#134 初の製菓指南①
「では、初めていきましょうか」
「はい」
「はいっす!」
本日、カスミは料理部屋でミシュテとカノムへ初めての製菓技術の伝授を行おうとしていた。
そう言葉にすると仰々しいが、最初なのでまずカスミは簡単なことから教えていこうと思っている。
なお、付き添いとしてガリュウが来てくれているが、ミシュテとカノムの真剣な様子を感じ取ったのか、ちょっと離れたところにある休憩用のソファで大人しくしてくれていた。
いつの間にか空気も読めるようになったガリュウを見てると、もう人間とコミュニケーション能力はほとんど変わらないなと思わされるカスミだった。
「まずはお二人の現状の技術について知りたいですね」
そんなガリュウはさておき、ひとまずカスミはミシュテとカノムの現状を聞いてみた。
「そうですね…… 実際のところ専門的な知識はほとんどないと言っていいと思います」
「自分もミシュテも、元々デザート担当じゃなかったんで、カスミ様のスイーツに魅入られるまではほとんど甘いものの類は作ったことなかったっす」
「なるほど」
「ミーユイア王女殿下のパーティーの際にカスミ様がケーキを作っているのは近くで見ていたので、見よう見まねで生地だけでもと思って作ってみたのですが、全然上手くいきませんでした」
「そうしたら、お二人とも基礎的な料理技術と知識はバッチリですし、スポンジケーキ作りをやってみましょうか」
カスミが製菓学校に行っていた時は、製菓の歴史や道具の使い方を座学で学ばされたりした。
だが、こちらの世界では地球の歴史など関係ないし、道具も実際に使ってみた方が覚えも早いと思うので、早速実践を交えてケーキの土台の生地作りにも通ずるスポンジケーキ作りに挑戦してみることにした。
「まず、お菓子を作りに当たって、砂糖や小麦粉などの材料の計量を行うんですけど、正直ここで仕上がりが大方左右されます。 なので、これからどれだけお菓子作りが上手くなったとしても、必ず材料は計りましょう」
お菓子作りは繊細な作業で、数グラムならまだしも、10グラムくらい材料が増減してしまうと、味のバランスが悪くなったり、焼いた時に上手く膨らまなかったり、食感が悪くなったりしてしまう。
なので、これまで数え切れないほどのお菓子を作ってきたカスミですら、目分量でお菓子を作ることは、余程簡単なもの以外はない。
なので、ミシュテとカノムにまずはスポンジケーキの分量を教えていく。
2人とも当たり前のようにメモも取ってくれ、メモ取りが済んだら実際に材料を計って用意していく。
「材料の準備もそうですが、あらかじめオーブンを使う時は予熱しておいて、湯煎がいる時は適切な温度のお湯をあらかじめ用意し、ケーキの型に敷く型紙もセットしておきましょう」
お菓子作りにおいて、できることは準備の段階でしておいた方がスムーズに進むので、作業を始める前の準備はしっかり行なっていく。
「ここまで済ませたら、いよいよスタートです。 私も説明しながら作っていくので、お二人も真似しながらやってみてください」
そうして準備を済ませたら、カスミ達はそれぞれ別のキッチンに入って、カスミは手元が見えやすいようにしながら、ミシュテとカノムにスポンジケーキ作りについて説明していく。
「そうしたら、ボウルに卵を入れて、ここにグラニュー糖を入れます。 それをさっき使い方を説明したハンドミキサーの低速モードでお風呂のお湯くらいの温度に温めながら混ぜ合わせていきます。 あ、もう一つのボウルで後で使う牛乳とバター、ハチミツを温めておいてください」
カスミが今いる料理部屋には、カスミがスキルで生み出したり、レネに作ってもらったハンドミキサーを始めとした調理器具が沢山あり、作業を始める前にミシュテとカノムにはその使い方を説明しておいた。
2人ともやはり料理人なだけあって、この世界にはまだ普及していない地球の便利な調理器具に目を輝かせながら使い方を学んでくれた。
「温めながらするのはなんでなんすか?」
「泡立ちが良くなるからですね。 生地作りにおいて泡立ての作業はかなり大事です」
時折ミシュテとカノムから飛んでくる質問にもカスミは丁寧に応えつつ、卵とグラニュー糖が温まって混ざったら、ハンドミキサーを高速モードにしてしっかりと泡立てていく。
「ここで空気をしっかり含ませましょう。 この辺は何度もやってコツを掴むしか無いので、よく生地を観察しておいてください」
やっている作業自体はハンドミキサーを当てているだけなので、誰でもできるが、泡立て方やどこまで泡立てるのかの見極めは口では説明しづらいので、こればっかりは反復練習あるのみだ。
そんな泡立てが済んだら、低速モードで生地ムラを無くし、振るった薄力粉を4回ほどに分けてゴムベラで混ぜ合わせていく。
「この時、あんまり激しく混ぜないようにしましょう。 折角立てた泡が潰れてしまうので」
「繊細ですね」
「そうですね。 でも、いずれお店をやるとなると、丁寧過ぎると時間が足りなくなりますから、可能な限りスピードも上げられると良いですね」
そんなアドバイスをカスミはしたものの、今は誰に急かされているわけでも無いので、引き続きミシュテとカノムに丁寧に教えを続けていくのであった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
まだ送ってない方は★★★★★評価やブックマーク、いいね等を送ってくださると嬉しいです!
作者の執筆のモチベが上がりますので!
感想もいつでもお気軽に送ってください!




