は近付いてきて、入口らしき大きな門とそこに並ぶ沢山の馬車が見えてきた。
「招待とかされた人じゃないと、王都に入るのは結構時間かかるんだよ!」
レネがそう教えてくれる。
「厳しいんですね」
「まぁ、王族とか貴族が沢山住む場所だからねー。 怪しい人は入れないよ!」
(そこまでチェックが厳しいなら、割と治安は良いのかな? まぁ、貴族の人達が治安を乱したりしないとも言えないらしいけど……)
カスミは王都に来るにあたって、ビフレストの面々には前もって色々と教えてもらったのだが、その中に貴族についての話もあった。
皆が皆そうとは言えないが、貴族はどこか平民を見下している節があるそうで、中には平民に対して横暴な態度を取る貴族もいるらしい。
かくいうクリスタも、過去に貴族に言い寄られて無理やり結婚させられそうになった事があるそうだ。
それをどうやって解決したのか聞いてみたのだが、曖昧に笑うのみで詳しくは教えてくれなかった。
ただ、それからそういう話は一切なくなったようなので、割と刺激の強い解決策を取ったのだとカスミは予想していた。
なので、カスミも黒髪黒目というこの世界では珍しい見た目をしている事から、貴族や王都に紛れ込んだ悪い者に目をつけられる可能性はあるので、王都でもビフレストの面々とは離れないようにという事になった。
(ちょっと不安もあるけど、楽しめるといいな)
そんな風にカスミが思っている間に、一行は王都の門まで辿り着いた。
そこでは並んでいる馬車の横を通り抜け、紹介状などを持っている者専用の入口に向かう。
「ここは招待者専用入口です。 何か紹介状のようなものはありますか?」
「ああ」
そこには鎧を着込んだ門番の人と、受付カウンターに座る物腰柔らかな女性がおり、クリスタは受付の女性に、先日シクウに渡された紹介状を見せた。
「拝見致します。 あっ…… こ、これは、王家の……! しかも、ビフレストって、あの……」
その紹介状は、王家の代わりにシクウが届けたもので、王家の紋章が描かれていた。
さらに紹介状に書いてあるビフレストの文字を見て、受付の女性は先程よりもさらに恐縮したような態度を取るようになった。
どうやらビフレストの名前は王都にも轟いているらしい。
「遥々王都へようこそ、ビフレストの皆様。 紹介状の方、確認させていただきましたので、どうぞお通りください」
紹介状を恭しくクリスタに返しながら受付の女性がそう言ってくれたので、カスミ達一行は門を抜け、王都の中へと足を踏み入れていった。
そこでまず目に飛び込んできたのは、かなり横幅の広い大きな通りで、左右には綺麗なレストランや服屋、宝石店などが並んでおり、サミアンの街と比べると都会感がかなり強かった。
「着いたらまずどうするんだっけにゃ?」
「ひとまず拠点となる家の確認をして、それが済んだらカスミと王城に行くが…… 一応私ともう一人欲しいな」
ローニャの質問にクリスタがそう答えると、他のメンバー達は王城には行きたくないようで、目を逸らした。
一応、ビフレストの面々は、全員この国の王とは面識があるし、王城にも何度か行ったことがあるのだが、やっぱりそういう格式が高い場所には行きたくないらしい。
かくいうカスミも、必要だから今回行くだけで、進んで王城に入りたいかと言われたらそんな事はない。
「はぁ…… ならじゃんけんしろ」
「「「「さいしょはぐー!」」」」
それから仁義なきじゃんけん大会がカスミとクリスタを除いた四人で行われた。
その結果、
「むぅ〜…… 面倒くさい〜……」
負けたのはフィオで、今回の王城訪問はカスミとクリスタとフィオで行く事になった。
「まぁ、カスミはこちらに滞在中、王城に何度か行くだろうから、結局順番で全員行く事になるだろうがな」
そうクリスタが言うと、じゃんけんに勝った3人も微妙そうな表情を浮かべた。
「フィオさん、本当に嫌だったら大丈夫ですよ……?」
「嫌ではあるけど、仕方ない〜…… 代わりに、何か甘いものを所望する〜……」
「ふふ、分かりました。 多分、王女様の誕生日パーティーの準備で、色々甘いものを作りますから、皆さんの分を持って帰ってきますね」
「ん、それがあるなら頑張れる〜……」
現金なフィオにカスミは微笑みつつ、とりあえずは王都滞在の拠点となる家へと向かうのであった。
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