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#133 たまには外食

「よし、こんな感じかな!」


「相変わらず凄いですね」



 現在、カスミはミシュテとカノムに料理を教えるために借りた部屋の改築をレネと共に行っていた。


 その結果、料理部屋はいかにも料理教室といった感じの空間になった。


 具体的には、元からあったキッチンの横に、もう一つ同じキッチンを作り、その二つから見えやすい場所にもさらにもう一つの、計三つのキッチンを用意した。


 この配置なら、カスミ、ミシュテ、カノムがそれぞれ同時に作業することも可能であり、色んな教え方ができるだろう。


 そんなキッチンを増やすという大規模な改築だが、レネにイメージを伝えただけで、ものの数時間で済ませてしまったのだから驚きだ。


 カスミも当然横で見ていたのだが、まるで早送りのように色んなものが出来上がっていく様は、何度見ても素晴らしいものだった。



「どれくらいのこの部屋使う予定なの?」


「何も無ければ週に2回くらいは教える時間取ろうかなって思ってます」


「大変だねー」


「全然そんなことないですよ? 何ならもっと時間を取るつもりでしたけど、クリスタさんに止められました」



 カスミが製菓学校に通っていた時は、平日は毎日授業があったし、土日も何かしら勉強していたので、ミシュテとカノムのやる気があるなら週に5日くらい時間を取ってもよかったのだが、クリスタに相談したら即却下され、基本週に2日までにしろと言われた。


 毎度の如く、普段の炊事洗濯掃除などは全然苦じゃないから、むしろもっと働きたいとはクリスタにも言ってるものの、どうしてもクリスタ的にはカスミは働き過ぎに見えてしまうらしく、できればもうこれ以上何もしないで欲しいとまで思っているようだった。


 ただ、カスミの店を出すという夢のために、ミシュテとカノムの協力が必要不可欠な事も分かっているので、2人に教える活動自体を辞めろとは言わないのは、カスミからすればありがたいことだった。



「そっか。 そしたら、他にも欲しいものあったらいつでも言ってね! いくらでも作ってあげる!」


「ふふ、ありがとうございます、レネさん」



 それから最後に作ったキッチンの水道やコンロなどがしっかり作動するかを確認し、全て大丈夫そうだったので、カスミ達は料理部屋を後にした。



「あ、そうだ。 レネさん、たまには外食しませんか?」


「いいね! 家にも誰もいないし!」



 今日はカスミとレネ以外の面々…… クリスタとフィオはそれぞれ別のところに買い物、ローニャは賭場、アネッタとガリュウはちょっと遠いところに依頼を受けて留守にしているので、カスミとレネが外食しても問題ないだろう。



「どこのお店行く?」


「折角なら、あそこにしましょうか」



 そう言ってカスミが向かったのは、先日も来たこの街一番のレストランであるセレーノのところだった。



「あ、ここカスミちゃんが来る前はよく使ってたなー。 弟子の2人もここで働いてるんだっけ?」


「そうですね」



 レネとそんな会話をしながらカスミがセレーノの扉を開けると、昼食のピークの時間から少し過ぎているのにも関わらず、店内はかなりの数の客で賑わっていた。



「いらっしゃいませ…… あ、カスミさん!」


「あれ、フーロさん?」



 そんな店に入ってきたカスミとレネの応対するためにやってきたのは、カノムの恋人のフーロだった。


 彼女は給仕服のようなものを身に纏っており、その手には銀色のトレイが握られていた。



「フーロさん、冒険者なんじゃ?」


「まだこの街の冒険者ギルドでは名が知れてないんで、あんまり仕事が無くて! 低級の魔物狩りとか薬草摘みするくらいなら、カノムの手伝いした方がいいかなと思って、ウェイトレスやってます!」


「なるほど」



 フーロはソロでシーフをやっており、ダンジョン探索に行くパーティーにヘルプで入るのが主な仕事のようだが、他所から来たシーフをいきなり信用するパーティーはあまりなく、まだ仕事が無いらしい。


 だからカノムの手伝いをするという考えになるということは、ちゃんと2人はお互いのことが好きなんだなーと、聞いていてほっこりした気持ちになるカスミだった。



「お席空いてますのでどうぞ!」


「ありがとうございます」



 そんなフーロに案内され、席に座ったカスミとレネは、ボスバイソン肉のミートソーススパゲッティをカスミが、オークジェネラルのソテーとサイドメニューにあったライスをレネが頼んだ。



「前来た時はこんなメニュー多くなかったよ!」


「そうなんですね」

 


 レネの言う通り、どうやらここでは既にライスだったり、他にもカスミがレシピ登録した料理をレストラン仕様にアレンジしたメニューが取り入れられているようだ。


 この店のオーナーのルドア曰く、先先代から続くレストランでもうすぐ創業100年になりそうなくらい歴史あるレストランのようだが、既存のメニューに囚われず、常に美味しいものを提供しようと新しい料理を積極的に取り入れる姿勢は、一料理人としてカスミも見習わなければなと思わされた。



「お待たせしました!」



 それから料理を注文してしばし待っていると、フーロが頼んだものを運んできてくれた。



「ミシュテさんとカノムさんもあとで挨拶行くって言ってました!」


「分かりました。 忙しかったら全然無理しなくていいと伝えておいてください」



 フーロとそんなやり取りなんかもしつつ、カスミは早速運ばれてきたミートソーススパゲッティを口に運んでみた。


 すると、濃厚なトマトの旨みと、カスミが普段使っているバイソン肉より、1ランクグレードの高いボスバイソンのひき肉の旨みが口の中に広がってきた。



「うん、とっても美味しいですね」


「味も凄い良くなってるね!」



 どうやらメニューの数だけじゃなく、味もしっかり研究されているようで、カスミが登録したミートソーススパゲッティのレシピよりも、少しスパイシーな大人の味わいをしていた。



「カスミちゃん、交換しよ!」


「ふふ、いいですよ」


「じゃあ、はい、あーんっ♡」


「えっ……!? あ、あーん……」



 それからカスミは、レネの頼んだオークジェネラルのソテーも食べさせてもらったが、こちらも焼き加減や味付けがちょうど良く、絶品だった。



「たまには外食も良いですね」


「ねっ! 前までのレストランじゃ物足りなかっただろうけど、こんなレベルが上がってるなら全然いいかも!」



 自分で作るのもいいが、やはりこうして誰かが考えて作った料理というのは、美味しい上に勉強にもなるので、また機会があったら外食しようと内心カスミは思うのであった。



「カスミ様」


「お疲れ様っす!」


「あっ、ミシュテさん、カノムさん」



 そんな食事が終わりを迎えて一息ついていたところに、厨房からミシュテとカノムがやってきた。



「お気に召しましたか? ミートソーススパゲッティは私が作らせてもらいました」


「ソテーは自分が!」


「はい。 どちらもとっても美味しかったです」


「ムドア様と一緒にレシピを練りながら作ってみてます」


「ムドアさんも凄い腕の良い料理人で、王城で出してた料理のレシピと上手く良いとこ取りしながら試行錯誤してるんすよ!」


「それはいいですね。 機会があれば私も参加したいです」



 今回食べたものも十分美味しかったが、まだまだ上を目指すつもりのようだ。



「あ、それと、料理部屋の改装が終わりましたので、お二人の予定が合えばいつでも教えられますよ」


「なら、明後日が休みなんで、その時が良いかもっす!」


「私も同じくです」


「分かりました」



 そう料理部屋に集まる日の打ち合わせなんかも済ませたので、カスミとレネは料金を払って、満足感に浸りながらセレーノを後にするのであった。

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