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#32 商業ギルドへ

 メッコ村を訪れてから数日が経ったある日。


 ビフレストのパーティーハウスに一枚の手紙が届いた。


 差出人は先日話をしたデラフト商会のシクウで、また話したいことができたから明日こちらに来るとのこと。


 ただ、今回はカスミが今いるパーティーハウスではなく、この街の商業ギルドで、そこのギルド長も交えて話をしたいそうだ。


 商業ギルドの信頼できる者にも、カスミの事を話しておくべきだとシクウは思っているらしく、この街の商業ギルドのギルド長は、その信頼できる者という条件を満たしているらしい。



「まぁ確かに、今後カスミの商品を売るとなると、商業ギルドを通さない訳にはいかないから、味方は作っておいた方が良いだろうな」



 クリスタもシクウと同意見のようだったので、カスミは手土産に持っていけそうな料理をいくつか用意する事にした。




 *




 シクウからの手紙が来た次の日。


 カスミはクリスタと一緒に、商業ギルドを訪れていた。


 そんな商業ギルドの正面の入口は、沢山の商人や一階にある購買エリアにやってきた客で溢れかえっていた。


 本来、商談をしに来た場合は正面入口から入ってすぐのところにある受付カウンターで話をするのだが、カスミがそこに行くと目立ってしまいかねないという事で、シクウの手紙には裏口から入れるように話を通しておくと書いてあった。


 なので、カスミとクリスタは商業ギルドの建物をぐるりと迂回し、裏口へとやってきた。


 そこには用心棒と思しき厳つい男が立っていて、真面目に辺りを警戒している。



「む…… ここは関係者専用だ。 用があるなら表から入れ」


「私達は関係者だよ」



 その用心棒の男に、クリスタがシクウからの手紙を見せると、その手紙の裏面に刻まれたデラフト商会のマークを見て、用心棒の男はすぐに頭を下げてきた。



「失礼しました。 話は聞いております。 ここから入って右手側の突き当たりの部屋にお入りください」



 どうやらちゃんと話は通っていたようで、するなり中に入れてもらえたカスミとクリスタは、用心棒の男が言っていた部屋へと向かった。


 それから程なくして辿り着いた部屋の扉をクリスタがノックすると「どうぞ」と、シクウの声が中から返ってきたので、カスミとクリスタはその部屋に入っていった。



「来てくれてありがとうございます、クリスタさん、カスミさん」



 その部屋の中には、以前と変わらず美しい見た目と所作をしているシクウがおり、カスミとクリスタに歓迎の言葉をかけてくる。


 そして、その隣には、見た目は40代くらいに見える痩身の眼鏡をかけた男性がいた。



「こちらが手紙にも書いた、この街の商業ギルド長の……」


「ジリアムと申します。 クリスタ様、カスミ様、初めまして。 お会いできて光栄です」



 ジリアムはシクウの言葉を引き継ぐ形でカスミとクリスタに挨拶をし、腰を折り曲げ、綺麗なお辞儀をしてきた。



「は、初めまして、カスミと申しますっ」


「ビフレストのリーダー、クリスタだ」



 そんなジリアムに、カスミとクリスタも挨拶を返すと、ジリアムはにっこりと優しい笑顔を浮かべてくれた。



(ジリアムさん、イケおじって感じだ……! でも、なんだか油断ならない雰囲気があるなぁ……)



 日々商人を相手にする商業ギルドの長なだけあって、ジリアムはシクウに似た、掴みどころがなく、感情が読みにくい雰囲気と表情をしている。


 ただ、友好的なのは間違いないようなので、カスミとしては一安心だった。



「さて、それじゃあ早速話をしましょうか」



 それからこの部屋にいる四人は、それぞれ部屋の真ん中にあるテーブルを囲む形で、ソファに腰掛けた。



「とりあえず、ジリアムさんには先日カスミさんと話した事をそれとなく伝えてあります。 詳しくはカスミさんの許可が無いからまだ話していませんが」


「シクウさんが信頼する方でしたら、話しても大丈夫だと思いますっ」



 シクウの言葉に、カスミはそう返した。

 


「それじゃあ、先日話した事の振り返りも兼ねて、まずはジリアムさんにカスミさんが携わる事について説明致しましょう」


「よろしくお願い致します」



 ジリアムも真剣な表情で頷く。



「あ、それなら、こちらをどうぞっ」



 その説明が始まる前に、カスミはあらかじめ用意してきた軽食を、クリスタが持つ収納袋から取り出し、テーブルの上に並べていった。



「ほう、これは……」



 そんなテーブルの上に並べられていく見覚えのない料理に、早速ジリアムは興味を示したようだ。


 それから程なくしてテーブルの上に並べられたのは、小さめに作ったおにぎりにサンドイッチといった、片手で摘める軽食の類と、黄金色に輝くスポンジケーキだった。



「この丸いものはなんでしょうか?」


「こちらは柔らかくしたライスを丸めて、海藻を加工した海苔というもので巻いた、おにぎりというものです」


「ライスですか?」



 もはや恒例となった、ライスって食べられるの? という反応を浮かべたジリアムに、カスミは丁寧に作り方なども説明していった。



「……なるほど、水を吸わせる事で柔らかくなるのですか」


「味は保証しますので、ぜひ食べてみてください。 シクウさんも」


「ありがたくいただかせてもらいます」



 シクウは前回カスミと話した時にライスを食べたので、食べられる事は知っていたが、おにぎりは初見だったので、どこかワクワクした様子でおにぎりを口に運んでいった。


 ジリアムも、そんなシクウに続いて、俵形のおにぎりを思い切りよく半分ほど齧っていった。



「おお、これは……! 美味しいですね……! 中に何かが詰まっています」


「今回は鰹節という、魚を乾燥させた加工品を使った、おかかというものを詰めてみました」


「なるほど…… その味の濃いおかかが、淡白なライスと混ざると不思議な調和を見せている…… これは素晴らしいですね」



 ジリアムはそう興奮した様子で感想を述べてくれた。


 その後、他にも用意した塩むすび、ハムとチーズのサンドイッチ、たまごサンドなどを順番にジリアムは口に運んでいった。


 すると、どれもジリアムのお眼鏡にかなったようで、一つ一つ絶賛の言葉をかけてくれ、全て食べ終わる頃には、カスミの事を一目置いた目で見るようになっていた。


 そして、トドメとなったのは、カスミが焼いてきたスポンジケーキを口に入れた時。



「お、おおっ……! これは、なんと素晴らしい……! シンプルなケーキなのに、バターの香ばしさとくどくない甘さ、そして口の中で溶けていく食感……! これが、本物のケーキなのですな……!」



 スポンジケーキはシンプルがゆえに、素材の味と食感をいかに良くするかが大事になってくるのだが、一流パティシエであるカスミをもってすれば、それはもう絶品と言って差し支えない仕上がりとなっていた。



「あぁ、よく、分かりました。 シクウ様がカスミ様の事に関してとても慎重に事を進めているのか」



 そんな満足いく試食を経て、ジリアムはこの先の話を聞き逃さないよう、改めて居住まいを正すのであった。

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