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#136 ほくほくとろとろなコロッケ

「ローニャさん、何か食べたいものありますか?」



 ある日の夕方。


 そろそろ夕食を作ろうかというタイミングで、カスミはローニャにそんなことを尋ねていた。



「んー、なんだろうにゃー」


「なんでも良いですよ」



 カスミはこうして、時折ビフレストのメンバー達に食べたいものを聞くことがある。


 そういう時は何を作ろうか悩んでいる時で、ここでリクエストしたものは大体その後の食事で出てくるので、ローニャはちょっと真剣に食べたいものを頭の中で考えた。



「……揚げ物がいいにゃ!」


「お肉ですか?」


「いや、別に肉じゃなくてもいいにゃ。 なんでも良いから揚げ物の気分にゃ」


「分かりました。 ありがとうございます」



 ローニャの希望を聞いたカスミは、早速キッチンに向かって夕食の準備を始めることにした。


 リクエストはなんでも良いから揚げ物ということなので、とりあえず冷蔵庫の中身と相談して、何を作るのかを考えていく。


 すると、冷蔵庫の中で輝いている食材をいくつか見つけ、それらを使って何を作るのかも固まったので、まずは下処理から始めることにした。


 

「手伝いいるにゃー?」


「そうですね、あると助かります」


「なら手伝うにゃ!」



 何を作るかを決めたタイミングで、ローニャが手伝いに来てくれたので、玉ねぎのみじん切りをお願いした。


 その間にカスミはじゃがいもをよく洗い、皮付きのまま茹でていいくのだが、本来じゃがいもが柔らかくなるまで茹でると3〜40分ほどかかる。


 だが、あんまり使ってこなかったが、実はカスミが普段使っている鍋にもタイムシフトの魔法が付与されており、魔力を流し続けることで、鍋の中身を大体20倍くらいのスピードで調理ができる。


 着々と便利な道具に絆されているような気がしてならないカスミだが、カスミが頼むまでもなくレネやフィオが作ってくれたものなので、使わないのも2人に悪いかなと思い、ありがたく使わせてもらうことにした。


 そんなこんなで、鍋に魔力を流して数分すると、しっかり茹で上がったじゃがいもが出来上がった。


 その皮をアチアチ言いながら剥き、剥いたものからボウルに入れて、マッシャーを使って潰していく。



「うー、目に染みるにゃー」


「多少は染みちゃいますよね」



 その頃、カスミの横で玉ねぎを切ってくれているローニャは、目をやられてシパシパさせていた。


 一応、冷蔵庫で冷やしてあるので、常温のものよりは汁が飛ばないものの、ものや切り方によっては結構汁が飛んできたりもする。


 そんな玉ねぎとじゃがいもの熱さに苦戦しつつも、それらの下処理は終わったので、カスミはフライパンにバターを敷き、それが溶けたらローニャに切ってもらった玉ねぎを炒めていく。


 玉ねぎがしんなりしてきたら、一部は別で使うので取り出しておき、フライパンに残った方にはひき肉を加え、しっかり火を通しながら炒め合わせる。


 そして、塩胡椒とあるものを入れて味を整えていく。



「カスミ、その粉なんにゃ?」


「これはナツメグという香辛料ですね」



 塩胡椒と共に入れたあるものとは、以前カレー粉を売ってくれた行商人から買った、甘くスパイシーな香りが特徴のナツメグを粉末状にしたものだ。



「入れると美味いにゃ?」


「分かりやすくはないんですけど、風味が引き立って、ひき肉の臭みを消してくれます」



 いわゆる隠し味的な使い方だが、入れた方がカスミは美味しくなると思っているので、少量入れて塩胡椒と共にしっかり馴染ませていく。


 それが済んだら、玉ねぎとひき肉を、潰したじゃがいもと合わせて、二口サイズくらいの楕円形に整形していく。



「まだ見たことない揚げ物にゃ?」


「そうですね。 これはコロッケというものです」



 カスミ達が作っていたのは、揚げ物の定番とも言えるコロッケだった。


 何気にまだ作ったことはなかったし、先程冷蔵庫の中を眺めた時に、じゃがいもと玉ねぎがたくさんあったので、作ることにしたのだ。



「こんな感じで整形してくれますか?」


「分かったにゃ!」



 そんなコロッケの整形作業はローニャに任せ、カスミはもう一品作っていく。


 まずは先程取っておいた玉ねぎをフライパンに戻し、そこへ何かと使えるので作り置きしてあるホワイトソースを加えていく。


 さらに、収納ポーチから以前ハンソンの街で買ったカニの脚を取り出し、身を外して解してフライパンの中へ入れて煮立てていく。


 味見をした感じ、何かを足す必要も無さそうだったので、とろみがついてきたところにパン粉を加え、軽く混ぜたら火を止め、ラップを敷いたバットに移していく。


 そしてそれを冷蔵庫に入れ、タイムシフト機能で3時間ほど冷やした状態にしたら、ローニャが作っているものと同じくらいのサイズに整形していく。



「こっちはできたにゃー」


「では、衣を付けて揚げていきましょう」



 それから、ひと足先にローニャの方が整形作業を終えたので、小麦粉、卵、パン粉と順番に付け、油を注いで熱した鍋に沈めて揚げていく。


 この時に、最初の30秒ほどは触らずにする。


 もし触って衣に穴などが出来てしまうと、そこから空気が入って膨張し、破裂してしまう恐れがあるので。



「この揚げ物の音、たまらないにゃー♪」


「ふふ、どんどん揚げていきましょう」



 それからカスミは、大量のコロッケを揚げていき、その途中で味噌汁とキャベツの千切りなんかも用意し、夕食の準備を整えていった。


 そして、全てのコロッケが揚げ終わったら、とりあえず皿に一個ずつ盛り付け、おかわり分は大皿に山のように盛って、食事テーブルに運んでいった。



「今日のメインはコロッケです。 じゃがいもとひき肉で作ったのがオーソドックスなやつで、カニの解し身とホワイトソースを使ったのがカニクリームコロッケです。 そのままでも美味しいですが、お好みで塩やソースをかけてどうぞ」



 そんな作った料理達を並べ終えた頃には、ビフレストの面々も集まってきたので、こちらでは初めて作ったコロッケについて軽く説明をした後、夕食がスタートした。


 すると、まずは全員、出来立てのコロッケを摘んで口に運んでいった。



「んー! ホクホクにゃ! 美味いにゃー!」



 ローニャがまず口に運んだのは、オーソドックスなじゃがいもとひき肉のコロッケで、その揚げたてサクサクとした衣と、中に詰まったホクホクのじゃがいもとひき肉の旨みが口の中に広がっていった。


 今回は食べ応えを出すためにひき肉を少し多めに使ったのだが、おかげでかなり旨みが強く、これだけでライスがかなり進む味になっていた。



「お〜、こっちは中からとろとろのクリームが出てきた〜…… うまうま〜……」



 フィオの方はカニクリームコロッケの方を食べてみたのだが、噛むととろりと内側から溢れ出てくるホワイトソースと、旨みたっぷりのカニの身がそれはもうベストマッチで、なんだか上品さを感じる味わいがそこにはあった。



「コロッケ気に入ったにゃ!」


「コロッケは他にも色んなものが作れますよ」



 今回は2種類のコロッケを作ったが、カスミが知っているだけでもあと5種類くらいはある。

 


「それも気になるにゃ!」


「ふふ、ならまた今度作りますね」



 そんなコロッケをローニャを始め、ビフレストの面々はとても気に入ってくれたようなので、今度作る時はなんのコロッケを作ろうか、内心考えるカスミなのであった。


 

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