#129 ついに完成!
「カスミちゃん!」
「レネさん…… とフィオさん。 どうしました?」
ある日の午前中。
掃除を終えたカスミがリビングでまったりしていると、なんだか嬉しそうな様子のレネとフィオがやってきた。
「ついにアレが完成した〜……」
「アレって、もしかして、アレですか?」
「うん! 早速キッチンに置くね!」
そう言うレネにカスミもついていくと、レネは収納袋から中々大きい物体を取り出し、キッチンの空きスペースにそれを置いた。
「じゃーん! ようやく出来たレンジだよ!」
「わぁっ、凄いです!」
その物体は、カスミからすれば馴染みの深い家電である、横長で奥行きの広いレンジだった。
「再現するの、中々苦労した〜……」
レンジに関しては、実は数ヶ月前に小さいものをカスミのスキルで生み出して、レネに再現して欲しいと頼んでいた。
だが、ただ物体を熱で温めるのではなく、電磁波によって熱を生み出すという仕組みがどうもこちらの世界では再現が難しかったようで、レネだけではレンジを作ることはできなかった。
なので、フィオにも協力を要請し、それからは暇な時にちょこちょこレネとフィオでレンジ作りに取り組んでくれていたようだが、ついに完成したらしい。
「カスミちゃんが言ってた電磁波で物体を高速振動させて熱を生み出すっていうの、最初はちんぷんかんぷんだったけど、なんか似たような攻撃する魔物いたなって思い出してからは早かった〜……」
さらに話を聞くと、その魔物はエコーバットという蝙蝠の魔物で、鳴き声と共に目に見えない何かを飛ばして、数匹からそれを長時間受け続けると体が熱くなって破裂するという、中々怖い攻撃をしてくるそうだ。
その存在を思い出したフィオが、魔物の素材を売り買いできる場所で、そのエコーバットの素材を手に入れて研究し、レンジに応用したとのこと。
「早速試してみてもいいですか?」
「いいよー!」
そんな説明を聞いたカスミだったが、詳しいことは正直あんまり分からなかったので、とりあえずレンジを使ってみることにした。
まずは耐熱皿を用意し、その上にいつでも使えるように凍らせてあるライスを載せてレンジの中に入れ、扉を閉めてスイッチを押した。
「そこのつまみで温める強さを変えれるよ〜……」
「普通の食材なら真ん中くらいで全然いいと思う!」
「分かりました」
とりあえず言われた通りにつまみを真ん中くらいにして、カスミは温め開始のスイッチを押した。
すると、ジー…… と微かな駆動音がレンジから鳴り始め、ひとまず3分ほど様子を見てみることにした。
「ちゃんと動くかチェックもしたから大丈夫だと思う〜……」
「チェックの段階で何回か中の物が爆発したりしたけどね!」
「あ、そうなんですよね。 レンジに入れちゃいけない食材もあったりするんです」
レンジに入れてはいけないもので代表的なものを上げるなら、やはり卵だろう。
卵を殻付きのまま加熱したりすると、中の水分が水蒸気となって膨れ上がり、破裂してしまうのだ。
他にも、破裂とまではいかないにしても、飛び散ったりしてしまうものも色々あるので、レンジを使う際は注意が必要だ。
ちなみに余談だが、最近一部のデラフト商会で、炊飯器が発売された。
以前、レネが設計図を商業ギルドに登録したのだが、それをデラフト商会が一早く目を付け、開発と量産に踏み出したのだ。
今はカスミのいるサミアンの街や王都、あとハンソンの街のデラフト商会くらいでしか売り出していないそうだが、最近徐々に流行りを見せてきたライスが効率良く炊ける道具ということで、ライスを扱おうとしている飲食店や屋台を営む者達に売れ始めたそうだ。
そこそこ値段がするので、まだ一般家庭で買おうとする人はあまりいないようだが、その内一般家庭にも広がればいいなと願うカスミだった。
そんなことをカスミが考えていると、大体3分くらい経過したので、レンジの中の冷凍ライスを取り出してみた。
すると、見ただけでしっかり解凍されていることが分かる見た目になっており、ラップを外すと湯気を立たせるホカホカのライスが姿を見せてくれた。
「うん、しっかり温まってますね」
「これ本当に便利だよねー!」
「魔道具作りで温めないといけない時あるから、その時にも使えそう〜……」
「そうしたら、ちょっとしたものを作りましょうか」
カスミはそう言うと、冷蔵庫から必要な材料を取り出して、テーブルに並べた。
「何か作るの〜……?」
「はい。 レンジで作れる簡単なおやつを作ります」
レンジの使い方はただ温めるだけじゃないことを示すべく、カスミはまず卵、砂糖、牛乳を順にボウルに加えて混ぜ合わせていき、そこに薄力粉とベーキングパウダーをふるいにかけながら入れて、さらに混ぜていく。
しっかりそれらが混ざったら、仕上げにサラダ油を入れて混ぜ、手頃なサイズのカップをいくつか用意し、その出来上がった生地を注いでラップをしたら、レンジに入れて2〜3分ほど加熱していく。
「これであとは待つだけで完成です」
「簡単だね! でも、どんなのができるんだろ?」
材料を混ぜ合わせてカップに注いでレンジで温めるという、誰でも簡単にできるような工程だったので、レネやフィオからすると、あんまり完成形が想像できないようだった。
それに対して、口で説明するよりも見てもらった方が早いと判断したカスミは、レンジの中の様子を見つつ、3分ほどした頃にレンジの扉を開けた。
「うん、いい感じですね」
「おー、膨らんでる〜……」
先程のカップをレンジの中から取り出して確認すると、注いだ生地がカップから少し溢れるくらいしっかりと膨らんでいた。
「これがレンジで作れる蒸しパンです」
「すごいね! 本当に簡単に作れちゃった!」
そうして出来上がった蒸しパンをカップから外し、一口大にカットして皿に載せ、早速出来立てを3人で食べることにした。
「ん、甘くてふわふわで美味しい〜……」
「レンジって凄いねー!」
そんな簡単に作った蒸しパンは、かかった時間の割には非常に美味しくて、食べやすさも相まってあっという間に作った分は無くなってしまった。
「また素敵なものを作ってくれてありがとうございます」
「いえいえー! 作り甲斐があって楽しかったよー!」
「欲しいものがあったらいつでも言ってね〜……」
レネとフィオもレンジ作りは難易度が高くて、中々に楽しめたようで満足げな表情を浮かべていた。
カスミもカスミで、レンジのおかげでパーティーハウスのキッチンはもう欲しいものがパッとは思いつかないくらいに充実したので、今後も快適で楽しい料理生活が送れそうだなとレネとフィオに感謝の言葉を送りつつ、それらを活用して何を作ろうか考えていくのであった。
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