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#130 弟子がやってきた

 本日、カスミはサミアンの街の広場で待ち合わせをしていた。



「もうそろそろ来るにゃ?」


「そうですね」



 待ち合わせの20分ほど前に来ていたカスミだったが、付き添いとしてローニャも一緒だったので、待っている間も退屈はしなかった。



「そういえば、最近は今までなかった屋台が増えたにゃ」


「みたいですね」



 カスミが今いるサミアンの街で一番大きな広場なので、屋台も普段からかなりの数出ているのだが、その中にはおにぎり屋だったり、焼きそば屋といった、カスミのレシピが広まったことで新たに生まれた屋台がいくつか見受けられた。



「これまであった串焼き屋さんとかも、醤油やみりんを使ったタレで味付けしたりするところも増えてますね」


「美味いものが気軽に食べられるようになったのは良いことにゃー」



 もちろん既存の屋台も負けてはおらず、新しい調味料を活用したりして対抗しており、サミアンの街ではプチ屋台戦争が勃発しているのだとか。


 そうしてこの街では、美味しいものが屋台ですぐに食べられることが広まったからか、外から来た観光客や、商売のネタを探しに来た商人達が以前よりも遥かに出入りするようになり、おかげで景気が良いのか街の人達の表情もとても明るかった。



「全部カスミのおかげにゃ」


「そ、そう言われるとちょっと照れますね……」


「あっ、カスミ様、お待たせしましたっ」



 そんな会話をカスミとローニャがしていると、3人の男女がカスミ達の所へとやって来た。



「ミシュテさん、カノムさん、ご無沙汰してます」



 それは以前、カスミに弟子入りを希望してきたミシュテとカノムで、この街に移住するために今日やってきたのだ。



「それで、そちらの方は……」


「この子は僕の恋人のフーロっす!」


「初めまして! フーロと申します!」



 ミシュテとカノムと一緒に来た見知らぬ女性は、以前にもチラッと聞いたカノムの恋人のフーロという女性だった。


 背丈は割と小柄で、日に焼けた小麦色の肌と引き締まった体をしており、常日頃から外で体を動かしているであろうことが伝わってきた。



「カスミさんについてのお話はカノムから聞きました! ビシバシ鍛えてやってください!」


「ふふ、分かりました」


「えっと、それで、カスミさんのお隣にいるのはローニャさんですよね!?」


「ん? ローニャのこと知ってるにゃ?」


「もちろんです! 私も冒険者なので!」



 どうやらフーロは冒険者なようで、ローニャのことを憧れの人を見るようなキラキラとした瞳で見つめていた。



「私もシーフなので、ローニャさんに凄く憧れがあります!」



 シーフというのは、冒険者が赴くダンジョンの罠解除や、敵を惹きつける役割の所謂斥候で、ローニャも役職に名前を付けるならシーフと言っていいだろう。

 


「ほー、そうなのにゃ。 ランクはどれくらいにゃ?」


「Cランクで、色んなパーティーに救援として入ってます!」


「ソロでシーフでCランクは中々にゃ」


「いえいえ、自分なんてまだまだです!」



 同じシーフ同士という共通点があるからか、ローニャとフーロはすぐに仲良くなっていた。



「皆さんまずは住む場所を探す感じですよね?」


「そうですね。 ひとまずはこの街の宿に泊まりつつ、手頃な物件を探そうかと思っています」


「働く場所も見つけたいっすね!」


「でしたら、ひとまず案内したい場所がありますので、一緒に行きましょう」



 それからカスミは、ミシュテ、カノム、フーロを連れてある場所へ向かっていく。


 その途中、市場や冒険者ギルドといった、この街で暮らすに当たって利用することになるであろう場所の紹介なんかもしていった。



「着きました」


「ここは…… 集合住宅ですかね?」



 そうして辿り着いたのは、前世で言うところのそこそこ良いアパートのような建物で、カスミは収納ポーチからそのアパートの二階にある一室の部屋の鍵を取り出し、他の皆と共に中に入っていった。



「おお、綺麗な部屋っすね」


「こちらは今後、ミシュテさんとカノムさんに色々と教える際に使おうと思ってる部屋です。 改装の許可を得てるので、キッチンをもう一つくらい増設しようと思ってます」


「わざわざこんな場所を用意してくださったんですか?」


「色々伝手もありまして」



 今回借りたこの部屋は、商業ギルドから紹介してもらった。


 というのも、ミシュテとカノムに色々教えるに当たって、パーティーハウスを毎回使うのは、ビフレストのメンバー達のプライベートが少し侵略されてしまうので、別で教えられる場所を確保することにしたのだ。


 もちろん部屋を借りたり改装するに当たっての資金は、全てカスミが負担している。


 改装はレネに既にお願いしており、部屋を大規模に改装できるということで、物作り大好きなレネはとても喜んでいた。



「それで、このアパートは大体どの部屋もこんな感じなんですけど、良ければ皆さんもこのアパートに住んではどうでしょうか? お部屋も空いてるみたいなので」


「ここでカスミ様に教わるなら、ぜひそうさせてもらいたいですね」


「ありがたいっす! フーロと二人で住んでも問題ない広さっすし!」



 ミシュテとカノム、あとフーロも部屋のクオリティには何の文句もないようで、さらにこのアパートは街の中心部の近くなので立地も良いため、このアパートに住むことを即決した。


 ちなみに家賃も伝えたのだが、思ったより安かったようで、少し驚かれた。


 やはりミシュテ達が住んでいた王都の方が栄えている分、物件の値段はかなり高いようだ。


 それからアパートに住んでいる大家も在宅だったので、その場でミシュテとカノム、フーロは契約を済ませて、とんとん拍子に住む場所は確保できた。



「そうしたら、もう一箇所紹介したい場所があるので、日用品の買い出しついでにそちらにも行きましょうか」



 住む場所はあっても、日用品が無いと生活に困るので、それらの買い出しに行くついでに、カスミはミシュテ達を連れて再びある場所へと向かうのであった。

 

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