#147 たまにはズボラ飯
帝国に滞在中のカスミは、現在寝起きでぼんやりとした頭で朝食のことを考えていた。
カスミは割と寝起きは良いタイプなのだが、いつも過ごしているパーティーハウスとはベッドや枕が違うからか、今日は少し寝起きが悪かった。
そのため、冷蔵庫の中をぽけ〜っと見つめてみたはいいものの、何を作ろうか中々思いつかなかった。
(ん〜…… あ、そうだ。 久しぶりにアレにしよう)
だが、冷蔵庫の片隅にあったあるものを見て、ピコンとある料理のことを思い出したので、カスミはその料理を含めた朝食の準備をすることにした。
まず、主食はライスになるのでライスを洗ってセットしておき、横には小松菜と昨日の夕食の時に余ったエノキを使った味噌汁と、野菜スティックを用意することにした。
「ふぁ〜、カスミちゃんおはよー」
「おはようございます、レネさん」
そうして朝食の準備を進めていると、起きてきたレネがやってきた。
「今日も朝ごはんありがとねー」
「いえいえ。 でも、今日はちょっと手抜きなんですよね……」
「良いんじゃない? むしろ、いつも豪華過ぎるくらいだし」
カスミのモットーとして、朝食はしっかり食べるというものがあるので、カスミは毎朝3〜5品目は作っている。
ビフレストの面々…… というよりこの世界の人間は、朝食はそこまで重要視しておらず、良くてスクランブルエッグにトースト、無頓着な者はスープ一杯とか何も食べないなんて者もいる。
なので、カスミが用意してくれる朝食は、ビフレストの面々からすればご馳走以外の何物でもなく、もっと適当な朝食でも用意してくれるだけで文句なんて何一つもないのだ。
「で、どんな朝ご飯なの?」
「卵かけご飯…… こっち風に言うなら卵かけライスですかね」
「卵かけライス?」
そんなカスミから出てきた料理名を聞いて、レネはなにそれと首を傾げた。
「どんな料理?」
「名前の通りとしか言いようがないですね…… とりあえず、準備できましたから、早速食べましょうか」
ライスも炊け、味噌汁や野菜スティックの準備も済ませたので、早速カスミは手頃なお椀に人数分のライスをよそい、それらを卵を一つ入れたお椀と共に食事スペースに運んでいった。
それらを運び終える頃には他のビフレストメンバーも起きてきたので、カスミはお手本を見せるかのように卵をお椀に割り入れて、箸で溶いていく。
「そうしたら、卵にこれくらいの醤油を注いで軽く混ぜたら、こうして……」
そして、醤油を適量混ぜた卵を、ほかほかのライスの上にかけていった。
「えっ!? か、カスミちゃん、それ本当?」
「はい。 これが卵かけライスです」
この世界には卵を生で食べるという習慣が無く、生卵を直にライスにかけたカスミに、レネを始めとしたビフレストの面々は皆「大丈夫か?」みたいな目線を向けてきていた。
「私も久しぶりにやったんですけど…… ん〜、美味しいです♪」
そんなビフレストの面々に見せつけるように、カスミは卵かけライスを口に運んでいった。
すると、口では説明しづらいが、とにかく丁度いい美味しさが口の中に広がり、カスミは表情を綻ばせた。
そんなカスミを見て、若干まだ不安に思いつつも、他のビフレストの面々も溶いて醤油を注いだ卵をライスにかけ、恐る恐る口に運んでいった。
「ん! なんか…… 普通に美味しいね?」
「そうでしょうそうでしょう」
すると、やっぱり口では説明できないのだが、確かな美味しさが口の中に広がり、その後は皆、パクパクと卵かけライスを食べ進めていった。
「卵とライスと醤油だけなのに、なんでこんな美味しいんだろ?」
「なんでなんですかね? 私も分かんないです」
材料も少なく調理工程もほとんど無いズボラな料理にも関わらず、何杯でも食べられそうな美味しさをしている卵かけライスに疑問を呈するレネだったが、カスミもなんでこんな美味しいのかはよく分かってないので、素直に分かんないと答えた。
まぁ、何はともあれ美味しいので、よく食べるビフレストの面々は早々にライスの2杯目をよそってきた。
「あ、そうしたら、こちらの白だしと、卵かけご飯用の醤油もあるので、お好みでどうぞ」
一杯目はオーソドックスに醤油のみで食べてもらったが、カスミが個人的に好きな白だしと、先程スキルで生み出しておいた、卵かけご飯用の甘めの味付けがされた醤油を皆に勧めておいた。
今回は用意しなかったが、海苔やふりかけ、あとは鰹節なんかも卵かけライスには合うので、実は卵かけライスは意外とアレンジの効く素晴らしい料理なのだ。
「これなら誰でも作れるから、小腹が空いた時とかもいいかもね!」
「そうですね」
そんなこんなで、たまには手抜きで作ろうと思い立って作った卵かけライスだったが、存外ビフレストの面々には気に入ってもらえ、朝食の定番として定着するのであった。
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