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#131 弟子がやってきた②

 この街に住むミシュテとカノム、フーロのための物件を紹介したカスミは、もう一ヶ所紹介したい場所があったので、そこへ皆を案内した。



「こちらですね」


「お、立派なレストランっすね!」



 そこはカノムの言う通り、とても綺麗なレストランで、この街の中だと裕福な層が普段使いしたり、一般家庭が何かの祝いにやって来るようなグレードの店だった。


 その入口には、今日がお休みである旨が記された看板が吊るされていたが、カスミは恐らく中にいるであろう人に聞こえるよう、少し強めに扉をノックした。


 それから少しすると、中から壮年のダンディな印象を受けさせる男性が扉を開けて外に出てきた。



「お、カスミ君。 時間通りだね」


「こんにちは、ルドアさん」



 その男性はルドアという名前で、実は前々からカスミとはちょっとした縁がある人だったりする。


 というのも、カスミは見た目だったり、ビフレストのメンバーであったりすることもあって、この街ではそれなりに有名人だ。


 なので、市場などに行くと、いつも店を出している人や、カスミと同じ時間に店先で買い物をしている客とは顔見知りで、挨拶や世間話をすることもあるのだが、ルドアはそのカスミと同じ時間帯に買い物をしている客の一人で、よく話したりしているのだ。


 



「後ろの方達は初めましてだね。 私はこのレストラン、セレーノのオーナーをしているムドアだ」


「ミシュテと申します」


「カノムっす!」


「フーロです!」


「カスミ君から少し話を聞いていたんだが、ミシュテ君とカノム君は王城で料理人をしていたとか」


「それでなんですけど、ミシュテさんとカノムさん。 良ければこのレストランで働きませんか?」



 ムドアの言葉を引き継ぐような形で、カスミがミシュテとカノムにそう提案をした。



「それは…… こちらとしても願ったり叶ったりですよ」


「どこかの飲食店で働こうと思ってたっすから、こんな良いところに雇ってもらえるなら、ありがたいっすね!」



 それに対して、ミシュテとカノムはありがたそうにその提案に乗っかってきた。



「カスミ様、わざわざ話を通しておいてくださったのですか?」


「私がというより、ムドアさんが少し困ってたので、ミシュテさんとカノムさんのことを伝えてみた感じですね」



 ミシュテの質問にカスミはそう答えた。



「以前にカスミ君と何気なく話をしていた時に、レストランの人手…… 特に調理担当が不足していることを愚痴ったら、ミシュテ君とカノム君のことを教えてもらったんだ。 改めて、元王城の料理人の君たちからすれば、小さなレストランかもしれないが、良ければうちで働いてくれないか?」


「小さいなんてそんな。 とても綺麗で良いレストランだと思います。 ぜひここで働かせてください」


「自分からもお願いしたいっす!」


「あっ、ただ、何年後も働き続けられるかは分からないのですが……」


「ああ、君達はカスミ君と協力して店を出すんだったね。 もちろん、その夢を優先してくれて構わないよ。 今はこの街は凄く食文化が発展していてね。 客足が急に増えたから困っていたけど、君達が短期間でも入ってくれれば、その間に新たな人手の確保もできるだろうから」



 ミシュテの懸念に対しては、ムドアがとても寛容な言葉を返してくれた。



「それで、どうだろう? なるべく早く厨房に入ってもらえると非常に助かるのだが次はいつ来れそうかな?」


「ミシュテさん、カノムさん、お二人は住む環境がガラリと変わるので、お菓子作りを教えるのは来週くらいからにしましょう」


「お気遣いいただきありがとうございます、カスミ様。 では、明日にでもセレーノでの仕事について教えていただきたいです」


「自分もそれで!」


「分かった。 では、明日の朝にまた来てくれ」



 そんな感じで、ミシュテとカノムの就職先も決まり、ムドアも今日のところはもう自宅に帰るそうなので、カスミ達もセレーノを後にした。



「カスミ様、住居のみならず、働き先まで融通を利かせてくださり、ありがとうございます」


「いえいえ。 本当はわざわざこちらに来てもらう訳ですし、家賃とか生活費も私が出そうかなって思ってたんですけど……」


「それは与えすぎだってローニャ達が言ったにゃー」


「そうっすね! 自分達は自分の意思でここに来たんで、多少の苦労は覚悟してきたっす! ……今のところ全然苦労しなさそうっすけど!」



 そんな風に会話をしつつ、カスミ達はデラフト商会や市場を回って、ミシュテ達の食料や日用品など、生活する上で必要なものの買い出しをしていった。


 それが終わる頃には、すっかり日も沈んでおり、カスミ達はミシュテ達の住居になったアパートに戻ってきた。



「カスミ様、今日は何から何まで世話になりました。 このご恩を一日でも早く返せるよう、料理の腕を磨いていこうと思います」


「今後もご指導の程、よろしくお願いしますっす!」


「こちらこそ、改めてよろしくお願いします。 来週までには料理部屋の準備も済ませておきますね」



 最後にそう言葉を交わしたカスミ達は、お互い笑顔で別れを告げ、それぞれの住む場所へと帰っていくのであった。

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