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#35 とろとろ中華丼

「……って、感じでした」


「へぇ、なんかますます大事になってきたな」



 現在、カスミは夕食の用意をしながら、アネッタに商業ギルドであった事を話していた。


 帰ってきた時に、ざっくり他のメンバーに話はしたのだが、その時アネッタは魔物の討伐依頼を受けて留守にしていたので、こうして今報告をしていた。



「アネッタさんも、付いてきてくれますか?」


「そんなの、当たり前だろ」


「ありがとうございます」



 レネ、フィオ、ローニャに話した時もそうだったが、アネッタも王都への同行を当たり前かのように承諾した。



「王都の近くにはダンジョンもあるしな」


「ダンジョンってなんですか?」


「ダンジョンっつーのは、魔力が濃い場所とかにできる異空間に繋がる場所だ。 そこには魔物が沢山湧いてくるから、冒険者にとっての稼ぎ所だな」


「そんな場所があるんですね」



 まだまだ知らない事がこの世界には沢山あるなと、カスミはダンジョンの話を聞いて再認識した。



「ダンジョンの魔物は地上の魔物とは違くて、倒すとすぐ魔素になって消えちまう。 が、倒すと素材とか宝箱を落としたりするんだ」


「魔物が宝箱になるんですか?」


「原理は俺もよく分からん。 フィオが前になんか言ってたが、小難しくて聞き流した」


(不思議空間なんだなぁ)



 この世界の人間じゃないカスミにとっては、魔法に関することは全くの未知なので、そういうものがあるんだなくらいに考えていた。



「ダンジョンは罠とかもあるから、ローニャも付いて来させるか」


「ローニャさん、嫌がりませんかね?」


「普段はおちゃらけてるが、あいつも割と戦闘は好きだぞ。 獣人は元々、好戦的な種族だ」


「そうなんですね?」



 いつも明るくにゃーにゃー言いながら、マイペースに過ごしているローニャが、真剣な表情で戦闘をしている姿はあんまりカスミには想像できなかった。



「それに、この前のギャンブルで金全部スったらしいから、あいつも稼ぎたいだろうしな」


「うーん、動機がちょっとアレですけど……」


「だが、カスミが来てからあいつはかなりマシになったぞ。 前までは毎日賭場に行ってたが、今は2、3日に1回になったし、夜には必ず帰ってくるようになった」


「それは良い傾向ですね」



 カスミもローニャにはできればギャンブルは辞めるか、せめてもうちょっと控えて欲しいと思っているので、アネッタのマシになってるという言葉を聞けて少し安心した。


 

「そういえば、ギャンブルってどんなものがあるんですか?」


「絵が書いてあるカードとか、ボールを適当に投げてどこに入るかとか、割と簡単なゲームが多いな」


「トランプとかは使わないんですね?」


「とらんぷ? なんだそれ」


「あっ、こっちには無いんですね」



 カスミのイメージだと、ギャンブルにはトランプを使ったものが多いイメージなのだが、話を聞くにそれよりももっと簡単なゲームがこの世界では主流らしい。



「トランプは50枚くらいの数字や絵が書かれた紙で、それを使って色んなゲームができるんです」


「へぇ、カスミの世界でもギャンブルはあるんだな」


「多分、そういう娯楽に関しては、こっちの世界の比じゃないくらい多いです」


(料理もそうだけど、簡単なゲームしかやって来なかった人が、いきなりパチンコとかスロットとか知ったらどうなるんだろ。 ……もしかしたら、楽しすぎて今より依存しちゃうとかもあるのかな?)



 基本的にカスミは異世界に関する事は聞かれたら答えるのだが、ギャンブルに関しては言っていいものか悩んでしまう。



(こういう時はチェアリィ様に聞こうっ。 王都にはこの街よりも大きくて立派な教会があるらしいから、観光も兼ねて行ってみたいし)



 困ったら相談するのが大事だと思っているカスミは、ギャンブルなどの教えてもいいか分からない知識に関してはそれ以上話さないことにした。


 

