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#140 あのスイーツ作り①

「カスミは何やってんだ?」


「さぁ〜……?」



 日もほとんど沈んできた頃。


 カスミは昼過ぎに市場から帝都の拠点に帰ってきて、その足でフィオに以前使ったマジックテントを取り出してもらい、そこに入って作業をしていた。


 このマジックテントの中は空間が拡張されており、さらにはサミアンの街のパーティーハウスと同様の調理設備が整っているので、帝都の拠点のキッチンを使うより色々と効率よくできるのだ。


 そんなマジックテントに、かれこれカスミは3時間程こもりきりで、流石にそろそろ呼び戻そうかとビフレストの面々は思っていたのだが、そのタイミングで、もぞもぞとカスミがテントの中から出てきた。



「失敗しました……」



 すると、芋虫のようにテントから出てきたカスミは、そのまま地面に突っ伏しながら残念そうな声を上げた。



「へぇ、カスミも失敗することなんてあるんだな」



 そんなカスミをヒョイっと抱え上げながら、アネッタがそう言ってくる。

 


「厳密に言うと、食べられはするんですけど、もっと美味しく作れるって感じです……」


「なんか必要な道具足りなかったりした?」



 アネッタに抱っこされたカスミのほっぺをツンツンしながらレネがそう聞いてくる。

 


「うーん、そうですね…… 前に作ったこともあるんですけど、その時とほぼ同じ道具を使ってるので、現状の道具でも上手く作れるはずなんですけど……」


「なんでも言われたら作るよ!」


「ありがとうございます、レネさん。 とりあえず、明日またチャレンジしてみて、それでもダメそうならお願いするかもしれません」


「任せて!」



 その後、カスミは夕食を作ろうかと思ったのだが、長時間作業で疲れているだろうということで強制的にお休みさせられ、夕食に関しては離れにいたメイド達を呼んで作ってもらった。


 こういうこともメイドとしての業務に入っているのか、その手際は料理人と差し支えないくらい見事で、帝国ならではの肉料理である、バイソン肉とカラフルな豆とサラダを豪快に盛り付けた料理を作ってくれた。


 それに礼を言いつつ食べてみると、肉の旨みが程よい塩胡椒で引き立てられていて、とても美味しかった。


 ただ、カスミの料理に慣れているビフレストの面々なので、割と早めに飽きが来てしまい、メイド達に断りを入れて、カスミの収納ポーチにしまってあるドレッシングをかけることにした。


 今回はシーザードレッシングと、フレンチドレッシングの2種類をあまりかけ過ぎないように注意しながら回しかけた。



「皆さんも良ければ食べてみてください」



 そんなドレッシングをかけた肉載せサラダを、作ってくれたメイド達にも勧めて食べてもらった。



「まぁ! 美味しいですわ!」


「程よい酸味と、チーズのようなコクが加わって、絶品になりました!」



 どうやらまだ帝国にはカスミの調味料などの存在は広まっていないらしく、メイド達は目を輝かせながら美味しいと言ってくれた。


 それから少し話を聞くと、メイド達は帝国生まれ帝国育ちだそうで、この国でもカスミの調味料はちゃんと美味しい判定されそうなことに、カスミは一安心するのであった。




 *



「よしっ、リベンジですっ」



 帝都にやって来た次の日。


 今日も今日とてカスミはマジックテントの中にいた。


 目的は当然、昨日失敗したスイーツ作りのリベンジである。



「カスミちゃん頑張れ〜……」



 ふんすと気合いを入れてキッチンに立つカスミに、見物兼、何か手伝えそうなことが手伝うために来たフィオが応援の言葉をかけていく。



「ところで何するの〜……?」


「こちらのカカオ豆を昨日のうちにローストしておいたので、まずは皮剥きですね」


「簡単そうだし、手伝ってあげよう〜……」


「ありがとうございます、フィオさん」



 まず初めの作業として、カスミはフィオと協力してローストしたカカオ豆の皮剥きから始めていく。



「なんか香ばしい匂いするね〜……」


「カカオ豆本来の香りがローストしたことで引き立ってますね。 ちょっとフルーティーな感じもします」



 カカオ豆一つとっても、産地や育て方で香りや加工した時の味が結構違い、今回買ったカカオ豆は、ありがたいことにカスミが扱ったことのある、地球では一番ポピュラーなカカオ豆と同じ感じだった。


 そんなカカオ豆を無心で皮剥きしていき、30分ほどでひとまず今回使う分の皮剥きが終わった。



「これがカカオニブという状態ですね。 一応これで食べられます」


「どれどれ〜…… ん、苦い〜…… でも、不味くはないかも〜……?」



 カカオニブの状態だと、カカオ豆本来のビターな味と香りが楽しめ、ワインなどと一緒に食べると結構合ったりする。



「そうしたらこれを、とにかく細かくします」



 そう言ってカスミは、レネにちょっと前に作ってもらったフードプロセッサーを取り出した。



「昨日は細かくしきれてなくて、失敗しちゃったので、さらに長時間かけて細かくしていきます」


「ん〜、でも、その道具だと限界あるんじゃない〜……?」


「まぁ、そうですね…… 昨日も結構時間かけたつもりだったんですけど、失敗しちゃいましたし……」


「どれくらい細かくするの〜……?」


「細かければ細かいだけ嬉しいですね。 カカオニブから出る油分で滑らかな液体状になれば理想です」


「ふむふむ〜…… じゃあ、ちょっと借りるね〜……?」



 フィオはそう言ってカカオニブの一部を風魔法を使って宙に浮かせ、その周りに球体状の風の結界と言えるようなものを生み出した。


 そして、その風の結界内は凄まじい暴風が吹き荒れており、カカオニブがぐるぐるぐると目にも留まらぬ速さで回転し始めた。



「わぁ、すごいです!」


「風の温度上げたらもうちょっといい感じになるかな〜……」



 さらに風を生温いくらいの温度にもしてくれ、最初は固形だったカカオニブが、どんどん細かくなっていき、数分後にはほとんど液体状と化していた。



「これでいい〜……?」


「えっと、そうしたらそこに砂糖を加えて、欲を言えば程よい熱と圧力をかけてさらに粒子を小さくしたいんですけど……」


「了解〜……」



 カスミがそうお願いすると、フィオは何やら考えがあるみたいで、さらなる魔法の準備を整えるのであった。


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