#33 打ち合わせ
「それじゃあ、本題を話しましょう」
ジリアムにカスミを知ってもらうべく行われた試食会も一段落したところで、今日話し合うべきことをシクウの方から切り出してきた。
「まず、一番話したいのは王女殿下の誕生日パーティーについてです。 王家の方々にカスミさんの事を伝えたら、そんな素晴らしいものが作れるなら、ぜひ頼みたいとのお言葉をいただきました」
どうやら、先日話した王女の誕生日パーティーでカスミの料理を振る舞うという話は、かなり前向きに進んでいるようだ。
「ただ、案の定、一度会って話をしたいと言っておられましたので、カスミさんには一度王都に行ってもらう事になります」
「分かりましたっ」
「こちらの側の条件として、付き添いの方と共に謁見することと、ごく一部の者にのみカスミさんの存在を明らかにするということは了承していただけました」
(結構無理なお願いだと思うけど、受け入れてくれたんだ…… 意外と王家の人達って懐深いのかな? それとも、シクウさんが凄いのかな?)
カスミは内心そんな風なことを思いながら、続くシクウの話を聞く。
「それで、急なのですが、明後日に王城に赴いて欲しいのです。 何せ、王女殿下の誕生日パーティーまでもう3週間程ですので、そこまで余裕がありません」
「となると、フィオを連れて行くべきか」
シクウの要望を聞いて、クリスタがそう呟く。
「フィオさんですか?」
「あいつは転移魔法という、一度行ったことのある場所に一瞬で移動ができる魔法が使えるからな。 馬車で王都を目指したら一週間以上かかるから、明後日に間に合わせるにはそれかガリュウに乗っていくかしかないだろう」
「転移魔法……! そんな魔法があるんですね……!」
魔法に馴染みのないカスミからすれば、瞬間移動ができるなんて夢のまた夢な話で、実際したらどんな感じなんだろうと今からちょっと楽しみになった。
「それと、王家の方々との挨拶が終わりましたら、王城に勤める料理人に早速料理を教えていただきたいです。 まだメニューなどは全てお決まりではないでしょうから、決まっている範囲で大丈夫です」
「分かりましたっ」
「その際、カスミさんの存在が広まりすぎないよう、しっかりと緘口令は出してもらいます。 流石に料理人達やそれを運ぶ城のメイドや執事達にカスミさんを見られないようにするのは難しいので」
シクウはそう料理指南の際の段取りについても教えてくれた。
(メッコ村に行った時も、帰り際に村の人達に私の事を口外するなってクリスタさんとアネッタさんがおどし…… んんっ、釘を刺してたなぁ……)
やはりこの世界は日本に比べると間違いなく治安は悪く、要人の暗殺や誘拐なんて事は少ないが起き得るのだという。
カスミの場合は悪い事をしているわけではないので、恨まれる事はほぼ無いだろうが、過保護なビフレストの面々はカスミに降りかかる危険の芽すら極力減らしたいらしく、徹底的にリスク排除に勤しんでくれている。
「それで、どのくらいの期間、王都に滞在できますでしょうか?」
「えっと、どうしましょう?」
カスミ一人では決められないので、カスミはクリスタの様子を伺った。
「うーむ…… 日帰りと言いたい所だが、料理を教えるのは一日じゃ済まないだろうし、細かいすり合わせなどのために毎度王都に行くのも手間だな…… なにより、留守番メンバーがその間、カスミの料理を食べれなくてゴネそうだ……」
最後の理由は中々に私情が挟まっているが、もし2日3日の滞在を何度も繰り返す形にしたら、クリスタが留守番をする時も必ずあるので、クリスタからしても他人事では無いのだ。
「いっそ全員で誕生日パーティーが終わるまで王都に滞在するか。 他のメンバー達も王都に行ったら行ったでやりたい事あるだろうし、カスミには旅行感覚で色んなところを楽しんでもらえそうだしな」
「いいと思います!」
クリスタの意見に、カスミは諸手を挙げて賛成した。
(この国の首都ってなったら、色んなものがあるだろうから、凄く楽しそう! この街では見れない食材とかもありそうだし!)
「でしたら、王都にある手頃な空き家を抑えるよう連絡を致します。 環境も整えておきますね」
商業ギルドは不動産事業も行なっているので、ジリアムがカスミ達が過ごせる家を確保すると言ってくれた。
「誕生日パーティーへ向けての段取りは大まかにはそんな感じでしょうか。 何か聞きたい事などはありますか?」
「うーん、現場を見たり、王族の方に会ってみないとあとは何とも……」
シクウにそう答えたカスミは、前世のパティシエ時代に、知り合いのベテランパティシエが開くパーティーに赴いたり、なんならパティシエの仕事として、外部のパーティーや結婚式で出すケーキやデザートを作った事はある。
が、ケーキやデザート以外の料理までは見た事はあっても考えた事はないので、割と手探りでメニューを考えているところもある。
なので、それらの見た目や味が受け入れられるかは、その時になってみないと分からないだろう。
「でしたら、王族の方々との謁見の際に、パーティーでも出すような品を少しばかり試食としてお出ししても良いかもしれませんね」
そんな不安から首を捻るカスミに、シクウがそう提案をしてきた。
「私の口添えもあって、表面上はカスミさんに料理を任せる事を承諾してくださいましたが、本当に大丈夫なのか王族の方々も少し不安があると思います」
「確かに…… というか、シクウさん、王族の方にも顔が利いて凄いですね……?」
「はは、恐縮です」
「ちなみに私のことは何とお伝えしたんですか?」
「これまで食べた事のない、誰しもが美味と言うであろう料理を作る方と説明させていただきました」
(は、ハードル凄く高くなってる……!? まぁでも、色んなものを食べてきた大商人のシクウさんがそんな風に言ったら、王族の方々も興味持ってくれるだろうな…… 頑張らないとっ)
「分かりました。 訪問の際はなにか軽食を作って持っていこうと思います」
カスミがそう言うと、シクウは満足気に頷いた。
その後も色々と打ち合わせをし、カスミからは現状決まったメニューに必要な食材、あと、こちらではまだ見ていないが、使いたい食材についてをシクウとジリアムに伝えてみた。
そうすると、決まっている必要なものに関しては必ず用意すると強く頷いてもらえ、こういう食材が無いかという質問には、流石の大商人と商業ギルド長と言うべきか、特徴を伝えただけで大体の食材に心当たりがあるようだった。
なので、それらは近日中に用意してもらい、王都の滞在中にシクウに見せてもらう事となった。
そんな打ち合わせはかなりの時間続き、終わる頃には全員ちょっと小腹が空いたので、先程食べたおにぎりやサンドイッチの余りを食べながら談笑し、仲を深めるのであった。
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