「んで、今日は何作ってんだ?」


「今日は丼ものですね」


「お、ライスが進むやつか」



 これまで海鮮丼と、あと焼肉丼を作った事があるのだが、大食漢のアネッタはおかずとライスが一気にかきこめる丼もの料理をかなりのお気に入り料理に認定している。



「ん? それなんだ?」


「これはしめじですね」



 なので、どんな丼ものを作っているのかとアネッタがキッチンをカウンターから覗き込むと、肉や野菜の他に長細いきのこであるしめじがまな板の上にあった。



「それ、きのこか?」


「そうですね」


「食えるのか?」


「美味しいですよ? あんまり食べないですか?」


「ああ。 あんま味しないからな。 塩かければまぁ食えなくはないが、毒持ってるやつも多いし、あんま良いイメージがない」


「まぁ、毒持ってるものも多いですよね」


「薬師とか魔術師が変な薬作るのに使ったりしてるな」



 それから話を聞くに、この世界にはカスミが知らないようなキノコが沢山あるらしい。


 まぁ、地球にあるきのこも、食べられるもの以外や未発見のものを含めたら、10万種類くらいのきのこがあると言われていたくらいなので、こっちの世界にも多種多様なきのこがあるのだろう。


 とりあえず、しめじはとても美味しいきのこなので、カスミは気にせず料理を続けていく。


 まずはそれぞれ食べやすいサイズに切ったオーク肉、白菜、ねぎ、にんじん、そしてしめじをごま油を引いたフライパンで炒める。


 それら具材に油が回ってある程度火が通ってきたら、今日は鰹節から直に引いただし汁と、醤油、みりんを加えて煮る。


 3分ほど煮て火がしっかり通ったら、そこへ水溶き片栗粉を加えて軽くかき混ぜていく。



「今入れた白いのなんだ?」


「片栗粉を水で溶いたものですね。 これを入れるととろみが付くんです」


「へぇ、あんま想像つかないな」


「食べてもらったら分かると思います」



 口で説明するより食べてもらった方が早いと思うので、水溶き片栗粉がしっかり混ざってとろみがういてきたら、出来上がったフライパンの中身を、深めで大きめの皿に盛ったライスの上にたっぷりとかける。


 これで今日の夕食の完成だ。


 早速それと卵スープをリビングのテーブルに運ぶと、他のメンバー達も集まってきた。



「今日のメインは中華丼です」


「中華ってなんだ?」


「私の住んでた国とは別の国が発祥の料理のジャンルですね。 まぁ、中華丼は中華風ってだけなんですけど……」



 そう、中華丼は名前こそ中華と付いているが、一昔前の日本の町中華で賄いとして八宝菜をライスの上にかけたものが発祥とされている。


 一応、諸説はあるのだが。


 その辺りの事情は話しても伝わるか分からないので、とりあえず説明は程々にして、美味しそうな中華丼を今は堪能することにした。



「んっ、これ美味いな! 確かにとろとろだし、ライスに合ってる!」



 そうして早速中華丼を口に運んだアネッタが、嬉しそうにしながらそう感想を述べた。



「にしても、こんなとろとろになるんだな」


「こういうのをあんかけとかって言いますね。 色々な料理に使えるんですよ」


「む、これは、きのこか?」



 アネッタと話している中、シャキシャキとした食感のえのきを食べたクリスタがそう聞いてきた。



「はい。 えのきっていうきのこです」


「久しぶりに食べたな。 美味しいよ」


「クリスタさんはきのこ好きなんですか?」


「こんなに美味しく調理されているきのこを食べたのは初めてだから、過去食べたきのこと比較するのはちょっと違う気もするが、割と好きだぞ」


「そうなんですね」


「私の出身のエルフの国は森の中にあるから、きのこはよく食卓に並んだよ。 エルフは肉が食べられない者も結構いるから、肉の代わりにきのこのステーキを食べたりもしてた」


「お肉食べられないんですか?」


「基本的にエルフは体が弱い種族だからな。 鍛えればちゃんと胃袋も強くなるが、戦わない者はあまり油っこいものは食べられないよ」



 クリスタはそうエルフについて教えてくれた。



「なんでクリスタはそんな体の弱いエルフなのに、バリバリ前衛で動けるの〜……?」


「クリスタは結構戦う時は脳筋にゃ。 魔法使うより剣の方が早いとか言って」


「い、良いだろう別に。 鍛えた成果だ、これが」



 そんな風にフィオやローニャにいじられるクリスタは、ちょっと拗ねたような表情を浮かべ、いつものかっこいい姿とはギャップがあって可愛いなと思うカスミだった。


 その後も皆で談笑しながら食事は進んでいき、大量に作ったおかわりとライスはしっかり完売し、夕食後は明後日に王都に向かうので、それぞれ準備をしたりするのであった。

 

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