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#154 新たな麺、再び

「あづいにゃ〜……」


「暑いですねぇ」



 風邪からも復活し、日常を取り戻したカスミの横で、今度はローニャがグロッキーになっていた。


 とは言っても、体調を崩した訳ではなく、単純に暑さにやられているという感じだった。


 この辺りは今の時期が暑さのピークらしく、今日も外に出るだけで汗ばんでしまうくらい気温が上がっている。



「ちょっと外出ただけなのに汗だくにゃ〜」


「お疲れ様です」



 ローニャは朝から昼前くらいまで、冒険者として簡単な依頼を受けて外に出ていたのだが、まだ日が完全に昇り切る前でも最近はかなり暑くなってきて、つい先程汗だくで帰ってきたのだ。


 それからシャワーを浴びて今はソファでゴロゴロしてる訳だが、まだ体の熱が抜けてないのか、薄手のシャツをパタパタ仰いでいた。



 ——ピンポーン



 そんな中、カスミ達がいるパーティーハウスのリビングに、来客を知らせるチャイムが鳴った。


 正しくそれはカスミの前世で言うところのインターホンの音と機能で、元々はこのパーティーハウスも他の一般的な家と同じで呼び鈴が玄関前に置かれていた。


 だが、カスミが何気なくインターホンについて話してみたところ、フィオとレネがあっという間に再現して、パーティーハウスに実装された。


 実際、呼び鈴よりも確実にに気付くし、しっかり白黒だがモニターの機能まで付いてるので、セキュリティ的にも利便性的にもインターホンの方が呼び鈴よりは優れているだろう。



「あっ、アルデンテさんですね」



 そんなインターホンのモニターには、誰も見ていないのに何故か香ばしいポーズをとりながら立っている、麺職人のアルデンテが映っていた。

 


「げっ、何であいつが来るにゃ」


「つい先日、お話したんですよ」



 アルデンテは市場で店を出しているので、かなりの頻度で顔を合わせるのだが、つい先日話した際に、以前から頼んでいた新作の麺が形になったと聞かされ、後日まとまった量を渡しに行くと言われていたのだ。


 恐らく今日ここに来たのはそのためなので、カスミはパタパタと急ぎ足で玄関から外に出ていった。



「アルデンテさん、こんにちは」


「やあ、カスミ様! それにローニャ殿も、ご機嫌麗しゅう!」


「ただでさえ暑いのに、暑苦しい奴にゃ……」



 カスミの付き添いでローニャも付いて来てくれたのだが、相変わらずローニャはアルデンテが苦手なようだった。



「わざわざありがとうございます」


「いやいや、カスミ様のおかげで今の僕があると言っても過言じゃないからねっ☆ このくらいは何の負担でも無いさ!」



 そう言うアルデンテは車輪と保冷機能が付いたクーラーボックスのようなものを押してきたようで、本人はどうってことないと言うが、この暑い中重い物を運ぶのはそれなりに大変だっただろう。



「それで、こちらが件の麺、うどんとそばだよっ☆」



 そんな苦労を感じさせないハイテンションで、アルデンテは見せつけるようにクーラーボックスのような箱を開け、中身を見せてきた。


 そこには、使いやすいように一食分ずつ袋詰めされた、生麺状態のうどんとそばがかなりの量入っていた。



「わぁ、見た目は私の理想通りですっ」


「茹でて試食もしてみたが、カスミ様の言っていた特徴をかなり掴めていると自負しているよっ☆」


「ありがとうございます、アルデンテさん。 これでまた美味しいものが色々と作れます」


「こちらこそだよ! カスミ様のおかげで、僕の人生は薔薇色真っしぐら! 頭が上がらないとはまさにこのことっ!」


「ずっと下げて静かにしてろにゃー」


「あはは……」



 アルデンテに辛辣なローニャに苦笑しつつ、カスミはうどんとそばを収納ポーチにせっせとしまっていった。


 アルデンテ曰く、うどんもそばも今朝打ちたてだということで、収納ポーチにしまっておけば、いつでも打ちたてのうどんとそばが食べられる。



「よし、これで全部ですね。 アルデンテさん、お疲れでしょうし、中で少し休んで行きますか? 早速うどんかそばを使って何か作りたいですし」


「気持ちはとてもありがたいが、遠慮しておくよっ☆ 美しい女性達の花園に足を踏み入れるのは、男としてよくないからねっ! マリンにも悪いし!」


「そうですか。 じゃあ、食べた感想とうどんとそばを使ったレシピを、また後日伝えに行きますね」


「ああ、そうしてくれるだけでもうありがた過ぎるっ!」



 アルデンテは香ばしいポーズを取りながらそんな風に言う。


 そして、クーラーボックスのような箱を閉じて、美しくターンすると「ではっ!」と言ってスキップしながら帰っていった。



「……あれで誠実なのがなんかムカつくにゃ」



 見た目や言動は遊び人のようなアルデンテだが、恋人であるギルド職員のマリンに一途なため、ローニャもその点と麺職人の腕に関してはアルデンテのことを認めていた。


 人柄はどうにも好きになれないようだが。



「そうしたら、早速うどんか麺を使って何か作りましょうか」


「お、新しい料理、楽しみにゃー」



 そんなアルデンテを見送ってから、カスミとローニャは家の中へ戻り、昼食の準備を始めるのであった。

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