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#142 帝城の料理人達と顔合わせ

「大きいですねぇ……」


「まぁ、城だしな」



 本日、カスミはアネッタと共に帝都のど真ん中に聳える帝城へとやってきていた。


 やはり城というものはこの世界において、大国の証のような側面があって、広大な国土を誇る帝国の城も、それはもう立派な大きさとデザインをしていた。


 カスミが以前行ったナステリア王都の城と比べると、城の周りに幅の広い堀があったり、外から侵入できないようにか、全体的に城の壁は地面にほぼ直角になっていたりと、防衛力的な視点で言うと、帝国の城の方が優れていそうだった。


 その分、美しさという面では王国の城に軍配が上がるので、結論カスミにとってはどちらも見ると思わず感嘆の声が漏れてしまうくらい素晴らしい建造物だった。


 そんな城へ向かうための橋の前に辿り着くと、当然のようにそこには兵士がいたのだが、カスミが皇帝からの手紙を見せると、恭しい態度を取りながら城まで案内してくれた。


 そうして帝城に入場したカスミ達は、その足で帝城の厨房に向かった。


 今日は皇帝に会いにきた訳ではなく、会談の際に借りることになる帝城の厨房の下見、そこにいる料理人達との顔合わせ、そして明日作る料理メニューの共有と練習が目的だ。


 

「皆さん、本日はよろしくお願いしますっ」


「「「よろしくお願いします」」」



 その目標を達成するべく、カスミが帝城の厨房に入ると、そこには料理人達が整列して待っており、カスミの挨拶に対してしっかりと挨拶を返してくれた。


 ただ、中にはカスミのことを侮っているような目をしていたり、こんな少女に任せて大丈夫なのかと不安がる者もいた。



「えっと、見た目はこんなですけど、一応大人なので、お気遣いは無用ですっ」



 なので、カスミは自分の見た目に関してはそのように説明した。


 これは少し前からクリスタ達と考えていたことなのだが、今後カスミの見た目が問題になりそうな時は、大人だということは言っていいだろうということになった。


 理由としては、この世界には長命種で見た目と年齢が一致しない者はかなりいるので、とりあえず大人であるということを言っておけば、長命種の血が混ざってるんだなとか、魔法で姿変えてるのかなとか、受け取り手の方がある程度事情を察してくれるとのこと。


 その考えは的を得ており、カスミが大人だと言うと、侮りや不安の目線は先程よりもマシになった。



「そうしたら、明日の会談で出す料理を一度見たいのですが……」


「用意してあります」



 今回、スケジュールが少し詰まっており、カスミが一から全ての料理のメニューを考えるのは、カスミの負担が大きいということで、既に決まっているメニューにカスミが少し手を加えて改良するという方式を取ることになっている。


 なので、カスミは用意してもらった明日出す会談後の昼食のメニューをまずは見ていく。


 すると、どうやらメインは、最高級ワイバーン肉の部位別盛り合わせのようで、その横にはシンプルなサラダと、何かの肉が入ったスープが並べられていた。



「美味しそうですね」


「ええ、部位別に最適な焼き方で仕上げてあります」



 まずメインの料理に関してだが、焼き加減などは何ならカスミよりも上手く、非常に美味しそうに輝いていた。



「そうしましたら、お肉に合うソースを何種類か用意しましょう」


「ソースですか?」


「はい。 作るのもそんなに難しくないです」



 カスミはそう言うと、周りにいた料理人数名に協力してもらって、ソース作りを始めることにした。


 まず、一番簡単に作れるものから説明していく。



「一つ目は、大根をすりおろしてもらって、それにこちらのポン酢という調味料を合わせます。 ……これで完成です」


「簡単ですな?」



 あまりに簡単な工程に、周りで見ていた料理人達は肩透かしを食らっていた。



「こんな簡単なものでも、とっても美味しいですよ。 良ければ食べてみてください」


「では…… おお! 酸味のあるソースが、肉によく合っている!」


「脂っぽさが気にならなくていいですね!」



 ものの数分もかからず作り上げたおろしポン酢ソースを付けたワイバーン肉を、何名かの料理人に試食してもらったが、早速絶賛の声が上がった。



「どんどんいきましょうか。 次が……」



 それからカスミは、少し甘めに仕上げたステーキソースと、トマトの食感を残したニンニクとバジルが香るトマトソースの作り方を教えていった。


 どちらも作るのに難しい工程もない、手軽に作れるソースではあるが、肉との相性は非常に良い。



「この甘めのソース、すごく良いな! 肉の旨みが際立っている!」


「トマトソースも美味しいわ! さっぱりしているし、香りが良くて!」



 そんなソースをかけたワイバーン肉を試食してもらったが、どちらも大絶賛の声が上がり、この時点でもうカスミのことを侮っている料理人は一人もいなかった。


 なお、ソースに使った醤油やポン酢などの帝国で出回っていない調味料に関しては、今回カスミが提供することにして、ちゃっかりデラフト商会から売り出されていることも宣伝しておいた。



「サラダは酸味のあるドレッシングをかけるとして、スープは…… わぁ、美味しいですね」



 ひとまずメインのワイバーン肉の盛り合わせは、ソースを追加することでより良いものになったので、次にカスミはスープを何か改善できないかと思い、少し味見させてもらった。


 すると、しっかりと肉の旨みが溶け出したスープは非常に飲み応えがあり、これだけでライスが進みそうだった。



「そちらはキングバイソンのテール肉を煮込んで作りました」


「なるほど。 ……でも、少しだけ臭みが気になりますね。 煮込む際にお肉と水以外に何か入れてますか?」


「酒を少量加えたくらいで、他は入れてませんね」


「でしたら、ネギの頭の青い部分と、薄切りにした生姜を加えて煮込んでみるといいですよ。 香味野菜が臭みを抑えてくれるので」


「そんな方法が…… 分かりました、やってみます」



 スープに関しては、少しだけ臭みが気になる以外は問題なさそうだったので、臭み消しの方法を教えて解決とした。


 これで明日の食事に関しては格段にレベルアップしたので、当初の目的としては達成と言っていいだろう。



「そうしたら皆さん、明日のデザートに出すものの試食をお願いしたいのですが……」



 そのタイミングで、カスミがそう切り出すと、料理人達は笑顔で了承の意を示した。


 そんな料理人達に、カスミが用意してきたデザートを振る舞ってみたところ……



「こ、これは、神の食べ物だ……!」


「私、生まれてきてよかったぁ……!」



 帝城の料理人達はその美味しさに驚き、感動し、中には涙を流し始める者まで現れた。


 全員が食べられるよう、本来出すものよりも少し小さめの一口サイズにして持ってきたのだが、その一口だけでももう全員が満足げな表情を浮かべてくれたので、皇帝に出しても大丈夫そうだなとカスミは一安心した。


 そんな騒ぎもあったものの、つつがなく今日の顔合わせは終わりを迎え、最後には帝城の料理人達は揃ってカスミに礼を言って、帰路につくカスミ達を見送ってくれたのであった。

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