#139 本当に欲しかったもの
帝都に到着したカスミは、一旦クリスタとレネと共に帝都の市場へ足を運んでいた。
そこは時間はかなりピークから外れているものの、それでもそれなりの数の買い物客がいて、活気もかなりあった。
「帝国の食文化はどんな感じなんでしょう?」
「王国に比べるとかなり肉の消費量が激しいって話を聞いたことあるな」
「戦争多かったから、体を作るために肉食べろー! ってなってた名残りかもね」
カスミの呟きにクリスタとレネがそんな風に返してくれた。
それを聞いてから市場を見回してみると、確かに王国の市場に比べて肉を扱う店が多く、しかも安くて大量に取引されているようだった。
なので、カスミはこれ幸いと沢山の肉を購入していった。
ビフレストの面々…… 特にアネッタやローニャは肉が大好きなので、肉の消費量は一食で普通の6人家族の三食分くらいは消費する。
そのため、安く沢山手に入る帝国の市場は、カスミにとっては非常にありがたい場所だった。
「お、あそこ寄っていい?」
「もちろんです」
そんな中、レネが気になる出店を見かけたようで、それについて行くと、そこには工芸品や剣などを売っている出店があった。
「おー、いい仕事してるねー!」
「綺麗ですね」
その出店には、主にガラスを用いた工芸品が並べられていて、地球の言葉で言うならば切子、カットグラスと呼ばれるような技法で作られているようだった。
「折角来たので、お皿とかコップとかいくつか買っていきたいですね」
「いいね! お、剣も特徴的だねー」
「剣にも違いとか結構あるんですか?」
「あるある! 国の特色も出るし、作り手の技量も出るからねー。 それで言うと、帝国の剣は人を斬るための工夫がされてるね。 もちろん、魔物とかとも戦えるけど」
レネは物作り全般が好きで、武器や防具を作ることも当然あるので、興味深そうに並べられていた剣を手に取って眺めていた。
その横でカスミとクリスタは、どれがいいかなと皿やコップを選んだり、ブリキ製の可愛い小物なんかもあったので、帝国に初めて来た記念にいくつか購入した。
そうして満足のいく買い物をした後は、足りない食材や他にも面白いものが売ってないかなと、カスミ達は市場を練り歩いていった。
「あっ……! あれって……!」
そうしている最中、カスミはとある出店に並べられていたあるものに目が留まった。
それはまだ確証はなかったが、カスミが欲してやまなかった商品かもしれず、カスミは駆け足でその出店に近付いていった。
「あの、すみませんっ」
「お、可愛い子だね! らっしゃい!」
「これって……!」
「ああ、それはカカオの実だよ」
そう、そこで売られていたのは、手のひらサイズくらいのカカオの実だった。
「わぁ……! もしかして、カカオの豆とかもありますかっ?」
「ああ、こっちではあんまり人気ないけど、カカオの実を作ってる村ではよく食べるっていうから、ある程度仕入れてるよ」
「全部くださいっ!」
「お、おおっ? 良いのかい?」
「はいっ!」
「ま、毎度あり」
カカオ豆を買うと元気に言うカスミの圧に若干面食らいながら、出店の店主は大きな瓶に詰められたカカオ豆を持ってきてくれた。
「大体この瓶で1000粒くらいだな」
「ありがとうございます! 数日おきにこの市場に来ると思うので、また仕入れられたら買います!」
「分かったよ。 そんな美味しくないものなのに、変わってるね嬢ちゃん」
どうやらこの世界でカカオ豆は、ナッツ的な食べ方をされるものらしく、酒のつまみに食べられるくらいだそうだ。
「カスミちゃん、その豆どうするの?」
「ふふっ、これはとっても美味しいスイーツになるんですっ」
「ほう? その豆がか?」
買ったカカオ豆が入っている瓶を嬉しそうに抱きしめながらそう言うカスミに、レネとクリスタは興味深そうな表情を浮かべた。
「そうしたら、早速帰りましょう! 正直、上手くいくかは分からないので、早いところ形にして、できれば今度の会談までに仕上げたいです!」
会談が行われ、カスミの料理が振る舞われることになるのは3日後なので、それまでにカカオ豆から作れるあのスイーツを完成させるべく、カスミは急ぎ足で帝都の拠点に帰るのであった。
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