#137 久々の大仕事
「クルルー」
「ありがとうございます、ガリュウさん」
カスミが日課の運動を終え、シャワーを浴びてリビングに戻ってきたタイミングで、ガリュウが口に手紙を咥えてやってきた。
こうしてカスミ宛に手紙が来ることはまぁまぁあるのだが、初めてガリュウが手紙をカスミの下に運んで感謝されてからというものの、どうやらこの仕事にやり甲斐を見出したようで、手紙が来た時はこうしてガリュウが運んで来るのが定着した。
ちなみに、まだ定着しきっていない時に、ガリュウより先にカスミが手紙が来ていることに気付いて、レターポータルの前で読んでいたことがあった。
その姿を後からやってきて見つけたガリュウが、なんだかショックを受けたような表情をしていたこともあって、それからはカスミが先に手紙が来ていることに気付いても、ガリュウが運んで来るのを待つようになった。
カスミ的にはガリュウのそんな行動は、とっても可愛らしくてありがたいことなので、ぜひ続けて欲しいとまで思っていた。
アネッタはそんなガリュウの姿を見て、なんとも言えない表情になっていたが。
「ふむ……」
そんなこんなでガリュウに届けてもらった手紙は、便箋の綺麗さからして、この国の第二王女であるミーユイアからのものかなとカスミは思っていたが、実際の送り主はなんとこの国の王であるダスロウからのものだった。
「どうした、カスミ?」
「あ、クリスタさん」
それから手紙を読み終えたタイミングで、ちょうどよくクリスタがやってきた。
「陛下からお手紙が来てまして」
「……面倒事か?」
以前ミーユイアの誕生日パーティーのために王都に赴いた際、クリスタはダスロウに対して、カスミに必要以上に頼み事などをしないように釘を刺していた。
なのにわざわざ手紙を寄越してきたということは、カスミに何かを望んでいるのであろうことは容易に想像できたようで、ちょっと顔を顰めた。
「えっと、今度この国と教国、そして帝国の王が集まる会談があるから、そこで料理…… 主にデザートを振る舞って欲しいとのことです」
そんなクリスタにカスミは苦笑いしながら、手紙の内容をざっくりと噛み砕いてクリスタに伝えた。
「すごく面倒事だな」
「い、いやでも、また私は裏方ですし。 皇帝陛下と顔合わせくらいはするかもしれないそうですが……」
「……カスミは受けたいのか?」
「まぁ、ほぼ裏方ですし、会場が帝国とのことで、行ってみたさもあります」
「カスミがそう言うなら、まぁ良いだろう。 ただし、報酬はしっかりもらうんだぞ」
「いや、もう前回のユイ様の誕生日パーティーのお礼でもういっぱいいっぱいですし、報酬は……」
「ダメだ。 報酬無しでそんな大きな仕事をしたら、舐められる。 ちゃんと適正の報酬は貰うぞ」
「うぅ、分かりました……」
カスミとしては観光ついでに料理するくらいの気持ちで、例の如く泊まる場所も用意してくれるそうなので、別に無報酬でも構わないのだが、それはクリスタが許さなかった。
「カスミが心苦しいなら、私が交渉しておくよ」
「お願いします……」
それらの交渉などはクリスタに一存し、とりあえずカスミは了承の旨を手紙にしたため、送り返しておいた。
すると、後日再び手紙が届き、2週間後くらいに帝国の首都に来て欲しいと書いてあったので、カスミ達ビフレストの面々は、それに向けて準備をしていくのであった。
*
そんな王国、教国、帝国の三国首脳会談についての話をもらってからあっという間に日は経ち、カスミ達ビフレストの面々は帝国へ赴いていた。
今回は通常のサイズに戻ったガリュウの背に乗っての移動で、大体1週間くらいの滞在の予定だ。
「帝国ってどんな国なんですか?」
「良くも悪くも実力主義って感じ〜……? だから王国と比べるとちょっと殺伐としてるかもね〜……」
「カスミの質問に対して、フィオがそんな風に答えてくれた。
」
「なるほど」
「昔はよく戦争してて、武力は今でもどの国にも負けないくらいだよ〜…… そんなだからか、つい10年ちょっと前までは、ほぼ鎖国みたいな感じだったけど、最近になって他国と交流するようになったね〜……」
話を聞くに、ちょっと治安が悪かったりするのかと思ったカスミだったが、むしろ逆らしく、強さを誇るのは良いが、弱きを害することは何よりも恥という風潮があるそうで、平民にとってはかなり住みやすい国なんだとか。
逆に他国の貴族や商人からすると、実績や実力が無ければまるで相手にされないので、付き合い方がちょっと難しいのだとか。
「私強くないんですけど大丈夫ですかねぇ……」
「なにも強さは腕っぷしだけじゃない〜…… 音楽とか芸術も帝国は盛んで、その分野のトップクラスになると、帝国内の発言権はそこらの貴族より高くなるんだって〜……」
「そうなんですね」
「だからカスミちゃんは美味しいご飯で強さを示せばいい〜……」
「ふふ、そうですね。 頑張ります」
これまで行ったことのある国とは違う文化を持つ帝国へ思いを馳せながら、しばしの空の旅を満喫するカスミなのであった。
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